古代文学における思想的課題
著:呉 哲男
内容紹介
国家と天皇制の起源へ
主に古事記・日本書紀の中で語られる古代の国家や天皇制の成立などについて、従来の歴史学や文学研究プロパーでは論じることのできなかった課題に対し、現代思想の知見との対話によって「抽象力」で迫りつつ、広く東アジア世界の中に古代日本の位相を見定める。
目次
序 言
第一部 古事記・日本書紀論
第一章 神功皇后と卑弥呼──東アジア漢字文化圏の帝国/小帝国
第二章 古事記の成立──稗田阿礼と太安万侶
第三章 古事記の成立と多氏
第四章 古事記と日本書紀の世界観
第五章 古事記の神話と対称性原理
第六章 贈与(互酬)交換としての国譲り神話──古代国家と古事記
第二部 古代文学における思想的課題
第一章 古代国家論──天皇制の起源をめぐって
第二章 「見るな」の禁止はどこから来るのか──大物主神に関連して
第三章 文字の受容と歴史の記述──いくつもの日本へ
第四章 日本書紀と春秋公羊伝──皇極紀の筆法を中心に
第五章 古代日本の「おほやけ公」と日本書紀
第六章 オホヤケ(公)の系譜学的遡行──日本書紀・古事記から
第七章 ヤマトタケルと「東方十二道」
第八章 丹後国風土記逸文「水江浦嶼子説話」をめぐって──神話的アレゴリーの墜落
第三部 万葉集論
第一章 「鎮め」の論理──和歌形式の成立に関連して
第二章 表象としての東歌 ㈠
第三章 表象としての東歌 ㈡
第四章 後期万葉宴歌における「抒情」の行方
第五章 万葉集羈旅歌の基礎構造
第六章 「乞食者の詠」(巻十六・三八八五)の「われ」──「無主物」に抗して
第七章 ホモソーシャル文学の誕生──伊勢物語と万葉集を横断する
付 論
一 戦後の神話研究はどのように語られてきたのか
二 国家/王権論の展開──学会時評から
三 書評 西條勉著『アジアのなかの和歌の誕生』『柿本人麻呂の詩学』
四 反白川静論