超越論哲学の次元
1780-1810
著:シュテフェン・ディーチュ
訳:長島 隆
訳:渋谷 繁明
内容紹介
カントが『純粋理性批判』(1781年)による認識批判にもとづき超越論哲学を展開しはじめてから,1789年のフランス革命勃発による政治的,思想的な革命の時代をへてヘーゲルに至る30年に及ぶドイツ古典哲学の生成と展開の過程を文献研究を踏まえて考察する。カントの「哲学革命」の影響下で「ドイツ観念論」の哲学者たちの営為を位置づけ,超越論哲学における思考様式の革新が認識理論の領域に止まらず,哲学批判,科学批判を超えて自然,社会そして思考に関する新たな地平を多様に切り拓いていく過程を分析し,〈カントからヘーゲルへ〉という単純な図式を超えてドイツ観念論の幅広い活動の実態を明らかにする。
著者は旧東ドイツにおいてシェリング研究で学位を,さらにカントとヘーゲルの歴史的なものの理論発展に関する研究で教授資格を得るとともに,東独の崩壊を視野に入れてドイツが抱えるヨーロッパ圏の諸問題について精力的に活動してきた。カント,シェリング,ドイツロマン派,そしてニーチェに関する業績や,カント,シェリング,ヘーゲル,アルニム,リッターらの著作を編集するなど多岐にわたる文献研究により,ドイツ観念論を根本的に見直すことに貢献している。
目次
まえがき
序論 超越論的なものの概念について
第1章 イマヌエル・カントの超越論哲学の理念――『純粋理性批判』にたいする『プロレゴーメナ』の解明
付論 カール・マルクスにおける「超越論的なもの」
第2章 超越論哲学における歴史性
第3章 後期カントにおける歴史と政治――社会における平和と批判的理性の尊厳
第4章 超越論哲学としての「知識学」
付論 フィヒテの影にかくれ(忘れさられ)た平等の友,アウグスト・ルートヴィヒ・ヒュルゼン
第5章 若いシェリングにおける自然と歴史的過程
付論 フィヒテの自然―概念について
第6章 ロマン主義的自然哲学――ヨーハン・ヴィルヘルム・リッター
第7章 哲学の至福の時――イェーナにおけるシェリングとヘーゲル
第8章 道具としての芸術作品――シェリングの『超越論的観念論の体系』
第9章 同一性哲学における神話問題について
付論 いわゆる「最古の体系プログラム」
第10章 ロマン主義的時代批判――ボナヴェントゥーラの『夜警』
第11章 「思弁の全体系が,私の見解では歴史に――精神と世界の歴史にならなければならない」
解説/訳註/原注/索引