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南満州鉄道沿線の社会変容

編:芳井 研一

紙版

内容紹介

アジア太平洋戦争期までの南満州鉄道沿線の社会変容の動態を明らかにするため,鉄道延伸をめぐる葛藤,都市形成と社会的生活基盤の整備,農村変容と労働力動員という三つの側面から検討する。
満鉄は沿線住民に安定した大量輸送手段を提供し,鉄道を通して人と物の新たな流れがつくられたことで地域社会は大きく変容した。しかし住民にとって,鉄道の敷設は生活の向上や利便性とともに新たな抑圧や差別を持ち込むという二面性を有していた。とくに第一次世界大戦後,解放運動の影響のもと人々は「生活の発展」すなわち生活基盤として安定した労働収入や教育,医療・衛生のほか道路や上下水道,公共交通の整備などに強い関心を示した。
これまでの東北地域史や満鉄史,植民地支配史の研究では日本の「満蒙」政策を地域社会変容との関係に即して検討することが少なく,また膨大な史料群のほとんどは,満鉄調査部,満州国政府,関東庁,あるいは外務省文書など日本側の史料に依存していたため,在地社会に根ざした視点からの研究は乏しかった。
中国の第一線の東北史研究者の参加を得て,東北地域史の視点に立って埋もれていた史料や新資料を活用し,地域社会における植民地的な従属や抑圧の実態を末端の村や労働者のレベルで明らかにする。ロシア,中国,日本の複雑な国際関係を背景に近代の日本は満鉄とその付属地を膨張の拠点にして,植民地支配の有力な手段としたが,本書はその下で生きる住民たちに光をあてた画期的な業績である。

目次

序章(芳井研一)
第1節 本書の視点
第2節 満鉄培養線問題と自前鉄道の敷設
第3節 都市形成と社会的生活基盤整備
第4節 農村変容と労働力動員
第Ⅰ部 南満州鉄道と地域社会変容
第1章 「満蒙」問題の現出と?索・索温線沿線の社会変容(芳井研一)
はじめに
第1節 「満蒙」問題の出発と内モンゴル東部地域
第2節 ?索・索温線沿線の社会変容
おわりに
第2章 瀋陽・吉林線の敷設と東部地域の都市化(曲 暁範)
はじめに
第1節 瀋吉線敷設の歴史的背景
第2節 奉海線の敷設過程
第3節 吉海線の敷設過程
第4節 奉海・吉海線の敷設と奉・吉両省東部の都市化
第3章  満鉄の北鮮港湾建設と経営(井村哲郞)
はじめに
第1節 羅津港建設の浮上
第2節 羅津港建設着工と「北鮮ルート」の整備
第3節 日本海航路の開設
第4節 北鮮ルートの課題
第5節 北鮮3港の輸出入
第6節 北鮮3港の最後
おわりに
第Ⅱ部 南満州鉄道沿線都市の変容
第4章 長春市の都市形成(武 向平)
はじめに
第1節 長春の都市としての起源と発展
第2節 ロシアの中東鉄道敷設と寛城子附属地
第3節 南満州鉄道の日本への譲渡と長春満鉄附属地
第4節 長春の開埠通商と商埠地の経営
おわりに
第5章 奉天市内の交通整備問題(殷 志強)
はじめに
第1節 馬車鉄道会社の成立と運営
第2節 馬車鉄道会社の解散問題
第3節 市政公所の独自の電車敷設
第4節 電車の運営をめぐる中日の紛争
おわりに
第6章 大連華人の社会的生活基盤――大連の華商公議会を中心に(宋 芳芳)
はじめに
第1節 租借地華人の選挙権問題
第2節 大連の華商公議会
第3節 小崗子華商公議会と西崗華人における社会的生活基盤の形成
おわりに
第Ⅲ部 「満州国」期の社会変容
第7章 「満州国」統制経済下の農村闇市場問題(陳 祥)
はじめに
第1節 農村統制政策の構造
第2節 統制政策に対する満州農民の要望と闇市場形成
第3節 満州国農村闇市場の実態
おわりに
第8章 「満州国」期の労働力強制動員――関東憲兵隊文書に見る動員の実態(芳井研一)
はじめに
第1節 住民の強制動員
第2節 特殊工人の強制動員
おわりに


あとがき

ISBN:9784862851505
出版社:知泉書館
判型:菊判
ページ数:288ページ
定価:5200円(本体)
発行年月日:2013年03月
発売日:2013年03月30日
国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:NHF
国際分類コード【Thema(シーマ)】 2:1FPC