バベル
著:吉村実紀恵
紙版
内容紹介
一人の人生に
たった一つ与えられた
身体を見つめ、考え、経験を積み、
思いを深めていくその折節に生まれた言葉が、
一行の歌となって杭のように歌集に刻まれている——
東 直子(歌人・小説家)
【歌集より】
次の世もおんなでありたし生と死の境に赤い口紅を置く
母となることなく生きてタクシーの深夜割増料金表示
一度きり抱いてくれたら砂になる世界でいちばんきれいな砂に
グローバル時代の共通言語もて人はふたたびバベルに挑む
あこがれを空に放ちし日もありきテンカウント待つのみの敗者に
水の無い世界に至る入口に水の墓碑あり氷柱と呼ばむ
目次
Ⅰ
朱夏
人格
余白
刻印
座礁船
書架
方舟
夜光虫
垂直
水底
砂
Ⅱ
黎明の風
両性なれば
バベル
ロスジェネ
レッドブル
気まぐれサラダ
パンとスイーツ
円周率
皴寄る朝
影踏み鬼
置かれた場所で
雨にぬれても
ミッドヌーン
水脈
潮目が変わる
Ⅲ
東京残留孤児
ブラックマーケット
不夜城
花園神社
致死量
檸檬
回遊魚
船上の夜
値下げパン
無理なご乗車
送り火
Ⅳ
真昼の星
陽炎
こもれび
テンカウント
途中下車
帰省
プラハ
灰とダイヤモンド
吟遊詩人
ハナミズキ
水の墓碑
白昼夢
凍れる港
生きるほかなく
あとがき