てらいんくの評論
文学者の生き方は様々
半藤一利や佐多稲子らのこと
著:竹長吉正
内容紹介
書き綴る筆が止まらない、文学の楽しさ、そして愛すべき作家たち!
明治から平成にかけて日本の文学史に名を刻んだ作家たちや作品の魅力を、文学愛溢れる著者が存分に語った評論&エッセイ集。
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この本は文学の評論と随筆を合わせたものである。まず、随筆から始めた。それはわたくしの郷里福井県の風土と生活を記し、なつかしさと思い出のことを簡潔に記した。しかし、筆が次々に進んでいくと、止めることができなくて、どんどん書き綴りが続いて行った。不思議な現象だった。
そして、なつかしい文学者(作家や詩人)のことを書いていると、随筆から評論へと発展したり、歴史的な調べ物の結果を記したりすることになった。
灰谷健次郎、北山修、幸田露伴、土井晩翠、森田たまといった人々の中にはじっさいに会った人もあるし、また、会わない人もある。灰谷健次郎、北山修はじっさいに会った人である。
また、半藤一利、長谷川かな女の二名は、じっさいに会った人である。吉村昭及び津村節子、仁木悦子、渋谷定輔、佐多稲子は会ったことのない人である。
このように「じっさいに会った人」と「会ったことのない人」の中で、印象に強く残る人と残らない人がある。しかし、そんなことよりも、その人の作品や著書を読んで印象に強く残る人と残らない人とがある。
わたくしは読書が好きであるから、じっさいに会わない人でも書物で印象に強く残る人がある。この本で対象とする人々はすべて、読書で印象に強く残った人々である。そして、中にはじっさいに会った人もある。
文学というのは、なかなかよくわからないものである。しかし、人間の生き方を学ぶ勉強になる。文学の本を読むと、こんな生き方をする人があるのかと思うことがある。それはテレビや映画、それに新聞などでも似たことを味わうのだが、文学書を読むと、どんどん深く深く心に入り込んでいく。人生や生き方の深みに入っていくのである。
(中略)
ところで、この著書『文学者の生き方は様々』は新釈八百比丘尼から佐多稲子まで、文学の楽しさを綴った本である。どこからでも読み始めて、文学の楽しさを味わってください。
(「はじめに」より)
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目次
第一章 中間者の恩返し
第二章 新釈八百比丘尼
第三章 年末風景──久々子海岸にて──
第四章 ふるさと礼讃
第五章 灰谷健次郎論
第六章 北山修のこと
第七章 冬の若狭路
第八章 幸田露伴の家族と、さらに土井晩翠の家族のこと
第九章 森田たまのヨーロッパ旅とドイツのこと
第十章 半藤一利と漱石
第十一章 吉村昭の少年及び青年時代
第十二章 吉村昭と津村節子 その一
第十三章 吉村昭と津村節子 その二
第十四章 長谷川かな女のこと
第十五章 仁木悦子から渋谷定輔及び、佐多稲子へ