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我々はホッブズの助言論を通して、ホッブズが「近代的」なのか否かという問いを超えて、ホッブズの哲学的プロジェクトの極致とも言える政治学がもつ、重層性や複雑性をより正当に評価できるのである。（本書２５頁）

序論
１．ホッブズの助言論に関する先行研究
２．ホッブズ研究における本研究の位置づけ
３．本書の構成

第一部 ホッブズの助言論

第一章　助言の思想史
第一節　大陸ヨーロッパの助言論──古典古代から中世、そしてルネサンスへ
第二節　イングランドの助言論とホッブズ
第二章　助言論と熟慮・熟議
第一節　熟議から助言へ──「悪い助言」の排除
１．相手の利益のための助言
２．弁論家批判から助言論へ──熟議論の転換
第二節　助言者に必要な学知と経験
第三節　助言者が担う熟慮
１．主権者の熟慮を補佐する助言者
２．助言と言語──煽動性の排除

第二部 助言論の文脈
第三章　教会批判と助言論──宗教の文脈
第一節　助言者としての聖職者──『法の原理』『市民論』
第二節　主権者に従属する助言者としての聖職者──『リヴァイアサン』
第三節　『リヴァイアサン』教会統治論の射程
第四章　政体批判と助言論──世俗の文脈
第一節　法律家批判と裁判官論
１．公的代行者としての裁判官と助言者としての法律家
２．裁判官、法律家と衡平
第二節　議会批判から助言者批判へ
１．代表論と助言論
２．評議会の伝統と身分制

第三部 ホッブズの「助言」
第五章　「助言者」ホッブズの政体構想
第一節　「哲学者」ホッブズへの批判
第二節　統治の運営──政体における助言者の役割
第三節　政体の「改革」と助言者
第六章　助言と歴史──政体移行論と内戦
第一節　ローマ史解釈の伝統とホッブズ
１．ポリュビオスの政体循環論をめぐって
２．「タキトゥス論」における元首政成立過程と内戦
第二節　『法の原理』と『市民論』──政体移行論の変容
１．獲得による国家と設立による国家──ローマ史と内戦
２．民主制から君主制への移行
第三節　『リヴァイアサン』──応用可能な政体移行論
第四節　歴史叙述の哲学──助言のための歴史
１．教会の独立性を「助言」？──問題の所在
２．ホッブズの哲学方法論──政治学の位置
３．歴史叙述の哲学と「循環」

結論　ホッブズは「助言者」か

著：上田　悠久
1989年東京都生まれ。早稲田大学大学院政治学研究科博士後期課程修了。博士（政治学）。早稲田大学政治経済学術院助教を経て、現在　茨城大学人文社会科学部講師。