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不登校・ひきこもりを生きる

著:高岡 健

紙版

内容紹介

【ひきこもりを認めること】
不登校・ひきこもりの本質とはなにか。親はどうすればよいのか。
集団を拒否する不登校・ひきこもりは、一人で自分や空想の他者と対話し、再生していく貴重な体験。そのプロセスを保障することがなにより大切だと著者は主張する。
親や周囲がその状態を否定的に捉えて非難したり、外に無理やり引き出そうとすると、ひきこもりをいっそうこじらせたり、家庭内暴力などの悲劇を生む。
すぐれた精神科医が、世間一般の見方を転換し、さらに、対応の原則など100の疑問に答える。

目次

第1部 不登校・ひきこもりを考えなおす

Ⅰ 一人ぼっちという大切な時間
1 はじめに
2 第一のテーマ──中学生とはどんな年代だろうか
3 第二のテーマ──精神科の診察室から見える姿
4 第三のテーマ──一七歳の犯罪
5 おわりに

Ⅱ 登校拒否・ひきこもりを生きる
1 登校拒否の数の推移から、その背景を考える
2 イギリスではどうか
3 イギリスのニートと二つの教育雇用政策の失敗
4 日本における“ニート”のとらえかた
5 個人問題化させたニート政策
6 人生の中で“ひきこもり”の時期は大切だ
7 “ひきこもり”“ニート”“登校拒否”をどう考えるか
8 必ず来る! “人生の幅を広げていく時期”が
Ⅲ ライフステージとしての「ひきこもり」
1 十分に引きこもることが必ずプラスを産む
2 日の丸・君が代の発生と起源
3 不登校をめぐる考え方の変遷
4 ひきこもりは不登校と密接なつながりがある
5 自己責任
6 ネット自殺とオリバト
7 空想の中の他者
8 親は自分の人生を歩めばいい

Ⅳ ひきこもりと若者の人権
1 ひきこもりの若者を拉致した裁判
2 ひきこもり青年の愛読書は漱石
3 斜めの関係
4 ひきこもりを保障する経済的基盤
5 個人を集団より無条件に優位に置くこと

第2部 高岡健さんへの100の質問

1 登校拒否・ひきこもりの本質と実態
Q1─登校拒否とは何か
Q2─ひきこもりとは何か
Q3─ひきこもりと不登校との関係
Q4─不登校のないひきこもり
Q5─ひきこもりの年齢・期間
Q6─ひきこもりは「出たいけど出られない」?
Q7─ひきこもりを楽しむ人とは
Q8─ひきこもりのこころには何が起きているのか
Q9─「往路、滞在期、帰路」について
Q10─ひきこもりと精神医学的疾患の関係

2 登校拒否・ひきこもりの要因
Q11─第三次産業と登校拒否増大の関係
Q12─登校拒否のきっかけ
●ひきこもりの家庭背景
Q13─家庭環境はひきこもりの要因になるか
Q14─育て方が悪かった?
Q15─親の虐待によるひきこもり
Q16─専業主婦をモデルにしている?
Q17─家庭内暴力は親や医師が不適切な関わりをしたから?
●なんで? といいたくなる登校拒否・ひきこもり
Q18─ちょっとしたことで登校拒否やひきこもりになる?
Q19─成人後に引きこもる場合
Q20─会社のストレスで引きこもるケース
Q21─「なんで引きこもったのかわからない」という人が多い?
Q22─優しさはキーワードになるか
Q23─ひきこもりは自信がないから?
Q24─ひきこもりと異性問題
Q25─ひきこもりと完全主義の関係
Q26─ひきこもりと高校中退者

3 登校拒否・ひきこもりへの対応の原則
●待つということ?
Q27─登校拒否の小学生・中学生への支援法
Q28─成人になって大学に行きたくなったら?
Q29─不登校生を転校させる意義
Q30─「待つ」ことによる効果
Q31─待つだけでは何年たっても出てこない?
Q32─「待つ」とは「本人より前に出て教え諭したりしないこと」?
Q33─親とのあいだの苦しい思い出
Q34─九、一〇歳は境目?
Q35─小さい時に大事にされなくても自分を変えることはできるか
Q36─物心ついてからの経験のほうが影響するのでは?
Q37─身体症状を意識化して解体していくことができるか
Q38─過食嘔吐がおさまったのは自分を追いつめなかったから?
Q39─吐くことは不自然でみじめだった
Q40─数日休むことを繰り返すのは怠けているから?
Q41─ひきこもりが保障されない場合
Q42─ひきこもりへの対応に男女差はあるか

●早期に介入するということ?
Q43─「なぜ学校に行かないの」と聞いてもらいたい?
Q44─親の働きかけは早いほどいいのか
Q45─大学での「回復プログラム」について
Q46─精神科医や訪問指導の介入は必要か?
Q47─「三五歳以上」「一〇年間以上」「小中の不登校から一〇年以上続くひきこもり」「退職歴あり」は回復しにくい?
●回復のゴールとは
Q48─回復のゴールとは
Q49─働くことは大切なのでは?
Q50─コミュニケーション力は必要か?
Q51─目標は「自分の飯の種は自分で稼ぐ」なのか?
Q52─罪悪感の問題
Q53─社会復帰した人がひきこもりを非難するのは罪悪感から?
Q54─ひきこもりを非難する元ひきこもりが多いが……
Q55─罪悪感を植えつけられずにひきこもりをやっていくのは難しい
Q56─読書や表現活動とは無縁な人はどうしたらいいか
Q57─「俺はひきこもりでいい」とは思えない
Q58─「ひきこもりは悪いことだ」という人の気持ちの変化について
●親はなにをする?
Q59─家族としてどのようにサポートしたらいいか
Q60─家族はどのように関わっていけばいいか
Q61─親はなにをすべきか
Q62─親自身のためになることをすると、どんな影響があるか
Q63─自己否定感を持つ子どもに対して
Q64─信じてくれる人(親)がいると安心感・安全感が生まれる?
Q65─「辛い経験」を聞くときは
Q66─インターネットによる関わりは?
Q67─人と会わないネットコミュニケーションを続けていると?
Q68─本人を「捨てない」愛情表現について
Q69─経済的な理由をあげる親が多いが……
Q70─親が低収入の状況で
Q71─親は態度を変えず謝らない 
Q72─親を観念的に殺すためには
Q73─親と心が切れたら金銭的なつながりは?
Q74─金銭面でルールを決める必要はあるか
Q75─ゲームソフトの要求に応えないと暴れます
Q76─経済支援ができなくなった場合
Q77─家庭内暴力からの避難
●ひきこもりと精神疾患について
Q78─ひきこもりについて精神科医に相談すべきか
Q79─過去の傷にこだわっている人には
Q80─ひきこもりに伴う二次症状の扱いについて
Q81─強迫性障害への対応
Q82─娘が長期間服薬を続けていいのか
Q83─アスペルガー症候群の場合、学校環境の整え方
Q84─軽度発達障害の場合
Q85─薬を飲んでいるが病名はつかない、と言われた
Q86─精神科医の選び方
Q87─高岡さんが児童精神科医になった理由は?
Q88─ひきこもりは薬を使わないと治らない?
Q89─本当は薬で解決するような問題ではないが……
Q90─入院させられる時に注射を打たれました
Q91─なぜ子どもだけが強制入院させられるのか
Q92─強制入院に「ちょっと待って」と言う
Q93─どういう社会政策があれば
●援助グループ・機関のこと
Q94─どんな援助機関が有効か
Q95─斜めの関係の作り方
Q96─斜めの関係のきっかけは?
Q97─ひきこもりは自立できない?
Q98─「自分はそんなに強くなれない」
●ひきこもりの回復
Q99─「待つ」ことで何%が回復するのか
Q100?─ひきこもりの回復とは人格が成熟するとき?

あとがき

著者略歴

著:高岡 健
現在、岐阜大学医学部准教授。精神科医。日本児童青年精神医学会理事。1953年徳島県に生まれる。岐阜大学医学部卒業。岐阜赤十字病院精神科部長などを歴任。主な著書『人格障害論の虚像』『新しいうつ病論』『別れの精神哲学』(以上、雲母書房)『引きこもりを恐れず』『時代病』(吉本隆明氏と共著)『こころ「真」論』(宮台真司氏らと共著)(以上、ウェイツ)『孤立を恐れるな!』『学校の崩壊』(以上、編著、批評社)『16歳からの〈こころ〉学』(青灯社)『精神鑑定とは何か』(明石書店)ほか。

ISBN:9784862280480
出版社:青灯社
判型:4-6
ページ数:224ページ
定価:1600円(本体)
発行年月日:2011年03月
発売日:2011年03月15日
国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:JNA