奇蹟と痙攣
著:蔵持 不三也
内容紹介
1727年5月1日、パリの貧民街にあるサン=メダール教会で、清貧を貫いたジャンセニストの助祭パリスが息を引き取る。以後、その教会墓地でおびただしい奇蹟的快癒が生まれた。教皇権と王権、イエズス会に激しく抗するジャンセニズムを背景とし、民衆的なメシアニズムを表象するように、奇蹟的治癒者は、みずからが証言・署名した奇蹟体験の「記録」を残した。この民衆の、みずからを証し立てる「声」は、やがて、世紀末フランス革命の「声」に重なっていく。
本書は、その膨大な報告書と、奇蹟の真偽や「痙攣派」を巡る攻防の一次史料を詳細に読み解き、フランス近代における「民衆的イマジネール」の動態を描きだした歴史人類学、書きおろし大著。
目次
序章 奇跡と痙攣
第1章 助祭パリスの生涯
パリス伝/パリスの出立/聖職者パリス
第2章 上訴派パリス
教勅「ウニゲニトゥス」の背景/上訴派の登場/ソアナン問題/「ウニゲニトゥス」
問題 の 顚末
第3章 聖職者通信
創刊/《聖職者通信》の資金と編集者たち/フィリップ・ブシェの奇蹟論/《聖職者通
信》における助祭パリスとその奇蹟 /廃刊
第4章 奇蹟の系譜―ポール=ロワイヤルから
奇蹟とジャンセニスム/ポール=ロワイヤルの受難/聖荊の再発見/奇蹟の場としての
ポール=ロワイヤル
第5章 奇蹟の語り―墓地閉鎖前
『奇蹟集成』の背景/カレ・ド・モンジュロン/奇蹟事例1 27例
第6章 奇蹟の語り―墓地閉鎖後
奇蹟事例2. 10例/『諸奇蹟の真実』における奇蹟報告
第7章 奇蹟の遠近法
奇蹟体験者の年齢・性別/奇蹟体験者の社会的出自/奇蹟体験者の出自小教区/奇蹟体
験者の疾病/奇蹟体験者の年代的分布と墓地閉鎖/「墓地閉鎖」前・後の非パリ在住奇
蹟体験者数/聖遺物祈願者/痙攣快癒者
第8章 痙攣派もしくは「痙攣の共同体」
痙攣派のイメージ/痙攣派の誕生/一七三三年の文書闘争/モンジュロンの護教論/
ヴォルテールの兄/痙攣派の諸セクト
終章 歴史の生態系 ――「声」の来歴
パリス現象の構図 /歴史の生態系―声の来歴
あとがき
註・主要引用・参考文献一覧
ISBN:9784862090744
。出版社:言叢社
。判型:A5
。ページ数:600ページ
。定価:7800円(本体)
。発行年月日:2019年09月
。発売日:2019年09月12日
。国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:QRMB。