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経験論の多面的展開

イギリス経験論から現代プラグマティズムへ

編:加賀裕郎
編:新茂之

紙版

内容紹介

イギリスの古典的経験論に端を発し論理実証主義から分析哲学へと至るいわゆる「英米哲学」は,事実や経験を超える真理を前提するアプリオリズムを排し,着実かつ科学的探求によって検証できる知見から考察を始めることにその思想的特徴を有する。本書はその発展過程を多角的視点より跡づけ,豊穣なるその可能性を未来へと繋ぐ。道徳・芸術から論理・科学にわたる経験論の豊かな世界。そこでは情報のインプットとしての経験と、学習過程としての経験が交響する。

目次

まえがき

第Ⅰ部 経験概念の多面性
第1章 道徳的感情の共有可能性の構造(大槻晃右)
     ――ヒュームの道徳論における一般的観点の機序――
 はじめに
 第一節 ヒュームの道徳論における道徳的評価の基本的構造
 第二節 道徳的評価における一般的観点の役割をめぐる問題
 第三節 道徳的評価における一般的規則と一般的観点の位置付け
 第四節 一般的観点に立つことの内実
 おわりに  

第2章 「生に対する歴史の功罪」の循環説について(溝口隆一)
 はじめに
 第一節 時間原子の教説
 第二節 生を活性化する歴史
 第三節 主体的真理としての永遠回帰
 おわりに

第3章 デューイにおける美的経験のコミュニケーション的様態(阿部康平)
 はじめに
 第一節 デューイにおける美的経験の位置づけ
 第二節 経験と芸術作品の意味
 第三節 美的経験と想像の働き
 第四節 コミュニケーションとしての芸術
 おわりに

第4章 デューイ倫理学における経験の共有(宮﨑宏志)
 第一節 問題の所在
 第二節 デューイにおける選択的な注意
 第三節 第一次的経験の特質
 第四節 習慣に反映される知識や価値
 第五節 経験の共有のための想像力の駆使

第Ⅱ部 経験論と論理学
第1章 J・S・ミル『論理学体系』における幾何学の経験論的把握(新  茂之)
     ――必然性の問題に照準を定めて――
 はじめに
 第一節 幾何学的概念の、経験からの独立性
 第二節 幾何学的概念の出自にかんする経験論的理解
 第三節 枚挙的全称性としての「あらゆる」
 第四節 論証域の枚挙的全称性としての必然性
 おわりに

第2章 カルナップ「哲学の疑似問題」における「合理的な再構築」の認識論的意義(小川 雄)
 はじめに
 第一節 合理的な再構築
 第二節 論理的な依存関係
 第三節 認知の正当化
 第四節 錯誤の可能性
 おわりに

第3章 論理学と認知研究の接続(下嶋 篤/Dave Baker-Plummer)
     ――認知への適応論的アプローチにおける論理研究の可能性――
 はじめに
 第一節  推論のパターンを表すものとしての論理規則
 第二節 世界の規則性のあり方を捉えるものとしての論理規則
 第三節 論理学と認知心理学の再接続
 おわりに

第Ⅲ部 経験論の現代的展開
第1章 デューイの「経験」概念についての考察(藤井 千春)
     ――「探究」という範疇による把握とそのポスト・モダン的意義――
 はじめに  205
 第一節 デューイの哲学の主題
 第二節 伝統的な哲学に対する批判
 第三節 「経験」概念の検討
 第四節 実験主義的性格
 第五節 知性(intelligence)による確実性(certainty)の増大
 第六節 経験の連続的発展
 おわりに

第2章 論理的経験論から日常言語によるコミュニケーション論へ(林  泰成)
     ――ウィトゲンシュタイン哲学を中心に――
 第一節 論理的経験論からの展開
 第二節 ウィーン学団と『論理哲学論考』
 第三節 言語ゲームと生活形式
 第四節 社会科学の理念とウィトゲンシュタイン派エスノメソドロジー
 第五節 〈規範に従う〉ということ
 第六節 新しいコミュニケーション論へ

第3章 パトナムの自然的実在論(加賀裕郎)
     ――真理と知覚の哲学の検討を通して――
 第一節 パトナムにおける実在論の変遷
 第二節 内在的実在論から自然的実在論へ―真理概念の変化を中心に
 第三節 パトナムの知覚の哲学と自然的実在論
 第四節 パトナムとマクダウェルの知覚の哲学をめぐる対話

第4章 ‘Empfindung’と‘Erfahrung’の間(加賀裕郎)
     ――文化的自然主義のほうへ――
 第一節 問題設定
 第二節 ‘Empfindung’から‘Erfahrung’へ 
 第三節 経験論の黄昏
 第四節 「最小限の経験論」をめぐる思索
 第五節 結び――最小限の経験論から文化的自然主義へ

あとがき

著者略歴

編:加賀裕郎
1955年生まれ。同志社大学大学院文学研究科博士後期課程退学。博士(哲学)。現在,同志社女子大学現代社会学部特別任用教授。[主要業績]『デューイ自然主義の生成と構造』(晃洋書房,2009年),『民主主義の哲学―デューイ思想の形成と展開―』(ナカニシヤ出版,2020年),ジョン・デューイ『確実性の探求』〈デューイ著作集4〉(翻訳:東京大学出版会,2018年)。
編:新茂之
1967年生まれ。同志社大学大学院文学研究科博士後期課程退学。博士(哲学)。現在,同志社大学文学部教授。[主要業績]『パース「プラグマティズム」の研究―関係と進化と立論のカテゴリー論的整序の試み―』(晃洋書房,2011年),「J. S. ミル『論理学体系』における推論の論理的構造」『イギリス理想主義研究年報』特集号(2020年2月),「デューイ『民主主義と教育』における経験という概念」日本デューイ学会編『民主主義と教育の再創造―デューイ研究の未来へ―』勁草書房,2020年12月)。

ISBN:9784860651503
出版社:萌書房
判型:4-6
ページ数:320ページ
定価:3000円(本体)
発行年月日:2021年12月
発売日:2021年12月13日
国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:QDTK
国際分類コード【Thema(シーマ)】 2:QDX