第Ⅰ部 公正価値会計の現状と諸相
第1章 会計の基本機能と公正価値会計
―分配可能利益の計算機能の観点から―
1-1 はじめに
1-2 会計の基本機能とトライアングル体制
1-3 評価益の分配可能性
1-4 公正価値会計の特徴
1-5 全面公正価値会計における分配基準の模索
1-6 おわりに
第2章 公正価値会計の登場とその時代的背景
2-1 はじめに
2-2 S&L危機と時価主義への期待
2-3 公正価値会計の登場
2-4 エンロン事件と公正価値会計
2-5 サブプライムローン問題と公正価値会計
2-6 おわりに
第3章 公正価値会計の現状と課題
3-1 はじめに
3-2 サーベイの類型
3-3 会計の機能と公正価値の硬度
3-4 投資意思決定支援機能と公正価値会計
3-5 契約支援機能と公正価値会計
3-6 おわりに
第4章 公正価値会計をめぐる相剋
―実現主義の呪縛―
4-1 はじめに
4-2 収益費用アプローチから資産負債アプローチへの会計観の変更
4-3 資産負債アプローチにおける測定属性選択をめぐる問題
4-4 収益費用アプローチの展開と実現原則
4-5 企業リスクと会計測定
4-6 おわりに
第Ⅱ部 公正価値会計への歴史からの検証
第5章 17世紀における時価評価の実態
―イギリス東インド会社の時価評価実務(1664-1694)―
5-1 はじめに
5-2 ロンドン東インド会社の概要と輸入商品の販売方法
5-3 元帳締切時の売残商品の評価方法
5-4 売却価格を基礎とした見積もり
5-5 評価差額の処理
5-6 おわりに
第6章 18世紀を中心にイギリス簿記書に見る時価評価の登場
―モンテージ、マルコム、ヘイズ、ハミルトンの記帳例示―
6-1 はじめに
6-2 時価評価の登場
6-3 18世紀までの固定資産の時価評価
6-4 18世紀における固定資産の評価方法
6-5 棚卸資産に対する時価評価の登場
6-6 おわりに
第7章 19世紀イギリスの企業会計実務における時価情報の意義
―公益事業会社と一般事業会社の場合―
7-1 はじめに
7-2 グランド・ジャンクション鉄道会社の会計実務における時価情報
7-3 ヌーシャテル・アスファルト株式会社の会計実務における時価情報
7-4 ナタールランド・コロナイゼイション株式会社の会計実務における時価情報
7-5 おわりに
第8章 19世紀末からのプロフェッショナル監査における資産評価額への対応
―英米監査テキストにみる手続き―
8-1 はじめに
8-2 イギリス・プロフェッショナル監査の立証構造
8-3 資産の検証(verification)という観念
8-4 アメリカ貸借対照表監査とそこにおける資産の検証
8-5 おわりに
第9章 伝統的時価主義会計と公正価値測定
9-1 はじめに
9-2 米国における伝統的時価主義会計の制度化実験と新金融商品プロジェクト以後
9-3 「企業固有の観点」対「市場参加者の観点」
9-4 日本における戦後の時価評価および公正価値測定受容の経緯
9-5 おわりに
第10章 歴史に見る公正価値会計離脱の諸相
―時価会計適用の現実的条件―
10-1 はじめに―時価会計適用を巡る基本的視座―
10-2 金融危機と時価会計適用緩和に対する一つの解釈
10-3 時価会計に対する流動性の機能
10-4 流動性喪失時における時価離脱論と時価からの隔離
10-5 時価会計の適用妥当性に関する議論と時価会計適用回避
10-6 おわりに―時価会計適用の前提となる市場と企業主体の条件―
結章 行き過ぎた有用性アプローチへの歴史からの警鐘
11-1 はじめに
11-2 会計の本質―証拠性の担保としての取得原価―
11-3 会計の計算構造を支える複式簿記の根源的役割
11-4 時間軸の相違に過ぎない取得原価と時価
11-5 取引価格会計としての取得原価と市場価値
11-6 割引現在価値と実現概念
11-7 信頼性、検証可能性の後退と忠実な表現
11-8 むすびに代えて―会計の本来的役割―
索引