出版書誌データベース

　人口の東京一極集中の進展により、南関東一円に「首都圏言葉」とも云うべき、共通の言葉が生まれつつある。
　これは、今までの東京語系の、いわゆる「標準語」とはひと味違った、これからの「標準日本語」につながっていくものではないかとも考えられる。
　そうした意味で、江戸言葉から東京言葉へ、そして、首都圏に広がる新しい言葉へ、といった変容の足取りをたどる。

I 「あづま言葉」の原風景
　1. 京言葉と東国語
　2. 言葉の「江戸お打ち入り」
　3. 上方言葉の「あづま下り」

II 東西言語圏の成立
　1. 江戸言葉の急成長
　2. 西の上方語VS東の江戸語

III 江戸言葉の諸相
　1. 彩り豊かな江戸言葉
　2. 武家言葉と町人言葉
　3. 男伊達「六方者」の六方言葉
　4. 吉原「アリンス国」の言葉

IV 東京語の芽生え
　1. 「エド言葉」から「トーケイ言葉」へ
　2. 西国武士言葉の東上

V 東京語の文明開化
　1. 日本語テキストの言葉
　2. 「君もキタマエ」/「よくッテヨ」
　3. 東京の中流社会の言葉

VI 教科書言葉・小説言葉
　1. 國語ノ標準ヲ知ラシメ、其統一ヲ圖ル
　2. 言文一致のリーダーたち

VII 山の手ことば・下町ことば
　1. 「武家の町・町人の町」から「勤め人の町・商人の町」へ
　2. ベランメエ調・山の手蛮語・ざあます言葉
　3. 下町言葉の衰退
　4. 「旧市の言葉/新市の言葉」から「区部の言葉/郊外の言葉」へ

VIII 東京語圏の拡張と変容
　1. 東京語と放送言葉
　2. 団地ことば・首都圏ことば

あとがき

江戸から東京へ―言葉の記録
図表一覧
索引

著：田中　章夫
東京生まれ
東京教育大学(現・筑波大学)大学院博士課程中退。
香川大学教官・国立国語研究所言語計量第一研究室長・大阪外国語大学教授・学習院大学教授・東呉大学(台湾)客座教授を歴任。定年退職
モナシュ大学(オーストラリア)・カイロ大学(エジプト)・ネール大学(インド)・オーストラリア国立大学・上海外国語大学・北京/大連日語培訓部に出向。
専攻――近代日本語学・日本語語彙論・位相論
著書――
『国語語彙論』(明治書院、1978年)
『東京語――その成立と展開(明治書院、1983年)
『標準語』(誠文堂新光社、1991年)
『日本語の位相と位相差』(明治書院、1999年)
『近代日本語の文法と表現』(明治書院、2001年)
『近代日本語の語彙と語法』(東京堂出版、2002年)
『揺れ動く日本語』(東京堂出版、2007年)
『日本語雑記帳』(岩波書店、2012年)
『日本語スケッチ帳』(岩波書店、2014年)ほか