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繊維女性労働者の生活記録運動

1950年代サークル運動と若者たちの自己形成

著:辻 智子

紙版

内容紹介

彼女たちは何を悩み、書き、考えたのか。紡績工場の労働組合文化活動から生まれたサークル「生活を記録する会」に残されたガリ版刷りの文集や通信、メンバーの個人日記やインタビューから、10代、20代の工員たちが、書くことで問題を対象化し、仲間で語り合い、解決していく実践を、社会情勢も踏まえて、具体的・多角的に記述。50年代後半以降の工員たちの人生にも着目する。「母の生き方と自分の生き方」や「仲間のなかの恋愛」「寮自治」「農村に嫁ぐこと」など書くこと・語り合うことで問題にじっくり向き合い、理解と納得を導いてきた女子工員たちの実践の記録。

目次

第四節 サークルの中の恋愛をめぐって  
恋愛によるサークルの危機 /「仲間のなかの恋愛」という実践課題 /農村青年との交流 
小  括  

第四章 女性労働者の葛藤と模索
──一九五〇年代後半~一九六〇年代初頭
第一節 「なかまのなかの結婚式」  
結 婚 式 /仲間にとっての結婚式 /「なかまのなかの結婚式」をめぐって 
第二節 女性にとっての結婚──「適齢期」をめぐって  
女性の生き方 /集団創作『明日を紡ぐ娘たち』 
第三節 「近代的女子労働者」像の問い直し──〈百姓娘〉をめぐって  
「進歩的」指導者への懐疑と批判 /「進歩的百姓娘」をめぐって /〈百姓娘〉の意味するもの 
第四節 操業短縮と解雇・帰休  
一九五〇年代後半の泊工場と女性労働者 /操短のいきさつ /操短をめぐる攻防 /操短を乗り切る 
第五節 サークルの転機  
澤井裁判の結末 /復職後のサークル活動 /仲間たちの退社 
小  括  
補 節 一九五〇年代の繊維女性労働者とその意識  
繊維産業の女性労働者と労働組合 /繊維女性労働者の声──全繊同盟機関誌『友愛』から 

第五章 一九六〇年代以降のサークルと仲間たち
第一節 「五年目ごとのつどい」と仲間の歩み  
「五年目ごとのつどい」 /仲間の足跡 /一九六〇年代 /一九七〇年代 /一九八〇年代 /一九九〇年代以降 
第二節 女性たちの結婚とその後  
結婚のいきさつ /「選ぶ側になりたい」 /嫁の立場──結婚後の暮らし 
第三節 なぜ書くのか  
通信・文集の発行 /「書いてどうなる」──なぜ書くのか 
小  括  

終 章
第一節 結  論  
書くことへの絶えざる問い /理論と実践の統一への志向と矛盾の受容 /自己内対話=思考としての書くこと /集団の共同性と緊張関係 /表現の複数性 /一九五〇年代という時代──戦後の「新しさ」への確信 /主題(テーマ)の生成とその展開──繊維女性労働者の二重性 
第二節 今後の課題  
(1)書くことの集団的実践にかかわる教育学的考察 /(2)生活記録の系譜に関する研究 /(3)一九五〇年代の女性の運動研究の再考 /(4)働くことと学ぶこと──若い女性たちの生活・労働・教育をめぐって 

あとがき  
巻末資料  
人名索引  
事項索引  

著者略歴

著:辻 智子
辻 智子
1971年 神奈川県小田原市生まれ
1995年 お茶の水女子大学大学院人文科学研究科修士課程修了
2000年 同大学院博士課程人間文化研究科単位取得満期退学
その後,首都圏の多数の大学で非常勤講師を務める傍ら,公民館や女性センター等での女性問題学習や地域青年集団の学習活動に助言者・チューターとして関わる。
2010年 博士(学術)(お茶の水女子大学)
2011年 東海大学課程資格教育センター特任講師
2013年 北海道大学教育学研究院准教授
主な著書
「社会教育施設・女性関連施設の現状と課題」日本社会教育学会編『ジェンダーと社会教育(日本の社会教育第45集)』東洋館出版社,2001年
「第6章第2節 生活記録」日本社会教育学会編『講座 現代社会教育の理論Ⅲ 成人の学習と生涯学習の組織化』東洋館出版社,2004年
下村美恵子・辻智子・内藤和美・矢口悦子『女性センターを問う――「協働」と「学習」の検証』新水社,2005年
(共著)「「田舎」…

ISBN:9784832968158
出版社:北海道大学出版会
判型:A5
ページ数:504ページ
定価:9000円(本体)
発行年月日:2015年11月
発売日:2015年11月26日
国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:JBF