唯識説の深層心理とことば
『摂大乗論』に基づいて
著:小谷 信千代
内容紹介
より精緻に、より深く。
唯識の「ことば」の哲学へ――
「あらゆる物事は心の現れである」と説く唯識。心は、視覚(眼識)、聴覚(耳識)、嗅覚(鼻識)、味覚(舌識)、触覚(身識)、知覚(意識)、自我意識(マナ識)の七識と、それらの根底に潜む深層の心であるアーラヤ識から成る。
かつて井筒俊彦氏は、心の深層で展開される「意味」世界の生成の秘密を探り出す道を唯識の哲学に中に見つけ、また丸山圭三郎氏は、ソシュールの言語哲学の中に唯識の説くアーラヤ識説と似た解釈が為されている、と述べた。
本書は、井筒・丸山両氏の説に触発され、世界が現象する経緯を哲学的整合性をもって理論的に説明し得る「ことば」の哲学として解き明かす。
テキストに無著の『摂大乗論』を取り上げ、唯識思想理解の重要な鍵「アーラヤ識」「三性説」「唯識の修道論」「深層心理とことば」などを探り、解説する。そこには唯識を分かり易く説明した入門書の性格と、その難解な言語哲学の解明を志した研究書の意味を合わせ持つ。
【目次】
はじめに
序 言
序 章
第一章 唯識ということ
第二章 アーラヤ識説
第三章 三性説
第四章 現象世界生起の構造
第五章 唯識学派の修習法
第六章 唯識説の「ことば」の哲学
第七章 瑜伽行と仏身論
おわりに
参考文献/索 引
目次
はじめに
序 言
序 章
一 無著の時代
二 唯識思想における「ことば」
第一章 唯識ということ
第二章 アーラヤ識説
一 アーラヤ識
二 マナ識
三 熏習と種子
四 アーラヤ識の二種の縁起
五 聞熏習の種子
第三章 三性説
一 三性とは何か
二 三性の名称の由来
第四章 現象世界生起の構造
一 依他起性に潜むダイナミズム
二 依他起性における意識
三 「ことば」を生起する心作用
四 言語活動を生起する想と尋伺
五 分別の形相因
六 行の形相因
七 唯識学派が「ことば」を重視する理由
第五章 唯識学派の修習法
一 有部の法の修習
二 唯識学派の法の修習
第六章 唯識説の「ことば」の哲学
一 種子はすべて潜在的「意味」形象である
二 唯識思想における深層心理と「ことば」
三 見聞覚知は「ことば」の種子を熏習する
四 意味への転成による「ことば」の種子の熏習
五 意識の深層への言語学
第七章 瑜伽行と仏身論
一 無分別智と転依
二 無分別智と三種の仏身
おわりに
参考文献/索 引