出版社を探す

法蔵館文庫

ラジオの戦争責任

著:坂本 慎一

紙版

内容紹介

なぜあの戦争は起こったのか。なぜ「終戦記念日」は八月十五日なのか。そこには、当時最強のマスメディア・ラジオの存在があった―。

放送を軌道に乗せるために始まった初期の仏教講話の時代から「玉音放送」に至るラジオの歴史を五人の人物伝によってひもとき、日本が戦争を拡大させていった経緯と、またたく間に終戦を受け入れた背景に見え隠れする「日本特有の事情」を描き出す。

これまでの昭和史研究の〝盲点〟を突いた好著。

※本書の原本は、2008年にPHP研究所より刊行されました。

【目次】
まえがき
序 章 最強のマスメディア・日本のラジオ
第一章 「超絶」の演説家 高嶋米峰
第二章 時代の寵児 友松圓諦
第三章 熱意の商人 松下幸之助
第四章 希代のラジオ扇動家 松岡洋右
第五章 玉音放送の仕掛け人 下村宏
終 章 昭和初期ラジオの功と罪

目次

まえがき

序 章 最強のマスメディア・日本のラジオ
太平洋戦争に関する疑問/戦前の放送の概要/日本におけるラジオ放送の最大の特徴/本書の概要

第一章 「超絶」の演説家 高嶋米峰
高嶋米峰とは/若きころの高嶋/新仏教運動/初演説/「いかに生きるべきか」を問う宗教/雑誌史上初の「廃刊号」/聖徳太子千三百年法要/「超絶」の始まり/「ひのえうま生まれの娘さんたちに」/初期ラジオ放送への貢献/教養放送全盛期へ/軍国主義への挑戦/軍部のブラックリスト/連合軍の進駐を迎えて/考察―ラジオ啓蒙の開拓者―

第二章 時代の寵児 友松圓諦
友松圓諦とは/世に出る前の友松/十五日間の「法句経講義」/高神覚昇の登場/真理運動の開始/数々のスキャンダル/雄弁家たちの話し方/その後のラジオ出演/「仏教的非戦論」から戦争礼賛への転向/考察―教養放送全盛期の代表的人物―

第三章 熱意の商人 松下幸之助
松下幸之助とラジオ/ラジオと出会うまでの松下/ラジオとの出会い/「ラジオ屋」は水商売の代名詞/「故障絶無」のラジオを目指して/「当選号」の失敗―試行錯誤の日々―/下村宏の高い評価/トップメーカーへの躍進と価格競争/松下のラジオ出演/ラジオ番組「店員の時間」/ラジオの教養番組から生まれた〝松下幸之助の言葉〟/松下の戦争協力/考察―ラジオを国民的なものにした功績―

第四章 希代のラジオ扇動家 松岡洋右
松岡洋右とは/四十歳までの松岡/雄弁家として著名に/大演説「十字架上の日本」/国際連盟脱退と「サヨナラ・スピーチ」/大衆の英雄から満鉄総裁へ/外務大臣松岡の早技/ラジオ時代の英雄/大臣を罷免される/太平洋戦争と松岡/考察―ラジオによる扇動政治の時代―

第五章 玉音放送の仕掛け人 下村宏
下村宏とは/若き日の下村/官僚時代/朝日新聞入社、副社長に/ラジオは「声による新聞」/日本の敗北を予想/軍部からの入閣反対、そして雌伏の日々/軍部に認められる/終戦内閣への参加/天皇への拝謁/昭和天皇、無条件降伏決意の瞬間/終戦の御聖断/録音作業と反乱軍による監禁/三十七分半の日本史上もっとも衝撃的な放送/戦犯容疑/考察―終戦を成功させた男―

終 章 昭和初期ラジオの功と罪
昭和史研究の盲点/声の文化としてのラジオ/統計重視の災い/集団心理と日本のラジオ/何が太平洋戦争の本質なのか/未来への教訓

あとがき/主な参考文献/法蔵館文庫版・解説

著者略歴

著:坂本 慎一
1971年福岡県生まれ。大阪市立大学大学院経済学研究科後期博士課程修了。博士(経済学)。現在、PHP研究所PHP理念経営研究センター研究コーディネーター。著書に『渋沢栄一の経世済民思想』(日本経済評論社)、『玉音放送をプロデュースした男 下村宏』『戦前のラジオ放送と松下幸之助』(いずれも、PHP研究所)などがある。

ISBN:9784831826367
出版社:法藏館
判型:文庫
ページ数:272ページ
定価:900円(本体)
発行年月日:2022年07月
発売日:2022年07月08日
国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:KNTP2