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宗教の行方

現代のための宗教十二講

著:八木 誠一

紙版

内容紹介

経済中心と言語化=情報化により、人間性は軽視され、「生」を見失った現代社会。宗教は、伝統の拘束から脱却し、現代に通じる言葉で、情報化されえない宗教的真実を語るべき時である。
現代人からの宗教批判、宗教からの現代批判を通して、「神は死んだ」現代に、宗教回復の道を示す最新講義。

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情報化された現代では、情報化されえない宗教的真実は無視されてしまう。それは人間性の無視・無理解に通じるものだ。いまは仏教もキリスト教も協力して確認可能な宗教的真実を現代に通じる言葉で語るべき時である。本書はこの方向へのささやかな一提言にすぎないが、この方向が本書の求める「宗教の行方」にほかならない。(「序にかえて」より)

■目次■
序にかえて――宗教の行方ということ
第一講 序説――問題設定と講義の内容
第二講 生の表層・中層・深層
第三講 用語の説明
第四講 社会・コミュニケーション・エゴとニヒル
第五講 言語と情報――表層批判と言語批判
第六講 言語批判と宗教批判・近代批判
第七講 直接経験
第八講 統合ということ
第九講 超越
第十講 統合論とキリスト教
第十一講 場所論から見た仏教
第十二講 まとめ――統合作用の場と創造的空
あとがき

目次

序にかえて――宗教の行方ということ

第一講 序説――問題設定と講義の内容
 神と超越/生の諸層/近代の「個人」主義/極/統合/日常言語は統合を隠す/変換

第二講 生の表層・中層・深層
 説明/表層と中層/中層から深層へ

第三講 用語の説明
 自我/現実/現実を知る知/超越/場と場所/超越の知・まとめ/生・共生・統合(略述)/統合/神/表現と解釈/「場」と「場所」について、さらに一応の説明/場所、極/場所論/場所論は理性的存在論ではない/場所論は人格主義でもない

第四講 社会・コミュニケーション・エゴとニヒル
 総論/コミュニケーション/社会の軸となる人間関係/社会/契約/社会の営為/文化――世代を超えて受け継がれる生活様式/倫理/社会と言語――エゴイズムとニヒリズム/作家における例

第五講 言語と情報――表層批判と言語批判
1 言語とは何か
 言語――記号の体系/記号と象徴/比喩/言語機能――総論/言語(文)の基本形/主語定立の問題性/言語の分類と有意味・無意味/記述言語/表現言語/宗教言語/動能言語
2 言語使用の問題性
 問題性1/問題性2/問題性3/問題性4
3 言語機能の問題性、あるいは正しい情報の問題性
 情報に用いられる一意的言語の問題性/情報/一意性/一意的言語批判/一意的言語がもたらすもの――まとめ/その結果/一意的言語は認識を細分化する/一意的言語は他者を排除する
4 補論
(1) 知(認識)
 基本的区別について/捉え方に関する基本的区別/区別の非一意性/結論――近代文明の趨勢
(2) 価値と実践
 行為の規範に関して/行為と関連する「価値」に関して/知と一意的言語の問題性と有用性

第六講 言語批判と宗教批判・近代批判
1 自我と生
 情報と自我・情報の検証/単なる自我/情報と言語
2 生(いのちの営み)
 「いのちの営み」とその直接的感覚/作用的一/いのちの願――本能と自我/人格
(1) 単なる自我の生――別の面より
 表層/楽園喪失/道徳と生/中層を自覚した生き方がある/自己表現的生
(2) 知 宗教と文化の衰退――知の面から考え直してみる
 認識(主―客関係)記述言語/理解(我―汝関係)表現言語/表現言語の問題性/自覚(自己―自我関係)
3 批判
(1) 現代批判・宗教批判――言語使用の観点より
 宗教/批判
(2) 近代批判――総論
 科学の成立と発展がもたらしたもの
(3) 単なる自我の文明、つまり近代化がもたらしたもの
 植民地化/戦争と環境破壊

第七講 直接経験
1 序説
 直接経験/最初の言語化
2 直接経験とはどういうことか
 考え方と生き方の転換/再言語化について
3 直接経験の諸相
 直接経験の領域の区別/主―客「知る」/自己―自我「行う」/「自己」の顕現・「自己による自由」の現実化/我―汝「出会う」(わたしとあなた)/人格
4 直接経験で見えてくること
 統合という構造
(1) 直接経験の全体について
 時間/空間/生体/個物/言語/認識/生き方/世界・社会/関係/直接経験と「自然」
(2) 自己―自我直接経験への補論
 律法主義からの解放・配慮の生による自己束縛からの解放/プログラムフリー・コードフリー

第八講 統合ということ
1 統合体とは何か
 統一とコミュニケーション/いわゆる有機体との違い/自我の役割/場/統合体の諸例
2 統合体の構造と構成要素
 場/場所(極)/場の諸面/場と空/極/極のフロント――フロント同化/変換
3 相互作用とバランス
 統合体の消滅/統合体形成への願/宗教/統合の場の直接経験はない/宗教の必要性

第九講 超越
1 一意的言語の世界を超える統合
 統合作用/直接経験の言語化
2 統合作用は存在する
 検証――善きサマリア人の場合/統合作用の場は現実か
3 ふたたび「神」について
 何を神と呼ぶのか/神の存在証明
4 統合作用の「場」
 人格統合体の例――太陽系の場合/歪みを解消するはたらき/場のはたらきの例――磁場・太陽
5 「神」と「神の支配」
 イエスが語る「神」/父なる神/創造的空と統合作用の場

第十講 統合論とキリスト教
1 『旧約聖書』の宗教とユダヤ教
2 原始キリスト教
 イエス/復活信仰の成立/伝承の発展/エルサレム起源のキリスト宣教とパウロの関与/ヘレニズム世界での変容/パウロの場合/パウロにおける無心の表現/さらなる伝承の発展:福音書へ/イエスをキリストとして描く福音書
3 古代教会と神学の形成
 三位一体論/キリスト論/イエスにおける神性と人性の関係/統合論と三位一体論・キリスト論/贖罪論
4 二〇世紀の神学

第十一講 場所論から見た仏教
1 総論
 言語批判と直接経験/対話上の注意/キリスト教と仏教の対応――若干の例
2 各論
 初期仏教/ナーガールジュナ(竜樹)の説一切有部批判/四句否定/唯識/般若心経/天台宗/華厳教学/浄土教/禅――不立文字・直指人心・見性成仏
3 まとめ
4 京都学派
 西田幾太郎/田辺元/久松真一/西谷啓治/阿部正雄/上田閑照/滝沢克己

第十二講 まとめ――統合作用の場と創造的空
1 宗教の批判的理解
 宗教言語の解釈一般論・宗教的文献解釈
2 超越(統合作用の場と創造的空)の現実性――福音とは何のことか
 統合作用の現実性
3 統合作用から創造的空へ――自覚の深化
 場の二重性/無心
4 まとめ――統合作用と創造的空の関係
 文化の衰退/宗教回復への道/主―客の直接経験/自己―自我直接経験/自覚の深化1――学びのプロセス/信――超越への信/瞑想/省察/自覚の深化2――その諸相統合心の諸面の深化/無心
5 おわりに
6 むすび

あとがき

著者略歴

著:八木 誠一
1932年生まれ。専攻:新約聖書神学、宗教哲学。東京工業大学、ベルン大学(スイス、客員教授)、ハンブルグ大学(客員教授)、横浜桐蔭大学教授を経て、現在、東京工業大学名誉教授、文学博士(九州大学)、名誉神学博士(ベルン大学)。著書に『〈はたらく神〉の神学』『宗教とは何か』ほか多数。

ISBN:9784831810618
出版社:法藏館
判型:4-6
ページ数:382ページ
定価:3200円(本体)
発行年月日:2022年09月
発売日:2022年08月26日
国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:QRA