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メンタルヘルス・ライブラリー 37

地域包括ケアから社会変革への道程【実践編】

ソーシャルワーカーによるソーシャルアクションの実践形態

著:中島 康晴

紙版

内容紹介

ソーシャルワーカーの仕事は、人びとのより身近で継続的な社会環境としての地域において、支援する側・される側という支配・被支配のタテの権力関係を超えて、「ひらかれた」地域へ向けて信頼性、互酬性、多様性を創出し、暮らしに困難を抱える人びとへの眼差しを地域住民と共有しつつ、互いのアイデンティティの変容をとおして地域変革を実現し、さらに社会変革へ向けてその理念を具現化させることにある。
そうした方針の下、NPO法人「地域の絆」は、障害者と健常者、施設と地域社会の分断を乗り越え、「障害者・高齢者」の社会参加によって地域を活性化することを理念に掲げて設立され、単なる福祉・ケア施設にとどまらない一般人も取り込んだ「まちづくり」の拠点となる施設を運営している。
【理論編】に続き、NPO法人「地域の絆」の地域に密着した活動とその発展を記録した【実践編】。

目次

はじめに
凡例

第四章 実践の素地を整える――「地域の絆」の理念と概要
●「地域の絆」の理念
●個別支援と地域支援の結合――ケアとまちづくりの分断を乗り越える
●「有事」のための平時の連携――日常的で継続的なコミュニケーションの堆積
●大切にしている地域連携の方法――地域活動における過程・即応・改変の重要性
●ストレングスモデルの展開――個別性と多様性の尊重された社会構築への端緒
●余所者の強みを生かす――「地域の強みを浮き彫りにする力」と「既存の関係に縛られない自由な活動」

第五章 地域包括ケアから社会変革への道筋――「人びと」の「出逢い直し」を求めて
●地域における正負の側面――地域住民が主体的に信頼性と互酬性を育むことを促進する
●「状況に埋め込まれた学習」論から学ぶ地域包摂の方法
●実践の価値と社会構造を捨象した状況的学習――状況的学習を社会変革へ連ねる
●人間の困難を地域に「ひらく」ことで生まれた相互支援の関係――「支援困難事例」が地域を変革する
●地域のストレングスと個別支援の相乗作用を促進する――「人びと」と地域住民の「出逢い直し」
●「排除の関係」から「支援の関係」への道程――似非専門職からの脱却を志向した実践
●地域包摂・地域変革を促進するソーシャルワーカーの拠り所

第六章 社会変革を促進する組織運営論
●「実践共同体」の目的および共通理解
●社会的企業としての運営方針――「社会性」と「事業性」の均衡をはかる
●状況的学習論における「アクセス」「透明性」と「分業」の問題
●社会変革を促進する組織運営の課題――代表者の苦悩とジレンマ

第七章 地域包括ケアが社会を変える――地域変革から社会変革へ
●人間の尊厳を保障するための拠り所
●リスクを取らないソーシャルワークはソーシャルワークたり得ない
●地域変革から社会変革へ――「状況的学習」から「社会学習」へ
●ソーシャルワーカーとしての社会福祉士への期待
●平和運動の旗手としてのソーシャルワーク――ソーシャルワークは人間の希望になり得るか

あとがき

著者略歴

著:中島 康晴
1973年10月6日生まれ。花園大学では、八木晃介先生(文学部教授)の下、社会学を中心に社会福祉学を学ぶ。巷で言われる「常識」「普通」に対しては、いつも猜疑心を持っている。1億2千万人の客観性などあり得ない事実を鑑みると、「普通」や「常識」は誰にとってのそれであるのか、常に思いを巡らせておく必要性を感じる。いわゆる排除される側から常に社会を捉え、社会の変化を促すことが、実は誰もが自分らしく安心して暮らせる社会の構築に繋がると信じている。
主な職歴は、デイサービスセンター生活相談員、老人保健施設介護職リーダー、デイサービス・グループホーム管理者。社会福祉専門職がまちづくりに関与していく実践の必要性を感じ、2006年2月20日、特定非営利活動法人地域の絆を設立。学生時代に参加した市民運動「市民の絆」の名前を端緒として命名。代表理事。
公益社団法人日本社会福祉士会理事(2015年度~)、広島県認知症コーディネーター、東北大学大学院教育学研究科博士課程在学中(2014年度~)著書『地域包括ケアの理論と実践─社会資源活用術』 (介護福祉経営士実行力シリーズ、日本医療企画)。

ISBN:9784826506649
出版社:批評社
判型:A5
ページ数:208ページ
定価:1800円(本体)
発行年月日:2017年06月
発売日:2017年06月26日
国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:JKS