日英言語文化学会叢書 第1巻刊行に寄せて
まえがき
第1章 「同化」の功罪―Seidenstickerの翻訳方略を巡って
1. はじめに:翻訳方略の二極―「同化」と「異質化」
2. 翻訳家:Seidensticker
3. 「簡略化」
4. 文化的要素の「中和化・一般化・抽象化」
5. 文化的対応物・類似物との置き換え
6. 「言語的同化」
6.1 無生物主語の活用
6.2 再帰代名詞の活用
6.3 動詞の創造的使用
7. 考察:「同化」の背景
8. おわりに:Seidenstickerの翻訳をどう考えるか―同化の功罪
第2章 川端文学は英訳可能か?―その「主客一如主義」を巡って
1. はじめに:英訳困難な川端文学
2. 『雪国』:トンネルを抜けたのは?
3. 『古都』:美しい京都の情景
4. 『千羽鶴』:舞う千羽鶴の幻影
5. 『山の音』:「山の音が聞えた」
6. 『眠れる美女』:あやしげな女の帯の鳥のあやしさ
7. おわりに:不可能であればこそ
第3章 暗示的な日本語表現をどう翻訳するか?
―川端康成『雪国』における性描写を巡って
1. はじめに
2. 小説『雪国』について
3. 「そういうこと」
4. 「もとめる言葉」「もとめられたもの」「ありがたいふくらみ」
5. 「女を引き摺って行った」「よろこび」
6. 「島村はまたかと思った。」
7. 「横にした首を軽く浮かして」
8. 「駒子の脣は美しい蛭の輪のように滑らかであった。」
9. 考察
10. おわりに
第4章 何が、何故引かれたのか?
―三島文学のSeidensticker訳を巡って
1. はじめに:足し算と引き算
2. 淡白なSeidenstickerと華麗な三島
3. 「真夏の死」とDeath in Midsummer
3.1 簡略化
3.2 心理描写の削除
4. 『天人五衰』とThe Decay of the Angel
4.1 短い最終巻
4.2 どう短くなったのか?
4.3 「五衰」するのは誰なのか? 四方田犬彦の見解
4.4 なぜ『天人五衰』を?
4.5 落莫たる光景
5. おわりに
第5章 訳文は原文より理解しやすいか?
―三島由紀夫『金閣寺』の英訳を巡って
1. はじめに
2. 『金閣寺』のあらすじ
3. 仏教用語
4. 概念・観念を表す語
5. 三島文学における欧文脈の影響
5.1 形容詞の前置修飾と後置修飾
5.2 無生物主語
6. 微妙な足し算
7. おわりに
第6章 「甘え」を英語でどういうか?
―日本文学の翻訳作品に基づく一考察
1. 土居健郎の『「甘え」の構造』:「甘え」は英語にならない?
2. 和英辞典における「甘え」の訳例
3. 「肯定的な甘えと否定的な甘え」「意図的な甘えと無意識の甘え」
4. 様々な「甘え」
4.1 子供の母親に対する甘え
4.2 男女間の甘え
4.3 動物の甘え
4.4 周囲の人々への甘え・自分への甘え
4.5 「周囲の人々への甘え」の否定
5. 極めて多様な「甘え」の訳語
6. おわりに
第7章 「日本文化」は英語でどう表現できるか?
―「坊ちゃん」の三種類の翻訳における翻訳方略に関する一考察
1. はじめに
2. 三つの翻訳方略:異質化・同化・中和化
3. 訳注とイタリック体の使用
4. 日本固有の事物・事象の訳
4.1 「飛車」
4.2 「石(こく)」
4.3 「金鍔(きんつば)や紅梅焼」
4.4 その他の事例
5. 日本文化固有の概念
5.1 「義理」
5.2 「義理立て」
5.3 「恩」
6. 日本語自体の特徴の翻訳
6.1 「平仮名ばかりがつながっている日本文」
6.2 「傍点」=「御灸」
7. オノマトペの翻訳
7.1 太鼓の音
7.2 その他のオノマトペ
8. おわりに
第8章 「日本文化」は英語でどう表現できるか?
―日本文学の翻訳を通しての一考察
1. はじめに
2. 流行語の翻訳:「ハイカラ」をめぐって
3. 生活文化に関する用語:「着物」と「寿司」について
3.1 「襟をすかす」「抜き衣紋」
3.2 「襷をかける」
3.3 「懐手をする」
3.4 「寿司」について
4. 身体部位の日英比較:「頭」「顔」「首」と「腰」
4.1 「頭」「顔」「首」
4.2 「腰」
5. 文化固有の概念語「義理」と「甘え」
5.1 「義理」
5.2 「甘え」
6. おわりに:英語教育への示唆
あとがき