凡例
序章 戦時下の異邦人、中島敦―環世界・南洋・ヒューマニズム
一 世界は一つではない
二 南洋呆けと意識の変容
三 中島敦と同時代の作家たち
四 同時代言説
五 本書の方法と構成
第一部 中島敦文学における意識の変容・存在のゆらぎ
第一章 オルダス・ハックレイと中島敦―英文学からの〝出発〟
はじめに
一 相対主義の果て
二 雑誌『形成』と“作家”以前の中島敦
三 「私」を諷刺する
四 「北方行」再読
五 「過去帳」のゆくえ
おわりに
第二章 中島敦文学における〈私〉の臨界点―人間・動物・石
はじめに
一 動物・非人間・「蛮人」
二 認識の相違は世界の相違
三 存在に優劣を設けること
四 変身のモチーフ
おわりに
第三章 虎であるとはどのようなことか―「山月記」論
はじめに
一 動物の生きている世界
二 動物をどのように描くか
三 語りえないものを越えて?
おわりに
第四章 憑依する動物たち―「狐憑」論
はじめに
一 「狐憑」の問題系
二 「狐憑」の想像力
三 「狐憑」と狂気
四 憑依する動物たち
五 ロゴスの不可能性
おわりに
第五章 「木乃伊」における転生の語り―意識の彼方、狂気の手前で
はじめに
一 「木乃伊」の語り
二 言語による分節と意識の構造
三 前世の記憶と遺伝
四 怪奇の表現戦略
おわりに
第二部 戦前・戦中の言説空間と中島敦の試み
第六章 中島敦文学における科学的世界像―全集未収録資料に触れて
はじめに
一 科学教育と合理性
二 中島敦の交友関係から見えてくる科学観
三 神秘への接近
四 理解の(不)可能性をめぐって
おわりに
第七章 人間のいない世界―中島敦文学における〈絶滅〉の問題系
はじめに
一 中島敦と絶滅
二 絶滅という一回性の出来事
三 人間のいない世界
おわりに
第八章 文字は生きている―「文字禍」論
はじめに
一 文字の霊とは何か
二 言霊に関する同時代言説
三 権力と文字
四 物質としての文字言語
おわりに
第九章 自意識が筋になるとき―「光と風と夢」論
一 取り入れられた論争
二 南洋のスティヴンスン
三 スティヴンスンのアイデンティティ
四 スティヴンスンの変化
五 自意識が「筋」になる
六 生き延びを反復する生
第一〇章 歴史に空白は残せるか―「李陵・司馬遷」論
一 「李陵・司馬遷」の問題系
二 「李陵」―歴史上の人物の心理を描き出すこと
三 「司馬遷」―歴史を書く機械
四 「司馬遷」―憑依する/される歴史家
五 「私」と歴史との関係
六 物質としての歴史
七 書くことへのためらい
終章 中島敦文学における意識と人間―戦後の評価軸を再考する
一 まとめに代えて
二 戦後の中島敦評価を越えて
初出一覧
あとがき
索引