はじめに
Part I 質的研究の背景と英語教育 笹島茂
1. 英語教育の実践に役立つ研究は実践から
1.1 研修は教師の継続的な資質向上(CPD)を図る
1.2 具体的で素朴な疑問が大切だ
1.3 「質」の異なる根拠は実践の中にある
2. 英語教育が抱える多様な課題を解決する質的研究
2.1 英語教育研究にも多様なテーマと課題がある
2.2 英語教育研究の作法は多様だ
2.3 研究目的・目標と方法は柔軟に考える
3. 根拠にもとづく英語教育研究は信用・信頼に値する
3.1 根拠にもとづく研究は数値データだけではない
3.2 根拠の意味は信用・信頼できるかどうかにある
4. 英語教育研究と統計分析
4.1 統計分析と質的データ分析の棲み分けをする
4.2 量的データと質的データを効果的に活用する
4.3 質的研究は教師の資質向上に役立つ
5. 日本の英語教育研究の動向
5.1 英語学習の目標を教師の実践に根ざした研究をもとに設定する
5.2 科学的な量的研究から多様性のある質的研究へ向かう
5.3 英語教育研究はより柔軟に多様に複合的になる
6. CEFR の影響と質的研究
6.1 CEFR の英語教育への影響は大きい
6.2 CEFR(英語力)の6 レベルの意味はふりかえりにある
6.3 評価測定に関する質的研究の理解が必要だ
7. 英文学、英語学などの質的研究
7.1 英語教育関連の研究には多様性と包括性が必要だ
7.2 文学や言語学も英語教育研究には欠かせない
7.3 英語教育は言語学だけではなく多様な分野と関連する
8. 言語文化多様性、バイリンガル教育、CLIL
8.1 英語教育は言語文化多様性と統合に向かう
8.2 質的研究は多様性と統合の成長マインドセットを促す
8.3 英語教育の改善に多様な分野と関連するCLIL は役立つ
9. 英語授業研究と学習指導要領
9.1 学習指導要領に沿った研究では十分ではない
9.2 英語授業研究は生徒の学習のつまずきなどの改善につながる
9.3 英語授業研究は検証の質的アプローチの場でもある
10. ティーチャーリサーチ(TR)の意義
10.1 ティーチャーリサーチ(TR)は学びを支援する
10.2 TR は教師が実践の中で無理なく遂行できる
10.3 TR は教師自身の系統的意図的な探索だ
11. ティーチャーリサーチ(TR)の評価と魅力
11.1 TR は信用・信頼に値するリフレクシヴィティを考慮する
11.2 評価検証を工夫することが質的研究の魅力だ
11.3 研究手法を英語で学ぶことは英語教師の力量形成となる
12. 質的研究は考え方が大切
12.1 質的研究はパラダイムの理解から始まる
12.2 存在論と認識論の違いにより実践も研究も変わる
12.3 質的研究を特徴づける基本要素を理解する
13. リフレクティブ・ティーチングの必要性
13.1 リフレクションの機会は教員養成に重要だ
13.2 リフレクティブ・ティーチングは教師の力量形成となる
13.3 質的研究はリフレクションと密接に関連する
14. 量的研究と質的研究の柔軟な扱いと「見える化」
14.1 リサーチ方法は柔軟に考える
14.2 量的研究と質的研究の特徴を理解する
14.3 質的研究は「見える化」に対応する
15. 英語教育における「こころ」の哲学的探究
15.1 質的研究とPDCA サイクルには「こころ」が大切だ
15.2 質的研究は教師や生徒の「こころ」の研究だ
15.3 質的研究は教師や生徒の「こころ」を変える
Part II 質的研究リサーチ方法 笹島茂、末森咲、守屋亮
16. 質的研究の基本的理解と意義
16.1 質的研究はことばなどの形式でデータを分析する
16.2 質的研究の特徴はあいまいなものに対する寛容さにある
17. 量的研究と質的研究の目的と意義
17.1 質的研究はポスト構造主義に影響を受けている
17.2 量的研究は客観的科学的な手続と検証にある
17.3 質的研究は「腑に落ちる」ことを提案する
17.4 質的研究は学習者の変容を見る
18. MMR の基本的理解と意義
18.1 MMR は量と質を組み合わせる
18.2 MMR に3 つのタイプがある
18.3 MMR は量的研究と質的研究の狭間で自然に生まれた
19. 実践的リサーチデザイン─概要
19.1 研究テーマの具体化は視点、視野、視座から始める
19.2 問いの立て方が研究の方向性に大きく影響する
20. 実践的リサーチデザイン─質的研究
20.1 リサーチデザインとして一本の筋を通す
20.2 リサーチデザインは実践のチャートであり記録となる
21. 実践的リサーチデザイン─ MMR
21.1 MMR は多様に柔軟にマクロとミクロを見る
21.2 MMR ではデータの位置づけをしっかりと考える
22. 質的研究の視点とパラダイム
22.1 質的研究はパラダイムから始まる
22.2 質的研究は多様なパラダイムを柔軟に理解する
23. 質的研究の視点と存在論・認識論
23.1 質的研究の存在論は正解をひとつとしない
23.2 質的研究における認識論は「人が意味をつくる」
24. 質的研究の視点と価値論・方法論
24.1 価値論は質的研究の意味に影響を与える
24.2 方法論は質的研究を方向づける重要な指針となる
25. 質的研究における方法論補足
25.1 質的研究における方法論は論文の書式(APA)を参考にする
25.2 質的研究には方法論上の誠実さが必要となる
26. 質的研究における「信用・信頼に値すること」の意味
26.1 質的研究では信用・信頼に値することの規準と意味を考える
26.2 質的研究の信用・信頼に値することの規準を具体的に理解する
27. 質的研究における質、知識、理論化、一般化
27.1 実証研究も多様で柔軟な面がある
27.2 質的研究の「質」も実証研究には欠かせない
27.3 質的研究でも理論化や一般化は考慮すべき
28. 英語教育の実践や研究のポジショナリティ
28.1 ポジショナリティとリフレクシヴィティを意識する
28.2 主観と主観の関係性としての間主観性を理解する
28.3 多様なポジショナリティがある
29. 質的研究の具体的手法―現象学
29.1 現象学は自然な見方をする
29.2 「生きられた経験」を現象学は考える
30. 質的研究の具体的手法―ケーススタディ(事例研究)
30.1 ケーススタディはプロセスの探求を大切にする
30.2 ケース・スタディを用いた研究は生き生きしている
31. 質的研究の具体的手法―ナラティブ
31.1 ナラティブはデータから意味を見出す
31.2 ナラティブを用いた研究は物語のように記述していく
32. 質的研究の具体的手法―エスノグラフィー
32.1 エスノグラフィーはありのままに調査する
32.2 エスノグラフィーはグループでプロジェクトとして実施する
33. 質的研究の具体的手法―グラウンディド・セオリー
33.1 GTA はリサーチプロセスを明確に設定している
33.2 GTA 研究は理論化を目的とした概念モデルを生成する
34. 質的研究の実施と公開
34.1 実践や研究は英語で世界に発信する
34.2 質的研究の基本的な流れは実践にある
34.3 質的研究は結論や結果が出ていなくても公開する
35. 質的研究の倫理ガイドライン
35.1 質的研究では倫理を考える
35.2 質的研究は倫理のプロセスを大切にする
36. 質的研究をまとめる─テーマ設定
36.1 質的研究のまとめはメモから始まる
36.2 質的研究のテーマは背景知識と先行研究をもとに立てる
37. 質的研究をまとめる─データの扱い
37.1 質的研究はデータ収集と分析を重視する
37.2 質的研究はデータ分析から解釈へと向かう
38. 研究をまとめる─書く
38.1 質的研究は書くことでまとめる
38.2 書くことや記録することで思考をまとめる
39. リフレクシヴィティの必要性
39.1 リフレクシヴィティは質的研究に欠かせない
39.2 リフレクシヴィティの探求の中で自分を見つめる
39.3 リフレクシヴィティは人が共感する根拠を示す
40. 英語教育における質的研究のまとめ
参考文献
Part III 質的研究の実践例 宮原万寿子、笹島茂
1. 「英語ユーザーへのインタビュー」の経験から 柳瀬陽介
1.1 はじめに
1.2 普遍性ではなく多様性
1.3 共通性ではなく家族的類似性
1.4 因果性立証ではなく歴史的叙述
1.5 客体ではなく相互作用し合う主体
2. ティーチャーリサーチ(TR)の実践 笹島茂
2.1 質的研究はTR のカギ
2.2 質的研究とリフレクシヴィティはTR の柱
2.3 TR の実践
2.4 TR の意義
3. 教師の動機づけ研究 末森咲
3.1 質的研究との出会い
3.2 実際に行った質的研究のプロセス
3.3 これから質的研究を行う方へ
4. Perezhivanie と向き合う言語学習アドバイジング 守屋亮
4.1 言語学習アドバイジングとその拡がり
4.2 社会文化理論におけるperezhivanie
4.3 質的研究と私のperezhivania
5. Literacy Autobiography を用いた英語教育・研究 飯田敦史
5.1 英語教育におけるLiteracy Autobiography
5.2 Literacy Autobiography を用いての質的研究アプローチ
5.3 研究を行う上での留意点
5.4 まとめ
6. L2 大学院生アカデミックエッセイ作成過程─認知プロセスと社会文化的媒介の分析 上條武
6.1 アカデミックエッセイ作成過程とは─背景
6.2 アカデミックエッセイ作成過程の議論構成モデル
6.3 研究課題―L2 大学院生アカデミックエッセイ作成過程
6.4 研究手法―テーマ分析(Braun & Clarke 2006, 2017)
6.5 結果と考察─認知プロセスと社会文化的媒介の分析
6.6 まとめ─研究の要約とリフレクシブなテーマ分析
7. 実践者による質的英語教育研究―Reflective practice をめぐる理論と方法 玉井健
7.1 はじめに
7.2 質的実証研究─経験の意味の探求
7.3 リフレクティブ・プラクティス
参考文献
資料 英語論文例
資料 用語集
索引
執筆者紹介