序章 思考の光源としての理論物理学
一 二〇世紀物理学という「事件」
二 昭和初期における理論物理学と文芸思潮の交錯
三 本書の構成と概要
Ⅰ 文芸思潮と理論物理学の交通と接点
第一章 「科学的精神」の修辞学―一九三〇年代の「科学」ヘゲモニー
はじめに
一 浮遊する「科学的精神」
二 文学者と「科学的精神」
三 科学者共同体と「科学的精神」
四 「偶然文学論争」の混成的位相
おわりに
第二章 「現実」までの距離―石原純の自然科学的世界像を視座として
はじめに
一 石原純の「科学」論
二 石原純の「芸術」論
三 「新しい現実」をめぐる言説布置
おわりに
第三章 ジャンル意識の政治学―昭和初期「科学小説」論の諸相
はじめに
一 「探偵小説」のなかの「科学」
二 〈自然科学=人間科学〉のパラダイム
三 「純粋」な「科学小説」
四 「懸賞科学小説」のゆくえ
おわりに
Ⅱ 横光利一の文学活動における理論物理学の受容と展開
第四章 新感覚派の物理主義者たち―横光利一と稲垣足穂の「現実」観
はじめに
一 「法則」の優位性
二 認識論と存在論
三 近現代物理学の転轍点
おわりに
第五章 観測者の使命―横光利一『雅歌』における物理学表象
はじめに
一 書きなおされる物理学者
二 量子力学の問題構制
三 「文学のみの科学」の考究
おわりに
第六章 「ある唯物論者」の世界認識―横光利一『上海』と二〇世紀物理学
はじめに
一 〈身体〉と〈肉体〉のはざま
二 戯画としての「骸骨」
三 現象に伏在する「精神」
おわりに
Ⅲ モダニズム文学者と数理諸科学の邂逅と帰趨
第七章 「合理」の急所―中河與一「偶然文学論」の思想的意義
はじめに
一 標語としての「知的浪漫主義」
二 「合理」と「非合理」のはざま
三 同時代思潮との交点
おわりに・
第八章 多元的なもののディスクール―稲垣足穂の宇宙観
はじめに
一 「必然性」からの脱却
二 「物質」と「場」のドラマ
三 「無限宇宙」の存立構造
おわりに
第九章 「怪奇」の出現機構―夢野久作『木魂』の表現位相
はじめに
一 数学的理性への偏執
二 逸脱する記号演算
三 「怪奇小説」の記述作法
おわりに
終章 パラドックスを記述するための文学的想像力
一 「経験」と「理論」の乖離
二 パラドックスはなぜ回避できないのか
補論ⅰ 「存在すること」の条件 ―東浩紀『クォンタム・ファミリーズ』の量子論的問題系
はじめに
一 量子テクノロジーの到達地点
二 「計算」の理念
三 汐子は「存在」するか
おわりに
補論ⅱ 自己言及とは別の仕方で―円城塔『Self-Reference ENGINE』と複雑系科学
はじめに
一 「私」語りの作法
二 生成変化する「私」へ
三 生命モデルとしての多元宇宙
おわりに
初出一覧
あとがき
索引