大林宣彦の映画は歴史、 映画はジャーナリズム。
著:大林 宣彦
内容紹介
女優の原田知世・常盤貴子など、素敵なゲストをむかえて、自作(「ハウス/HOUSE」「瞳の中の訪問者」)を語り、古今の名作の逸話や裏話を語りつくします。大作『大林宣彦のいつか見た映画館』(七つ森書館、衛星劇場で放映中)から生まれた一冊です。
目次
1 作家の戦争体験を知ると、映画のフィロソフィが見えます。──川本三郎・大林宣彦
映画体験も戦争体験も、すべては記憶の中に。
1945年8月15日から、日本はガラッと変わった。
われわれ世代は、完全なGHQの申し子。
民主主義を教えるための、アメリカ映画を浴びて。
映画の技術を使っても、戦争のリアルな再現なんてできない。
作家の戦争体験を知ると、映画のフィロソフィが見える。
ウェインとクーパーの違いは、西部と東部のアイデンティティ。
「シェーン」のアラン・ラッドの影に、ジェームズ・ディーンあり⁈
記憶だけの映画談議には、美しい誤解がある。
映画が、風化しないジャーナリズムであること。
2 映画は、風化しないジャーナリズムです。──常盤貴子・大林宣彦
俳優は、監督のよき素材になることにプライドを持ってほしい。
戦争難民たちが願った、憧れの平和の里がハリウッドだった。
庶民は、笑いやふざけることで、上にある絶対的な権威を批判する。
僕は小津さんの映画、駅馬車に乗った映画だと思う。
映画作家は必ず前の時代のものを「引用」するんです。真似じゃない。
戦争体験を聞けば、その人の映画が全部分かる。
映画はリアルに映像を観るメディアではなくて、想像力で観るのです。
映画は時代に映された鏡です
3 平和の時代の映画作家を始めました。
「HOUSE/ハウス」、「吸血鬼ゴケミドロ」上映のあとに。──犬童一心・樋口尚文・大林宣彦
僕の敗戦少年期、戦争が終わったとき8歳でした。
「HOUSE/ハウス」は、「ベテランの少年」が作った映画。
戦後の混沌の中に筋道をつけて、映画ファンになっていく。
「スター・ウォーズ」の原点は「バイキング」、さらに言えば「大平原」。
8リで映画を作ることで、平和の時代の映画作家を始めた。
「パパ、鏡に写ってる私が、自分を食べに来たら怖いね」。
「この無内容な、バカバカしいままで映画にしてくれませんか」
映画は実験的であって、映画の表現は発明なのです。
「HOUSE/ハウス」は、見事にアマチュア映画です。
キラキラした目の中に、映画があると感じた。
「瞳の中の訪問者」も、映画じゃない映画です。
僕の映画は、スペードを集めている映画なんです。
4 映画は、時代を映す鏡なのです。
「瞳の中の訪問者」「無法松の一生」上映のあとに──犬童一心・手塚眞・小中和哉・大林宣彦
映画が消滅していく現状を、まざまざと感じました。
「無法松」は18分カットされても、なおも日本映画の名作です。
作り手が汗をかくから、観客が感動する。
日常を追いつめて、追いつめて、映画にする。
大林さんは、映画には無いカットをずいぶん観ている。
映画って、ストーリーだけではなくて、語り口も大事。
ヒョウタンツギは、手塚治虫さんの魂みたいなものです。
「瞳の中の訪問者」では、手塚治虫論をやろうではないかと思った。
漫画であることの悲しさと、映画であることの悲しさ。
「漫画がお嫌いな方には、お分かりにならないでしょうが」。
音楽も映画も時間芸術なんです。
蒸気機関車と、音のしないピアノとの出会いがよろこびです。
凛として、戦争中も自由に生きるにはどうすればいいか。
5 嘘から出たまこと、を描くのが映画です。──原田知世・髙柳良一・大林宣彦
「時をかける少女」は、おじさんたちのプライベート映画だったはず。
大林組ってファミリーで、家族みたい。
ここには青春があるんだ、素敵な現場だと思いました。
フレッシュさの秘密は、音楽を通じて自己表現していることです。
「時をかける少女」が、さらに歴史の中の映画として豊かに観られてる。
時は過ぎていくだけではない、やって来るものなんだね。
あとがき
ISBN:9784822817886
。出版社:七つ森書館
。判型:4-6
。ページ数:244ページ
。定価:1800円(本体)
。発行年月日:2017年11月
。発売日:2017年11月27日
。国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:ATF。