出版社を探す

映画の戦後

著:川本 三郎

紙版

内容紹介

「やくざ」を演じてきた高倉健と菅原文太が相次いで亡くなりました。同時代のアメリカでダーティ・ヒーローを演じてきたクリント・イーストウッドは、戦争をテーマとした新作を発表しています。
 小津安二郎作品のヒロインである原節子の瞳から消えない悲しみ、昭和20年代の日本人が夢中になったリベラルなハリウッド映画、戦勝国アメリカを揺り動かした赤狩りとヴェトナム戦争──戦後、日本映画は「悲しみ」を描き、アメリカ映画は「個の誇り」を描いてきた、と川本氏は考えています。
 敗戦から70年を迎える今、川本三郎氏が綴る日本、そしてアメリカの戦後映画史です。

目次

1 戦後映画の光芒
   「やくざ」が輝いていた時代──追悼 高倉健と菅原文太
   詫びるヒーロー──かたぎへの負い目
   「聖林」に酔った日本人
   戦争の時代から、戦後へ──原節子の「悲しみ」
   昭和史のなかの小津安二郎──田中眞澄『小津安二郎周游』
   東宝映画に見る、「映画館」と「都電」のあった頃の東京
   ひとの生き方に関わる映画論──佐藤忠男『映画の中の東京』
   歩くことから始まる──美術監督、木村威夫
   昭和三十年代の東京が捜査の舞台──『警視庁物語』シリーズ
   文学と映画──松本清張原作『張込み』を見る
   黒澤明の型破り
   幻想の良き町と現実の小さな町の狭間で──『男はつらいよ』の風景
   旅する寅さん
   昭和という時代を生きた名女優 高峰秀子
   「玄人」の美、芸が裏打ち──山田五十鈴さんを悼む
   女優という「魔」──中丸美繪『杉村春子 女優として、女として』
   通り過ぎる者の目で見た風景

2 アメリカの光と影
   個独のヒーローのゆくえ──クリント・イーストウッド論
   個性派スターの輝き──ワーナー映画の魅力
   大衆の反乱、知識人の戦慄──ハリウッド赤狩り論
   エドワード・ドミトリク──泥だらけの弁明
   異邦人の裏切り──エリア・カザンと赤狩り
   戦争は否定しても兵士自身を否定する理由はどこにもない
     ──ヴェトナム戦争を描くドキュメンタリー『ハーツ・アンド・マインズ』
   『ディア・ハンター』
   ヴェトナム戦争後の故郷への回帰──七〇年代アメリカ映画
   「家に帰りたい」──八〇年代アメリカ映画の内向き志向

あとがき

著者略歴

著:川本 三郎
1944年東京生まれ。文芸評論家。『大正幻影』(岩波現代文庫)によりサントリー学芸賞、『荷風と東京』(岩波現代文庫)により読売文学賞、『林芙美子の昭和』(新書館)により毎日出版文化賞と桑原武夫学芸賞、『白秋望景』(新書館)により伊藤整文学賞を受賞。映画関係の著書も多く、『さらば愛しきサスペンス映画』『わが恋せし女優たち』(ともに逢坂剛と共著)、『美女ありき』(以上、七つ森書館)、近著に『成瀬巳喜男 映画の面影』(新潮選書)などがある。

ISBN:9784822815325
出版社:七つ森書館
判型:4-6
ページ数:272ページ
定価:2200円(本体)
発行年月日:2015年05月
発売日:2015年05月15日
国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:ATF