エボラの正体 死のウイルスの謎を追う
著:デビッド・クアメン
訳:山本 光伸
内容紹介
2014年に西アフリカ3カ国(ギニア、リベリア、シエラレオネ)を襲ったエボラウイルス病のアウトブレイクは、過去最悪の事態となった。WHO(世界保健機関)の発表によると、感染者数は1万5935人、死者数は5689人に達した。エボラウイルスが最初に出現したのは1976年。それ以来、散発的に姿を見せて人々の命を奪ってきたが、今回のアウトブレイクでは、感染者数、死亡数とも、過去のアウトブレイクのトータルの合計数をはるかに上回った。終息のメドはいまだに立っていない。
本書は、エボラについて、現在までにわかっていること、研究の余地がある点、危険極まりないウイルスを抑制しようとしている人々の努力などを、エボラと人間の戦いの歴史を振り返りながら、次のような疑問に答える。
・エボラによる死者数、感染者数が爆発的に増加した原因は何か?
・エボラウイルスはどんなウイルスなのか?
・それはどこから来たのか?
・どのウイルスも長期にわたって複製と生存を続けるためには、何らかの生物(宿主)に棲みつかなければならない。その生物とはいったい何なのか?
・その生物からどのように人間に移動したのか?
・新種のウイルスはコントロールできるのか?
・これまでにエボラに似たウイルスはあったのか?
・エボラは投薬治療やワクチンで対処できるのか?
・アウトブレイクを止めることは可能なのか?
・エボラは進化しているのか?
・パンデミックとなり、人口の数分の一を殺してしまうことになるのだろうか?
エボラなど最近出現してきた感染症ウイルスは、アフリカの熱帯地方の森林に住む動物の中に長い間ずっと潜んできた。しかし、森林伐採や鉱物資源の発掘などで森が切り開かれ、ウイルスに接触する「機会」の増加がしたことが、最近の感染症ウイルス流行の原因とされている。
日本は、アフリカの熱帯材輸入国や鉱物資源に関して、世界有数の大輸入国だ。したがって日本人は、エボラウイルスの発生、流行と決して無関係ではない。
全世界が一丸となってエボラの対策に向き合わなければならない今、本書には地球市民の一人として行動するために身につけておくべき知識が網羅されている。
目次
イントロダクション 巧妙に姿を隠す人獣共通感染ウイルス
Chapter1:山積みにされた13頭のゴリラの死体
Chapter2:浮かび上がってきたいくつかの共通点
Chapter3:姿を消した多数のゴリラとウイルス
Chapter4:エボラはどこに隠れているのか?
Chapter5:アフリカ外に感染を持ち出した最初の人物
Chapter6:あらゆる伝播は勝者総取りの宝くじ
Chapter7:フィリピンまで7000マイル移動の謎
Chapter8:人間の形をした悪霊
Chapter9:正確さ欠く『ホット・ゾーン』
Chapter10:エボラに感染した2人の研究者の明暗
Chapter11:手袋を突き抜けた針
Chapter12:人間がエボラの生息地の中にいる
Chapter13:伝播先はウイルスが自分で考える
Chapter14:波動説か粒子説か
Chapter15:すべては機会のもたらす産物
Chapter16:重要な保有宿主としてのコウモリ
Chapter17:マールブルグとエボラに関する画期的発見
Chapter18:冒険旅行の犠牲者
Chapter19:移動するコウモリの群れ
Chapter20:一人の少女にまつわるエピソード
Chapter21:ウイルスも動物も人も共存している
エピローグ エボラはさらに進化し、適応力を身につける解説 西原智昭(WCSコンゴ共和国自然環境保全・技術顧問)