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ファーマゲドン 安い肉の本当のコスト

著:フィリップ・リンベリー
著:イザベル・オークショット
訳:野中 香方子

紙版

内容紹介

まるで工場のような家畜飼育、養殖、穀類・豆の単一栽培……。
一見すると、安価な食料を効率的に大量生産する素晴らしい手段のように見える。
しかし、現実はまったく逆だ。現代的集約農業は、公害をまき散らし、生態系を乱し、貧困層を拡大する。
その先に待ち構えているのは、ファーマゲドン(農業がもたらすハルマゲドン)だ。

私たちは、自分が口にする食べ物についてあまりにも知らされていない。 抗生物質、ホルモン剤にまみれ、不健康に育った肉や魚が安く売られている事実を知ったとき、今後も同じように食べ続けるだろうか。工業型農業が生み出す安い食料が人々の健康と環境を蝕んでいる実態に迫ったのが本書だ。

工業型農業、すなわち動物を飼い、土地を耕すというデリケートな仕事を、機械の部品やゴムタイヤの製造のようにこなす農業が、安い肉を生産する唯一の方法なのだろうか。この考え方は、広く浸透し、長い間、疑う余地のないこととして信じられてきた。政府も、消費者が鶏肉を2ポンドで買える環境を大急ぎで整えた。それが誰にとってもいいことだと信じて。しかし、安い肉がどうやって作られているかは、隠されたままだった。本書では、食料供給よりも利益を優先したために生じた、思いがけない結果について探っていく。国民に食料を供給 するためよかれと思って始められたことが、なぜこれほど間違った方向に進んてしまったのか。

1962年、レイチェル・カーソンは著書『沈黙の春』で、農業が新たに取り入れた工業的手法、特に空からの農薬散布の影響にスポットライトを当て、食料と田園地帯が直面する危機について警鐘を鳴らした。本書は、現代版の『沈黙の春』である。農業、畜産、漁業の工業化が食品汚染、環境汚染、そして種の絶滅を招き、近い将来、破滅的状況(ファーマゲドン)を引き起こすというのが著者の考えだ。 かつて田園地帯では、多様な作物と家畜を育てる混合農業が見られたものだが、今やそれは過去のものとなり、ただ一種の作物あるいは家畜だけを育てる単モ ノカルチャー式農法に取って代わられた。もはや農業に自然との調和は求められなくなった。同じ作物を同じ畑で何度も繰り返し栽培する。土壌がくたびれたら、化学肥料を投入して早々に回復させる。厄介な雑草や害虫は、除草剤や殺虫剤を大量に散布して排除する。家畜は農場から姿を消し、工場さながらの家畜小屋に詰め込まれ、それらの肥やしに変わって化学肥料が、畑や果樹園の疲れた土壌を無理やり再生させるようになった。次第に、かつてない農業の手法が語られるようになった――工場の生産ラインのような飼育方法である。本書では、食料供給において利益を最優先したために生じた、思いがけない結果について検証するとともに、消費者としてどのように行動すべきかを提示する。

目次

日本語版序文
PARTI 厳しい現実 第1章 カリフォルニア・ガールズ――これが未来か?
第2章 くちばしでつつく――ラベルに隠された真実
PARTII 自然
第3章 沈黙の春――農薬時代の始まり
第4章 野生生物――大いなる喪失
第5章 魚――農業が海洋資源を奪う
第6章 アニマルケア――獣医に何が起きたか
PARTIII 健康
第7章 無数の抗生剤――公衆衛生上の脅威
第8章 太くなるウエスト――食品の質の低下 PARTIV 汚物
第9章 豚みたいに幸せ――汚染の話
第10章 南部の苦しみ――工場式養鶏の出現
PARTV 縮みゆく惑星
第11章 土地――工場式農場がいかに多くの土地を必要とするか
第12章 水より濃い――枯れる川、湖、井戸
第13章 100ドルのハンバーガー――安い食物という錯覚
PARTVI 未来のメニュー
第14章 遺伝子組み換え――人の食料とするか、工場式農場の餌とするか
第15章 中国――毛沢東の巨大畜産工場が実現
第16章 国王、庶民、そして企業――力のありか
第17章 新しい材料――食物について再考する
第18章 解決策――迫り来る食料危機をどう回避するか
第19章 消費者パワー――あなたにできること
エピローグ

著者略歴

著:フィリップ・リンベリー
家畜の福祉向上を牽引する国際的な慈善団体、コンパッション・イン・ワールド・ファーミング(Compassion in World Farming、世界の家畜に思いやりを)の最高経営責任者。工業化された農業の影響について傑出した意見を述べてきた。彼のリーダーシップのもと、コンパッションは、英紙オブザーバーが主催する「オブザーバー・エシカル・アワード・フォー・キャンぺーナー・オブ・ザ・イヤー(最もすぐれた倫理的活動をした団体を讚える賞)」や、BBCRadio4の「フード・アンド・ファーミング・アワーズ・フォー・ベスト・キャンペーナー・アンド・エデュケーター(食料・農業分野のすぐれた活動家と教育者を讚える賞)」など、数々の賞を受賞した。生涯を通じて野生生物を愛しており、妻と養子の息子とハンプシャーの田舎に暮らしている。
著:イザベル・オークショット
サンデー・タイムズ紙の政治部記者。BBCのテレビやラジオ、スカイニュースなど多数のチャンネルで政治コメンテーターを務める。2012年、英国プレス・アワード(報道賞)の「その年のすぐれた政治ジャーナリスト」に選ばれる。ゴードン・ブラウン政権下の内幕を暴露した『インサイド・アウト』をゴーストライターとして著した。ウエストミンスターでの取材を許される下院公認の政治記者。夫と3人の幼い子どもとコッツウォルズに暮らしている。
訳:野中 香方子
翻訳家。お茶の水女子大学文教育学部卒業。主な訳書に『137億年の物語』『ねずみに支配された島』(ともに文藝春秋)、『2052』(日経BP社)などがある。

ISBN:9784822250744
出版社:日経BP
判型:4-6
ページ数:500ページ
定価:2000円(本体)
発行年月日:2015年02月
発売日:2015年02月06日
国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:VFD
国際分類コード【Thema(シーマ)】 2:MBN