ツーリズムの地理学
観光から考える地域の魅力
編著:菊地 俊夫
内容紹介
本書は,ツーリズムとその地域的な展開にこだわって編集されている。ツーリズムやツアー(tour)の語源はギリシア語のトルノス(tornos)だといわれ,それは大工道具の旋盤のことであり,回すことや回ることを意味していた。つまり,ツーリズムは各地の見どころや観光スポットを周遊することや回遊することを意味している。観光とツーリズムが同義で使われることが多いが,観光は特定の場所の魅力的な風景を光として観ることであり,ツーリズムはその光を求めて周遊・回遊することである。
そして,ツーリズムで重要なことは観るべき光としての地域の魅力を見直したり,探したりすることである。加えて,ツーリズムの醍醐味は地域の魅力をどのように組み合わせるかである。地域の魅力の発見や再評価,および組み合わせによる地域的展開の検討に用いる手法のひとつとして,地理学の見方・考え方は有用である。なぜなら,地理学は地域を総合的に見たり,考えたりすることができるためで,「木だけを見るのでなく,森全体を見る」ことがツーリズムや観光の地域的展開に不可欠だからである。地域の魅力を引出し,それらを組み合わせることは,観光やツーリズムの視点で地域づくりを行うことになり,地域の活性化にもつながっていく。
本書では,日本国内や海外におけるツーリズムの様相が,都市地域と農村地域,および自然地域に分けられ,トピック的な事例として議論されている。それぞれの事例ではツーリズムや観光の捉え方に多少の違いがあるが,都市や農村,あるいは自然に由来する地域の魅力を観光やツーリズムから考えようとしている点は共通している。本書が観光やツーリズムから地域の魅力を考える契機になれば望外の喜びでもある。
目次
目次
序章 観光地域研究のフレームワーク —背景と課題,および方法—
1編 都市地域における観光研究
1. 東京・裏原宿におけるアパレル小売店の集積に関する研究(矢部 直人)
2. 東京・隅田川における河川交通の変遷と観光の可能性(太田 慧)
3. 東京・小平市におけるオープンガーデンの活用と地域資源との連携(小池 拓矢)
4. ベルギー・国際都市ブリュッセルにおけるMICE(杉本 興運)
5. オーストラリア・メルボルンのセグリゲーションに基づく文化観光の発展(堤 純)
6. カナダ・沿海諸州におけるアカディアンの文化と観光の発展(大石 太郎)
2編 農村地域における観光研究
7. 東京都における観光農園の立地と果樹園経営の持続性(林 琢也)
8. 大都市遠郊における農村資源の観光利用と女性の役割〜北海道・十勝地方(鷹取 泰子)
9. 茨城県北部における地域おこしのメカニズムと観光化の可能性(小原 規宏)
10. イギリスのピーク・ディストリクトにおけるルーラル・ジェントリフィケーション(飯塚 遼)
11. オーストラリアのハンターヴァレーにおけるワインツーリズムの地域的展開とその特徴(菊地 俊夫)
12. 中国における農村資源の活用と農村観光の発展(張 貴民)
3編 自然地域における観光研究
13. スリランカの国立公園における野生動物と観光の共生(ラナウィーラゲ・エランガ)
14. ルーマニアのドナウデルタにおける自然環境の保全とエコツーリズム(佐々木リディア)
15. マレーシアの熱帯雨林における自然資源利用とサステイナブルツーリズム(沼田 真也・保坂 哲朗・髙木 悦郎)
16. 浅間山北麓ジオパークにおけるジオ資源の活用とストリー性の構築(坂口 豪)
17. 小笠原父島の観光と自然資源の適性利用 —南島の事例を中心にして—(菊地 俊夫・有馬 貴之・黒沼 吉弘)
終章 観光地域研究の可能性と社会的貢献(菊地 俊夫)
【コラム目次】
・植物の観賞と観光(小池 拓也)
・BYOとワインとエスニック料理(堤 純)
・東京臨海部におけるナイトクルーズと若者(太田 慧)
・観光農園は若者にとって身近な存在か?(林 琢也)
・農村ツーリズムに関する調査準備のヒント(鷹取 泰子)
ISBN:9784817604361
。出版社:二宮書店
。判型:A5
。ページ数:224ページ
。定価:3200円(本体)
。発行年月日:2018年03月
。発売日:2018年03月20日
。国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:KNSG。