地図学の聖地を訪ねて
地形図片手にたどる測量の原点と地理教科書ゆかりの地
編著:松山 洋
内容紹介
本書は,日本地図調製業協会が発行している『地図ジャーナル』(日本地図調製業協会)No.158(2008年)~No.172(2013年)に掲載されたエッセイ「地図学の聖地」,および二宮書店の『地理月報』No.538(2014年)に掲載された話を大幅に加筆・修正したものに,新たな書き下ろし6編を追加してまとめたものです。編者(松山)は本務校(首都大学東京 都市環境学部)で2年に1度,オムニバスの学部の授業「地図学」を担当しています。この授業は「地図とは何か」から話が始まり,「デジタル地図」に至るまで,多種多様な地図の話がなされます。編者の担当は「地球楕円体と地図投影法」,「GIS」,「GPS」,「リモートセンシング」といった内容なのですが,授業の後半30分ぐらいは「授業で紹介している場所(=地図学の聖地)に,実際に行ってみたらこうだった」というスライドを見せています。真面目な話を90分続けたのでは,教員も学生も疲れてしまいますし,自分で言うのもなんですが,これらのスライドは学生たちにも大変好評です。
本書の前半(第1部)では,これらのスライドの内容を文章化したものに加え,編者の研究室(地理情報学研究室)にいた当時の大学院生たちにも原稿を書いてもらい,「地図測量の聖地」といわれる場所を幅広く取り上げました。さらに,本書の後半(第2部)では,高校の地理の教科書や地図帳に出てくる地図を分析し,教科書や地図帳で取り上げられる頻度の高い,代表的な地形や村落形態などがみられる場所を「地理教科書の聖地」と名づけました。そうした場所の近くに住む何人かの知人にも取材に行っていただき,「現場はこうなっている」という原稿を書いていただきました(=聖地巡礼?)。
それゆえ本書は,地図や地図学が好きな人,高校の地理の先生や高校生にも興味を持って読んでいただけると思います。上述したように授業の小ネタとしても使えますし,自分の持っている地図学の知識を確認するのにも使えると思います。また,「高校の地理の教科書や地図帳に出てくる地図の現場がこうなっている」という副読本的な使い方もできると思います。このような書籍はこれまでにないので,希少価値があると考えています。
本書を読んで,読者の皆さんが「地図学の聖地」に興味を持っていただけたなら,ぜひ本書を携えて現地を訪れてみていただければ幸いです。それが,著者たちにとっての一番の喜びであります。
2017年3月,編者 松山 洋
目次
【第1部:地図測量の聖地編】
第1章 水平編〜位置を決める原点
第2章 垂直編〜高さを決める原点
第3章 番外編〜河川ごとに設定された基準面
第4章 落ち穂拾い編〜東京湾の境界を訪ねて
第5章 リベンジ編〜東関東の「聖地」めぐり+α
第6章 『日本水準原点』施設公開編
第7章 南アルプス編〜山頂付近の三角点・標高点 32
第8章 平面直角座標系編
第9章 日本標準時子午線編
第10章 相模野基線編
コラム:世界進出!ユーラシア大陸編
【第2部:地理教科書の聖地編】
第11章 教科書に出てくる地形図を考察する
第12章 百瀬川扇状地
第13章 沼田市の河岸段丘
第14章 室戸市の海岸段丘
第15章 屏風ヶ浦の海食崖
第16章 酒田市の海岸砂丘
第17章 砺波市の散村(散居村)
第18章 岩木川の自然堤防立地村
第19章 三陸のリアス海岸
第20章 阿蘇のカルデラ
第21章 茨城県・千葉県にある対岸飛地