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中央アジア牧畜社会

人、動物、交錯、移動

編:今村 薫

紙版

内容紹介

野生動物を飼いならし家畜とすることは、地球上、人が住むあらゆる地域で起こった。しかし中央アジアほど長距離の圧倒的な機動力を持つ遊牧を生んだ地域はない。馬とラクダを中心とした大型動物を家畜化し、時代に合わせて様々な形で利用してきたことが、この地域の社会にどのようなインパクトを与えてきたのか。人類史上稀な民族の相克と交流を生み出してきたその生態的特徴を人類学、生態学、遺伝学、歴史学の手法を駆使して明らかにし、今後の牧畜社会の展望を人類救済の道からも探る。人間と動物の関係を動的に捉えなおす総合的な地域論。

目次

巻頭口絵

序 中央アジアにおける家畜化の歴史生態学的展開[今村 薫]
【概説】DNA からみた中央ユーラシアにおける人間の移動[斎藤成也]

第I部 人─動物関係の歴史的展開

第1章 天山山脈の最初の牧畜民[久米正吾・新井才二]
1 天山山脈およびその周辺域の自然環境と生業
2 中央アジア東部山岳・山麓地帯に牧畜民はいつ来たか
3 「天山最古の牧畜民」はどこから来たか
4 キルギス、天山山脈中央部の初期牧畜民遺跡のフィールド調査
5 食糧生産革命における中央アジアの意味

第2章 ラクダと都市が支えた草原の移動:
   18~19 世紀の中央アジアとロシア[塩谷哲史]
1 中央ユーラシアの周縁化と草原の交易路
2 18~19世紀オレンブルグ(カザフ草原北辺)における交易
3 18~19世紀オレンブルグにおける交易の場:取引所と交易場
4 19世紀中葉のオレンブルグと中央アジア南部を結ぶ交易とラクダの利用
5 1839~1840年ロシア軍のヒヴァ遠征とラクダ

第3章 カザフスタンにおける家畜ラクダ2種とそれらのハイブリッド作出[今村 薫]
1 ユーラシア大陸のラクダ属
2 カザフスタンにおける家畜ラクダの分布
3 家畜ラクダの起源と、ハイブリッドの起源から見える東西交流
4 現在のカザフスタンのラクダ分布からわかること

第4章 中国人民公社期におけるラクダ飼養:
   内モンゴル自治区エゼネー旗の事例から[児玉香菜子]
1 20世紀の社会主義体制と牧畜
2 エゼネー旗の概要
3 1949年~1957年:中華人民共和国成立から人民公社設立前まで
4 1958年~1982年:人民公社期
5 家畜利用から見たラクダ増加の要因
6 社会主義体制下におけるラクダ飼養の未来

第II部 技術からみた人─動物関係

第5章 ラクダの去勢:中国内モンゴル自治区アラシャー右旗の事例から[ソロンガ]
1 調査地概要
2 去勢のプロセス
3 去勢作業
4 去勢ラクダの利用

第6章 山地環境下における牧畜と季節移動:
   21世紀モンゴル国カザフ牧畜民を事例として[廣田千恵子]
1 山地環境における人と家畜の共存
2 調査地概要
3 牧畜
4 カザフ牧畜民の季節移動
5 環境適応のための対策としての移動
6 高地環境の牧畜を支えるわざ

第III部 環境問題と牧畜

第7章 アラル海災害からの「復興」における牧畜の役割:
   小アラル海地域社会の災害適応とレジリエンス[地田徹朗]
1 アラル海地域の歴史生態からみるアラル海災害
2 調査地概要
3 アクバストゥ村での牧畜(ラクダ以外)
4 漁牧複合の村に適合的な生業としてのラクダ飼養
5 カザフスタン政府による牧畜政策とアクバストゥ村へのその影響
6 災害復興から得られる示唆と今後の展望

第8章 乾燥・半乾燥地における人と家畜[星野仏方]
1 カザフ・ドライステップのラクダ牧場
2 遊牧と定住型放牧システムにおける家畜行動の違い

索引
執筆者一覧

著者略歴

編:今村 薫
名古屋学院大学現代社会学部教授。専門は生態人類学。京都大学大学院理学研究科博士課程単位取得退学、博士(理学)。
主な著作に、『砂漠に生きる女たち:カラハリ狩猟採集民の日常と儀礼』(どうぶつ社、 2010年)、『生態人類学は挑む SESSION 2 わける・ためる』(共著、京都大学学術出版会、2021年)などがある。

ISBN:9784814004744
出版社:京都大学学術出版会
判型:A5
ページ数:262ページ
定価:3600円(本体)
発行年月日:2023年03月
発売日:2023年03月17日
国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:TVH
国際分類コード【Thema(シーマ)】 2:JHMC
国際分類コード【Thema(シーマ)】 3:1FC