アフリカの可能性を世界に活かすために――はしがき
第1部 アフリカ農業から何を学ぶか
第1章 序論:アグラリアン・バイアスを超えて [杉村和彦・鶴田 格・末原達郎]
1 「笑度計」と豊かさ――アフリカは本当に貧しいのか
2 近代化を拒否するアフリカ農村
3 開発をめぐるパラダイム転換
4 アフリカ農民・農村のユニークネス――自然社会の視点
5 現代アフリカ農村に残る自然社会の要素
6 現代アフリカ農村におけるサブシステンス経済の変容
7 アフリカから学ぶ――発展幻想からの離脱
8 本書の構成
コラム1 イヴァン・イリイチの思想とサブシステンス [鶴田 格]
コラム2 情の経済とモラル・エコノミー [鶴田 格]
第2章 アフリカ農業の環境史観
――遊動する農業とその起源 [足達太郎]
1 農業の歴史はどうとらえられてきたか
2 アフリカ農業の生態学的特徴
3 国家に捕捉されない農業と生態系
4 アフリカ農業史が問いかけるもの
コラム3 スコットによる国家に捕捉されない農民論 [鶴田 格]
コラム4 遊動型農業の可能性 [足達太郎]
第3章 アフリカ農業・農村開発の失敗学 [鶴田 格・山根裕子・杉村和彦]
1 失敗学の視点
2 植民地期の地域開発の失敗事例
3 ウジャマー集村化政策の失敗学
4 近年の農村・農業開発計画の失敗事例
5 アフリカ的共同体への二重の錯誤
第2部 アフリカ農業・農村の特性把握
第4章 流動性と開放性
――コンゴ盆地熱帯雨林の移動性とエキステンシブネス [小松かおり]
1 移動する農民
2 コンゴ盆地の移動社会
3 コンゴ盆地の農
4 移住と生業
5 カメルーン東南部における流動性の事例
6 移動性とエキステンシブネス
第5章 生業の複合性と多様性
――熱帯アフリカの多生業 [坂梨健太]
1 農業中心主義の現代
2 農業中心主義のなかの農民と多生業研究の動向
3 自然社会の多生業――自然利用と移動
4 カメルーン南部におけるファン(Fang)の多生業
5 農業中心主義を越える
コラム5 生業の複合と相互転換 [鶴田 格]
第6章 農法や作物の非画一性
――農耕の多様性がもたらすサブシステンスの安定 [山根裕子・杉村和彦]
1 混作と単作をめぐる視座
2 熱帯雨林下の混作――コンゴ民主共和国(旧ザイール)の事例
3 サバンナの山地における多様な農業――ウルグル山地の事例
4 サブシステンスのための環境利用としての混作
―ウルグル山地北側斜面の原始的に見える農業
5 混作を背景として成り立つ豊かな食
―ウルグル山東側斜面のホームガーデン(ジャララ)
6 多様な農業とサブシステンスの論理
コラム6 地球環境問題と混作研究の意義 [山根裕子・杉村和彦]
第7章 分与の経済と食の安定
――生きる場におけるなりわいとしての農 [杉山祐子]
1 農業の市場経済化が不可視化する、なりわいとしての農のすがた
2 生業複合における農と長期的な食料確保をめざす生計戦略
3 ベンバの生業複合と平準化機構
4 変動する世帯構成と世帯の再編による食料確保
5 分与の経済と現金経済の接合
6 捕捉されない農民像は分与する農民像
コラム7 サーリンズの過少生産論と交換論 [鶴田 格]
第8章 富の蓄積と再生産
――東アフリカ農牧社会における財と家族 [泉 直亮]
1 アフリカ農村社会と土地
2 「農」と「牧」が混在する世界
3 東アフリカ牧畜社会における財としての家畜
4 農牧民スクマ社会における財と世帯
5 東アフリカ農牧社会における財の特質とその変遷
コラム8 カール・ポランニーと形式主義/実体主義論争 [鶴田 格]
第3部 近代農学とアフリカの農
第9章 イデオロギーとしての近代農学の形成 [末原達郎]
1 アフリカ農村での経験から
2 発展と農業革命
3 西欧の農学と日本の農学
第10章 国家農学と小農の対応 [池上甲一]
1 国家の暴力と「国家農学」
2 モザンビークのプロサバンナ事業に見る国家農学の暴力性
3 タンザニアのローア・モシ灌漑事業の光と影
4 グローバル・フードガバナンスにおける国家農学と開発援助・協力
5 国家農学の本質を探る――日本の経験から
6 アフリカ農民の生き残り戦略と将来
第4部 自然社会の農学
第11章 農業イノベーションのアフリカ的特質 [鶴田 格]
1 アフリカ的なイノベーションを捉えるための視点
2 既存の経済学・農学は農業イノベーションをどうとらえてきたか
3 アフリカ農業の多様性
4 アフリカ農業の集約化と多様性
5 社会に埋め込まれたイノベーション
6 非アグラリアン社会のイノベーション
第12章 自然社会の農学へ向けて [杉村和彦]
1 現代につながる農業世界――古代メソポタミアの世界の視界
2 多様性を耕す――近代農学パラダイムとアフリカ農村
3 エスノサイエンスとしての近代農学
4 「緑の革命」を拒否する世界――自然社会とアグラリアン社会の間
5 自然社会の農学へ向けて
コラム9 緑の革命とヴァンダナ・シヴァ [山根裕子・杉村和彦]
終章 アフリカから農を問い直す [杉村和彦・鶴田 格・末原達郎・池上甲一]
1 自然社会の「農」と産業社会の「農業」のあいだ
2 近代農学を超える視座
3 アフリカから学ぶ
4 脱アグラリアンの構想力
コラム10 現代の再小農化(新しい小農)論とチャヤノフの小農論 [池上甲一・鶴田 格]
あとがき
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