序 章 国内移動をいま論じる意味
──中国と日本 [川口幸大・堀江未央]
1 都市へ
2 国内移動の何が問題なのか
3 本書の視点と構成
第Ⅰ部 移動が生んだコンタクト・ゾーンにおける社会関係とはいかなるものか
第1章 あんたがおれの百度だ
──珠江デルタの「本地人」と「外地人」 [川口幸大]
1 他者との複数の層からなるつながり
2 珠江デルタにおける他者の諸相
3 本地人と外地人──生み出された差異
4 コンタクト・ゾーン
5 他者との差異を前提とした「他者慣れ」した人々どうしの付き合い
第2章 都市を出る人、都市に来る人・戻る人
──広東省の地方都市汕尾の事例から [稲澤 努]
1 溶解し始めた三つ巴の社会カテゴリー
2 街の成り立ち
3 来る人・出る人・戻る人
4 コンタクトゾーンの存在と関係の変化
5 汕尾語が聞こえなくなる日は来るのか
第3章 出稼ぎ先は「小さな国連」
──浙江省義烏市に暮らすムスリムたち [奈良雅史]
1 経済的動機に還元しえない移動の民族誌
2 義烏におけるイスラームをめぐる状況
3 義烏におけるムスリム・コミュニティのあり方
4 宗教・民族を越えた共在
5 小さな都市の多様性」が持つちから
第Ⅱ部 移動は何を広め流行らせているか
第4章 移動の危険に対処する呪術
──雲南ラフの男たちと出稼ぎ [堀江未央]
1 イニシエーションとしての出稼ぎが紡ぎ出す文化実践
2 ラフの移動の歴史
3 近年の「北上移動」
4 新たな呪術の流行
5 「くにを出る者」から「出稼ぎ者」へ──口功の実践に見る新たな民俗カテゴリ
第5章 移動が生み出すトランス・エスニックな子ども服
──雲南省から貴州省へ流通するモン/ミャオ族衣装と民族間関係 [宮脇千絵]
1 「何族のものということのない」子ども服
2 移動と「民族衣装」、そして子ども服
3 文山におけるモン衣装の既製服化
4 国内遠隔地への文山モン衣装の流通
5 貴州省での消費──エスニシティの差異化
6 新たに生まれる子ども服──エスニシティを超えた共有
7 エスニックな装いの差異化と共有のロジック
8 移動が生み出す新たな領域
第Ⅲ部 移動によってエスニシティと他者像はいかに再編されているか
第6章 出稼ぎに行くのは甲斐性のない人
──モンゴル人の移動と生活基盤 [包双月(ボウ サラ)]
1 「ソーリ」のない人という社会カテゴリー
2 移動、漢人、そして自己についてのモンゴル人の認識
3 内地と辺境をめぐる循環的移動
4 労働力を送り出すようになった内モンゴル東部地域
5 モンゴル人村落をとりまく社会的状況
6 出稼ぎに行くモンゴル人
7 強化されるネガティブな出稼ぎ観
第7章 「君たちは何をしている人なのか?」
──広西三江県におけるマカイ人の定住と地域社会 [黄 潔]
1 中国内陸地域に移った客家をめぐる自己像と他者像
2 広西三江県のマカイ人
3 「客」は市街に住み、「苗」は高い坂に住み、「侗」は川の岸辺に住む
4 減少する漢族、増大する少数民族
5 漢族が現地にもたらした祭祀
6 思いがけない可能性をもたらした他者との関わり
第8章 移りゆく「辺境」イメージ
──上海から雲南への「支辺」移民の語りを通して [孫 潔]
1 千万単位の政策移住者のライフストーリーと「新天地」のイメージ
2 「支辺」及び支辺移民
3 異なる時代における支辺移民が体験した「辺境」イメージの多様性
4 「辺境」はやはり「辺境」なのか
終 章 「境界越しの邂逅」の持つ可能性 [堀江未央]
1 COVID─19の世界のなかで
2 村落研究を越えるための枠組み
3 上に政策あり、下に対策あり
4 移動から見た中国
5 コンタクト・ゾーンの儚さと国内移動の行方