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揺らぐ北欧協同組合王国

協同組合の多国籍化・「会社化」とガバナンス

著:田中 秀樹

紙版

内容紹介

スウェーデンを中心においた北欧農協論であり,その形成・展開過程をできる限り正確にフォローすること,90年代以降の国際化・多国籍化および「会社化」の実態と,その国境を越えたガバナンス構造を実証的に明らかにした。

目次

序 章 協同組合再編の時代と北欧農協…
1.協同組合再編の時代
2.欧州農協の再編動向
3.対象としての北欧農協
Ⅰ.北欧農協の形成から再編まで;歴史
第1章 協同組合王国;北欧農協の概観と比較
1.はじめに
2.デンマーク
3.スウェーデン
4.ノルウェー
5.フィンランド
6.まとめにかえて
第2章 地域コミュニティ形成と農協─発生期のデンマーク農協と現段階の日本農村の協同─
1.はじめ.
2.分割地農民の形成・自立化と地域コミュニティ形成─発生期のデンマーク農協─
(1)分割地農の形成と共同体の解体
(2)分割地農の自立化と農協
(3)農民分解と農協合併-地域コミュニティからの分
3.「現段階的『自作農』」と協同による地域づくり─現段階の日本農村の協同─
(1)高度経済成長と総兼業化
(2)協同による地域づくり
4.まとめにかえて
第3章 スウェーデン農協の形成と転換─コーポラティズム型から市場指向型へ─
1.はじめに
2.スウェーデンにおける農協の発生からコーポラティズム型農協へ
(1)農協の発生1880~1920年代
(2)コーポラティズム型農協の形成1930~1940年代
3.コーポラティズム型農協の展開と揺らぎ1950~80年代
(1)農業構造改革と農協合併の進展1950~70年代
(2)コーポラティズム型農協の揺らぎ1980年代
4.市場指向型農協への転換1990年代
(1)農業政策の転換と組合員の個人化・異質化
(2)協同組合法の改訂
(3)農協連合会の縮小と単協の市場指向化
5.まとめにかえて
第4章 EU市場下における北欧農協の国境を越えた再編─スウェーデンから見て─
1.課題と方法
2.EU市場参入とスウェーデン農業・農協の再編
(1)EU市場参入とスウェーデン農業
(2)スウェーデン農協の変遷と再編段階
3.農協の現段階;多国籍化・国際化と脱協同組合化
(1)酪農協;多国籍農協への統合と「巣分かれbeehive」専門農協化
(2)食肉農協と鶏卵農協;「会社化」とそのFCB(Farmer-controlled Business)化
(3)購買穀物販売農協;リージョナル化から国内単一農協の形成と事業の国際化
(4)森林組合;リージョナル単協と連合会の残存
4.まとめと考察
Ⅱ.国境を越える協同組合─そのガバナンスと「会社化」形態─;現状分析
第5章 多国籍Arla Foods酪農協の選択と困難─進む「会社化」と「多国籍化」のなかで─
1.EU農協の「会社化」─アイルランドとデンマーク─
2.Arla Foods酪農協の選択─協同組合形態の保持─
3.事業の国際化と子会社化─組合員統制の可能性─
4.高乳価保障の構造
第6章 国境を越えた協同組合のガバナンス
1.はじめに
2.多国籍農協への道;Arla Foodsの成立と多国籍化の過程
3.ガバナンス構造の変化と模索
(1)合併に伴うガバナンス構造の変化
(2)組合員とその基礎組織
4.多国籍農協の事業特徴
第7章 スウェーデンの生協から見る生協構造改革の行方
1.はじめに
2.構造改革の歴史的背景
3.生協とイーカ
(1)スウェーデン流通業界の概観
(2)イーカの発展
4.1990年代の生協構造改革
5.生協の店舗構造
6.組合員参加の模索
7.おわりに
補足1:その後の動向
補足2:発生期の生協運動─フィンランドとの比較─
(1)発生期のスウェーデン生協運動
(2)フィンランドの生協運動の場合─フィンランド生協小史─
第8章 協同組合の「会社化」─動向と論点─
1.はじめに
2.現段階における「会社化」の動向と諸形態
(1)ヨーロッパの農協における「会社化」の諸形態
(2)生協における事業機能統合と子会社化・アウトソーシング
3.現段階における「会社化」の背景
4.まとめ─協同組合の「会社化」とその論点─
Ⅲ.地域に根ざした協同組合運動の展望
第9章 地域コミュニティ形成と協同組合運動─日本との比較─
1.はじめに
2.北欧農協と地域コミュニティ形成
(1)発生期の北欧農協と農村地域コミュニティ
(2)農村地域づくりと新しい協同組合運動─スウェーデンを事例に─
3.日本における地域コミュニティ形成と協同組合運動
(1)「むら」を組織基盤とした産業組合の地域社会への定着
(2)産業都市=地域労働社会形成と労働者の生協運動
(3)消費都市形成と市民生協運動;新興住宅団地と生協班
4.「小さな協同・協同組合」の登場と地域コミュニティ形成の展望
(1)「小さな協同」の主体
(2)「小さな協同」の特徴
(3)地域コミュニティ形成と協同組合運動の展望
5.まとめにかえて
終 章 総括と展望
1.なぜ北欧が「最も協同組合的な国々」となったのか?
2.日本との違い
3.協同組合のとらえ方─「人間らしい社会化の形態」─
4.社会システム転換と「小さな協同・協同組合」─「弱さ」の協同へ─
【引用・参考文献一覧】
あとがき 

著者略歴

著:田中 秀樹
1954年愛知県生まれ。北海道大学教育学部・同大学院博士課程修了,教育学博士。
生活問題研究所,(財)生協総合研究所専任研究員を経て,広島大学生
物生産学部助手,大学院生物圏科学研究科助教授,教授。広島大学名誉教授。
専門・関心領域は,協同組合論,食生活論,農村地域づくり論など。
著書;『協同の再発見─「小さな協同」の発展と協同組合の未来』(編著)
家の光協会,『地域づくりと協同組合運動─食と農を協同でつなぐ』大月書店,
『消費者の生協からの転換』日本経済評論社など。

ISBN:9784811906058
出版社:筑波書房
判型:A5
ページ数:306ページ
価格:3500円(本体)
発行年月日:2021年09月
発売日:2021年09月15日
国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:KCVD