植物 奇跡の化学工場
光合成、菌との共生から有毒物質まで
著:黒柳 正典
内容紹介
地球生命を支える光合成から、成長に関わるホルモンや、
外敵・競争相手に対抗するための他感作用物質、
繁殖のための色素や甘味物質の生産、
私たちが薬品として利用する有毒物質など、
植物が生み出す驚きの化学物質と、巧妙な生存戦略を徹底解説。
植物を化学の視点で解き明かす。
目次
はじめに
第1章 生命を支える光合成
生物進化と植物の誕生
ミトコンドリアの共生は細胞の多細胞化を可能にした
光合成――化学的に困難な反応を可能に
光合成の仕組み
明反応と暗反応
地球の炭素循環は植物が駆動する
■コラム1 地球生命はすべて同じ祖先から
■コラム2 共生による進化の加速
■コラム3 植物の光情報受容体
第2章 二次代謝産物――化学戦略の主役
一次代謝と二次代謝
二次代謝産物
テルペノイド――花の香りからフィトンチッドまで
ポリケタイド――脂肪酸も仲間
フェニルプロパノイド――C6-C3 の炭素骨格を持つ
フラボノイド――生活習慣病予防への期待
アルカロイド――合成医薬品の開発に貢献
複合経路――多彩な天然物を演出
■コラム4 配糖体
■コラム5 ホルミル基を持つ化合物の不思議
■コラム6 有機化合物の三次元構造
第3章 発生、分化、成長と植物ホルモン
植物ホルモンの役割
オーキシン――ダーウィンから始まった研究
サイトカイニン――植物の老化を防止する
エチレン――野菜・果実の鮮度を操る
ジベレリン――日本人科学者が解明に貢献
アブシジン酸――種子や芽の休眠、乾燥障害防御に働く
ブラシノステロイド――細胞伸長や維管束形成作用
ジャスモン酸――ジャスミンの香気物質が生体防御に働く
ストリゴラクトン――菌根菌との共生を誘導
■コラム7 植物細胞と動物細胞
第4章 戦いと共生
対植物・対昆虫の戦い
他感作用――アレロパシー
ファイトアレキシン――病害防除に働く抗菌物質
昆虫・微生物の利用と共生
植物が害虫の天敵を呼ぶ
マメ科植物と根粒バクテリア
植物と菌根菌との共生
植物間のコミュニケーション
■コラム8 昆虫の食草
第5章 繁殖戦略――鮮やかな色と甘い蜜
花と果実の色
アントシアニン――鮮やかな花の色を演出
カロテノイド――トマトの赤色、イチョウの黄色
ベタレイン――ナデシコ目の一部の科に特異的な色素
フラボノイド――抗酸化活性を持つ黄色い色素
その他の色素
紫外線ストレスと植物色素
虫を呼ぶ花や果実の香気成分
植物起源の甘味成分
■コラム9 ヒトが光を感じる仕組み
■コラム10 有害紫外線
第6章 食害を防ぐ有毒物質
トリカブト――毒と薬は表裏一体
ドクウツギ――甘い果実は誤食に注意
ドクゼリ――セリとの違いは根の形
ヒガンバナ――赤い花は秋の風物詩
スイセン――誤食例の多い園芸植物
ステロイドアルカロイド――ジャガイモの芽や青くなった皮には注意
クラーレ――南米原住民が狩猟に用いた
ハシリドコロ――サリン事件で治療に貢献
シアン配糖体――バラ科植物の種子にご用心
強心配糖体――世界で知られるキョウチクトウの毒性
トウゴマ――最強の有毒タンパク質
ツツジの仲間――美しい花を咲かせる有毒植物
大麻――幻覚作用が社会問題に
イラクサ――触れると痛みやかゆみを引き起こす
サトイモ科――身近な食品のエグミの原因、シュウ酸カルシウム
第7章 発がん物質
発がんプロモーター
ワラビ――灰汁抜きでなくなる発がん性
ソテツ――沖縄などでは救荒植物に
ピロリチジンアルカロイド――肝硬変やがんの原因
■コラム11 アサギマダラ――2000kmを渡り、有毒物質を摂取するチョウ
第8章 植物が動くメカニズム
オジギソウの急激な動き
就眠運動――ゆっくりとした動き
あとがき
用語解説
参考文献
索引