樹は語る
芽生え・熊棚・空飛ぶ果実
著:清和 研二
内容紹介
老樹が語る、いのちを繋ぐ木々の気持ち――
森をつくる樹木は、さまざまな樹種の木々に囲まれてどのように暮らし、次世代を育てているのか。
発芽から芽生えの育ち、他の樹や病気との攻防、花を咲かせ花粉を運ばせ、種子を蒔く戦略まで、80点を超える緻密なイラストで紹介する。
長年にわたって北海道、東北の森で研究を続けてきた著者が語る、落葉広葉樹の生活史。
目次
序章
もの言わぬ樹々
樹のきもち
知らないことの無慈悲さ
樹は語る
生育場所ごとに──本書の構成
第1章 水辺に生きる
ハルニレ──春楡
おおらかな樹形
開拓の目標
美しい季節に舞う
うごめく蛾の幼虫
河畔の一斉林
山腹に孤立する大木
いつ発芽するかは親木が決める
巨木は川辺になく都会にあり
イヌコリヤナギ──犬行李柳
山間地の風景
華やかな開花
お母さんのがんばり
瞬きする間もない種子の出現
綿毛は道先案内人
小さな種子でも素早く成長
オニグルミ──鬼胡桃
のびのびと育つ
雌花の後に雄花が咲く木と、雄花の後に雌花が咲く木
雌雄異株への途上か
種子を散布する者たち
鈍く光りはじめた箪笥
第2章 明るい攪乱跡地でひたむきに生きる
シラカンバ──白樺
水色の空と白い幹
科学的な天然林施業の第一歩
受粉のために群れる
風に乗って旅立つべらぼうな数の種子
明るいところだけで発芽
ハンディキャップの克服
三つ子の魂百まで──年をとっても自転車操業
ケヤマハンノキ──毛山榛の木
傷口の縫合
攪乱地を渡り歩く
茶花
温度センサーが発芽を後押し
根粒菌
紅葉する気なし
川を豊かに
第3章 老熟した森で生きる
イタヤカエデ──板屋楓
春先に勝負を賭ける
秋の光も利用する
一斉に葉を開く
小さい子から順番に
花を咲かせてから葉を開く
花の秘密
臨機応変
たくましい老木
ウワミズザクラ──上溝桜
滑稽な花
鳥に種子を運んでもらう
ジャンゼン─ コンネル仮説に気づく
親の下では生き延びることができない
親から離れてはじめて大きくなれる
温帯林も熱帯林と同じ仕組み
稚樹の平たい樹冠
春出した枝を秋に落とす
「もったいない」は森の常識
この世の春
諦観──森の摂理にあえて逆らわない
春の山に浮き立つ
トチノキ──栃の木
巨木の群れ
巨大な種子
三尺玉の花火
かなりの頑固者──同じ振る舞いを一生続ける
老木の時間
奥山の味
ミズキ──水木
身近な木
湧き出た白い雲
赤から黒に熟す果実
樹種の置き換わり──多種共存の始まり
局所適応
真上から降ってくる恐ろしい病気
親から離れてギャップを待つ
真っ先にスギ林に進入──種多様性回復の先鋒
原生林を思い浮かべる
ミズナラ──水楢
熊がへし折った枝
ドングリは夜運ばれる
ドングリにやさしいネズミとそうでないネズミ
ドングリが大きくなったワケ
株立ちと原発と
いざというときのために根に溜めこむ
異論──ギャップ種か
北の極相種
第4章 森の中の隙間で育つ
ホオノキ──朴の木
100年寝過ごさないように
香り渡る大輪の花
茜色と朱色の果実
元気に萌芽
ツルアジサイと友達
クリ──栗
尾根に集う
熊棚──熊を留め置く
白っぽい木
蜂も人も喜ぶ遅い開花
花粉を選ぶ昆虫たち
マルハナバチのおかげ
ネズミを使って「ギャップ」に堅果を運ばせる
楽天家のクリと忍耐のミズナラ
なぜ、野生種のクリは栽培種より小さいのだろう
牛小屋の柱
巨木のやさしさ
おわりに
参考文献
索引