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発明に「新規性」と「進歩性」とがなければ、発明に特許権は成立しません。この２つの条件のうちの「新規性」は、判断する人物の主観や価値観が入り込む余地はありませんので、その判断も容易です。ところが、もう１つの条件である「進歩性」については、その判断は容易ではありません。

本書は、近年の各判決の前提にある考え方「容易想到性」についての統一的な判断基準を論述するとともに、他方において、このことを踏まえて、裁判例の中から、とりわけ、「紙葉類識別装置の光学検出部」事件判決以降の進歩性判断のありかたを判示した判決から「容易想到性が肯定される事由」や「容易想到性が否定される事由」を抽出し、進歩性の判断基準を体系化したものです。

本書が審判手続や特許訴訟に関与する弁理士や弁護士等の実務家の手引きとしてだけでなく、技術開発、技術開発管理、知的財産管理等の各業務に従事する人々にとっての手引き書となれば幸いです。

はじめに

第１章「進歩性」判断の枠組み
１「進歩性」についての特許法の定義
２ 発明の構造とその表し方
３ 進歩性の有無の判断のしかた
４ 進歩性の有無を判断する手法とプロセス
５ 進歩性の判断についての論点

第２章「相違点に係る技術的構成」の抽出のための諸問題
１ 本件発明の認定のありかた-発明の要旨の認定
２ 引用発明の認定のありかた
３「相違点に係る技術的構成」の抽出・認定

第３章　容易想到性の判断基準.副引用発明を必要とする場合
１ 「容易想到性の第２条件」についての考え方
２ 現行審査基準の定める「動機づけ」となる事由(1)-技術分野の関連性
３ 現行審査基準の定める「動機づけ」となる事由(2)-課題の共通性
４ 現行審査基準の定める「動機づけ」となる事由(3)-作用・機能の共通性
５ 現行審査基準の定める「動機づけ」となる事由(4)-引用発明の内容中の示唆
６ 「容易想到性の第２ 条件」が充足される場合(1)-適用可能化技術の存在
７ 「容易想到性の第２ 条件」が充足される場合(2)-主引用発明の構成要件の一部の除去
８ 回路用接続部材事件判決と「引用例中の示唆論」
９ 容易想到性を否定する根拠となる事由-阻害要因

第４章　容易想到性の判断基準-副引用発明を必要としない場合
１ 副引用発明を必要としない場合における「容易想到性の根拠となる事由」
２「数値限定発明」の容易想到性

おわりに-進歩性と商業的成功

掲載判決年月日別一覧表