〈超越性〉と〈生〉との接続
編:貝澤哉
紙版
内容紹介
超越的理念と具体的生の統合への願い
西欧哲学とは異なる発展を遂げたロシア思想を、〈ロシア的理念〉――国民・民族・宗教の文化伝統に基づく、内向きな〈国民思想史〉の枠組みから解放し、同時代の世界の幅広い歴史的コンテクストに批判的に位置づけ直すことで、その真価を問う。文学、哲学、法哲学、教育思想、教会史、科学史を網羅するロシア思想研究の最前線。
目次
Ⅰ
鳥山祐介
デルジャーヴィンの頌詩「神」と啓蒙期のロシア――人間の尊厳と神の善性の擁護
坂庭淳史
プーシキンから見たチャアダーエフ――『エヴゲーニー・オネーギン』における感情の交錯
望月哲男
包摂と排除――『カラマーゾフの兄弟』における教会裁判論と古儀式派のテーマ
Ⅱ
下里俊行
神化をめざす肉体――一八六〇年代の哲学者・教育学者ユルケーヴィチの思想
杉浦秀一
パーヴェル・ノヴゴロツェフと「自然法の復活」
兎内勇津流
第一次ロシア革命とロシア正教会試論――なぜ宗務院体制打破と総主教制復興が提起されたか
Ⅲ
北見諭
ディオニュソスと永遠回帰――ヴャチェスラフ・イワーノフの実在概念について
貝澤哉
ミハイル・バフチンの人格理論における「他者」概念と身体性の問題――哲学史的コンテクストから見たその特徴
金山浩司
量子力学に因果をみる――一九三〇年代ソ連での議論