出版社を探す

運動としての大衆文化

著:大塚英志 他

紙版

内容紹介

文化と政治の結節点

現代のポピュラーカルチャーは,かつてのカウンターカルチャーに連なると同時に,戦時下のプロパガンダとも密接に結びついている。各種メディアが大衆の動員に向けて活用されてゆく戦前・戦中から,創作と需要が市場を軸に循環する現代のファンカルチャーまで,分断されたアカデミズムの近視眼を越えて政治的社会的水脈を掘り起こし,歴史のダイナミズムを捉える。 

目次


「運動」する手塚治虫――「後衛」の実践  大塚英志


Ⅰ 「方法」としての文化工作

昭和八年のメディア・イベント――読売新聞「三原山火口探検」の研究  神松一三

鴨川をどりにおけるプロパガンダ――花街の中での戦争  萩原由加里

戦中婦人雑誌と「これでよいか こうしたら」  横田尚美

キャラメルの喩えとしての「子ども」――戦間期日本の洋菓子広告と童画風図案  前川志織

一九一〇年代の写真小説における両義性とその実践  山本忠宏

「人造人間」はなぜ泣くか?――田川水泡『人造人間』にみるマンガとアヴァンギャルド芸術の接点  孫旻喬

観客・丸山眞男  花田史彦


Ⅱ 協働/運動する「ファン」たち

『機動戦士ガンダム』と(再)放送の文化史  近藤和都

戦後日本におけるアニメーションのファン文化の興隆と意義
――渡辺泰のディズニー・クラブ関連資料とファン/研究活動を手がかりに  佐野明子

アマチュア特撮映画コンテストと特撮ファン共同体
――「グリーンリボン賞」(一九八四―一九九三)における観客参加型上映  板倉史明

子どもの読書とメディアミックス――読書環境の変化に注目して  團康晃

199X―200X アングラ空間の穴からみえた世界  藤岡洋

ニコニコ動画は「運動」だったのか?――協働という観点から見るポピュリズムとウェブ  鈴木洋仁

ボーカロイドムーブメントの誕生とマーケットに参加するアマチュア  アルバロ・ダビド・エルナンデス・エルナンデス

負けるためのプレイ・盛り立てるプレイ――LARPでの共同創造的なストーリーテリング  ビョーン゠オーレ・カム

街空間と運動としての女性向けメディアミックス  エドモン・エルネスト・ディ・アルバン


Ⅲ 歴史の記述される場所で

後藤総一郎と常民大学運動――「野の学」への希求  杉本仁

自らをどこに置きなおすか――「日本民俗学講習会」のあとさき  鶴見太郎

さらにいくつもの〈こども風土記〉のために・大正台湾編――『台湾小公学校児童文集』を読む  菊地暁

語り継ぐことと文化創造運動のあいだ――旧産炭地筑豊における試み  川松あかり

「職場の歴史」を考える  竹村民郎

大学からの社会運動――関東大震災後の東京帝大セツルメントとその後  内田力

史伝小説という戦略――海音寺潮五郎における「西郷隆盛」の人物造形とその影響  室井康成

著者略歴

著:大塚英志 他
大塚英志(おおつかえいじ)
1958年生まれ。まんが原作者,批評家。博士(芸術工学)。国際日本文化研究センター教授。専門は,まんが表現史,まんが創作論。主な著書に,『「暮し」のファシズム――戦争は「新しい生活様式」の顔をしてやってきた』(筑摩書房,2021)などがある。

ISBN:9784801005945
出版社:水声社
判型:A5
ページ数:483ページ
定価:6500円(本体)
発行年月日:2021年09月
発売日:2021年09月24日
国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:JB