序 章
第一節 前近代イスラーム社会における「同性愛」とは何か
第二節 本書の視座 〈同性愛〉概念の萌芽
第一章 「同性愛」をめぐる歴史学的研究の展開
第一節 「同性愛」の「誕生」をめぐる研究史
第一項 「同性愛」の歴史の研究史
「性愛の歴史」研究の始まりと発展/フーコーの「ソドミーから同性愛へ」テーゼ/
「同性愛」の「誕生」/歴史学における本質主義対構築主義論争
第二項 「同性愛」の「誕生」とは何か
「同性愛」という用語の成立/「同性愛」概念の形成過程
第二節 前近代イスラーム社会の「同性愛」をめぐる諸問題
第一項 前近代イスラーム社会の「同性愛」をめぐる研究史
イスラーム社会における「同性愛」の記述/本質主義的研究/構築主義的理解の台頭/
構築主義的理解の一応の「勝利」/応用と展開
第二項 研究史上の論点と問題点
第三節 本書の目的と分析方法
本書の目的/本書での分析対象と方法
第二章 性愛について語る史料
第一節 文学史料
韻文作品における性愛/外来の散文作品における性愛/アラブの散文作品とアダブ/
アラブの散文作品における性愛
第二節 医学史料と性愛学文献
医学史料と性愛/性愛学文献/性愛学文献の位置付け/性愛学文献のアダブへの影響
第三章 9世紀イスラーム社会における性愛観念 「挿入モデル」の再検討
第一節 同性間での性愛にまつわるジャーヒズの著作
第二節 『ジャーリヤとグラームの美点の書』から見る性愛構造
第一項 「ジャーリヤ」「グラーム」という語が指す対象
第二項 ジャーリヤ・グラームへの評価と成人男性への評価
第三項 非・成人男性と成人男性の境界
グラームと成人男性の境界/去勢者と成人男性の境界/ムハンナスと成人男性の境界
第三節 成人男性の美徳としての「男らしさ」
第四節 小括
第四章 9-11世紀イスラーム社会の「異性装」とセクシュアリティ
第一節 イスラームの理念における「異性装」 ハディースとその解釈
第二節 歴史史料のなかの「異性装」
(1)女性の装いをする成人男性
(2)女性の装いをする非・成人男性
(3)非・成人男性の装いをする女性
(4)成人男性の装いをする女性
第三節 異性装から見る「男らしさ」「女らしさ」とジェンダー構造
第四節 小括
第五章 同性間での性愛にまつわる医学的言説の展開 医学書と性愛学文献
第一節 医学史料における男性同士の性愛についての記述
第一項 ラーズィー『秘密の病』
第二項 イブン・スィーナー『医学典範』
第二節 性愛学文献における男性同士の性愛についての記述
(1)アリー・ブン・ナスル『快楽大全』
(2)サマウアル・ブン・ヤフヤー『恋人と交際する友たちの楽しみ』
(3)シャイザリー『心の庭と愛し愛される者たちの楽しみ』
(4)ティーファーシー『比類なき書における心の楽しみ』
(5)イブン・ファリータ『理知的な男の恋人との付き合い方』
第三節 小括
第六章 前近代イスラーム社会におけるムハンナス概念の変遷
「ムハンナスのアッバーダ」にまつわる言説を通じて
第一節 「物語」としてのアッバーダ 12世紀以前没の著者による記述
第一項 トリックスターとしての「ムハンナスのアッバーダ」
第二項 アッバーダ認識の変化 逸話集における著述形式の変化と医学知識の浸透
第二節 「史実」としてのアッバーダ 13世紀以降没の著者による記述
第一項 アッバーダの逸話の「史実化」 12世紀以前の人名録・年代記から
第二項 「史実」としてのアッバーダとムハンナスに対する認識の固定化
第三節 小括
終 章
本書のまとめ/今後の課題
史料 ジャーヒズ著『ジャーリヤとグラームの美点の書』訳注
あとがき
注
参考文献
索引