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学術選書 249

日本の海洋政策と海洋法〔第3版〕

著:坂元 茂樹

紙版

内容紹介

◆信頼の著者による好評書、待望の増刷・増補 ー 海洋に関する法的検討◆ 
第3版で新たに第I部「中国の海洋進出と日本の対応」を創設。日々緊迫の度が高まる尖閣沖の領海侵入と深刻な脅威にさらされている東シナ海・南シナ海。海洋進出を強める中国の動きにどう対応し、かつ権益を守るか?国際協調の下で積極的・先導的役割を果たすべく、海洋立国日本に、いま求められるものは何か。21世紀海洋秩序の構築と喫緊の課題を考究する。

目次

『日本の海洋政策と海洋法〔第3版〕』

  坂元茂樹(神戸大学名誉教授) 著

【目 次】

・第3版の刊行にあたって
 
◇第Ⅰ部 中国の海洋進出と日本の対応◇

◆第1章 中国海洋戦略の解剖――国内立法と国連海洋法条約の自己中心的解釈による海洋秩序の侵害

  1 はじめに
  2 国内立法による国連海洋法条約の歪曲
   (1) 中国領海法における外国軍艦の無害通航権の否定
   (2) 接続水域への安全保障の管轄権の延長
   (3) 中国海警法による国連海洋法条約の歪曲
  3 自己中心的解釈による国連海洋法条約の歪曲
   (1) 歴史的権利の主張
   (2) 中国による群島基線の主張
  4 おわりに

◆第2章 機能拡大する中国海警――中国海警法の狙いを探る

  1 はじめに
  2 海警法の懸念点
   (1) 曖昧な「中国の管轄海域」と追加された防衛任務
   (2) 尖閣における日本の実効支配強化の防止の布石
   (3) 外国軍艦等に対する強制措置
   (4) 管轄海域における海上臨時警戒区の設置
   (5) 中国海警船の法的地位
  3 海上保安庁に関して留意すべき点
  4 おわりに

◆第3章 中国海警法制定後の海上保安――武器の使用基準をめぐって

  1 はじめに
  2 海上法執行機関による「武器の使用」の法的性質
   (1) 学説の状況
   (2) 「実力の行使」に関する国際判例の動向
  3 海上法執行機関による「武器の使用」の合法性基準
   (1) 民間船舶に対する「武器の使用」の合法性基準を示した国際判例
   (2) 武器の使用に関する海警法の規定
  4 おわりに

◇第Ⅱ部 領 海◇

◆第4章 日本の領海と海上保安

  1 はじめに
  2 領海における外国船舶の無害通航権
   (1) 通航に関する国連海洋法条約
   (2) 通航に関する日本法制
  3 沿岸国の権能
   (1) 執行管轄権の行使
   (2) 外国船舶に対する裁判権
   (3) 沿岸国の保護権
   (4) 沿岸国による執行措置
  4 海上保安庁法の体制
  5 おわりに

◆第5章 不審船への対応――無害でない通航を防止するための必要な措置

  1 はじめに
  2 無害でない通航と沿岸国法令の関係
  3 無害でない通航を防止するための海上保安庁法の体制
  4 不審船に対する対応――国際法の立場から
   (1) 継続追跡のあり方
   (2) 危害射撃のあり方
  5 おわりに

◆第6章 日本と国際海峡

  1 はじめに
  2 国際海峡制度と日本の対応
  3 日本の海域を取り巻く現状と課題
   (1) 外国船舶航行法と無害通航権について
   (2) 潜水艦の潜水航行について
  4 ホルムズ海峡の通過通航権をめぐる米国とイランの対立
   (1) 通過通航権の法的地位
   (2) 平和安全法制における国際海峡の機雷掃海をめぐる議論
   (3) 武力紛争時における国際海峡の法的地位
  5 おわりに

◇第Ⅲ部 排他的経済水域◇

◆第7章 排他的経済水域での沿岸国の同意なき海洋の科学的調査と資源探査――政府公船の場合の対応措置

  1 はじめに
  2 海洋の科学的調査に関する海洋法条約の体制
   (1) 調査国に有利な条文から成る第1の類型
   (2) 科学的調査の規制を求める条文から成る第2の類型
  3 わが国の基本的立場と抱える問題
   (1) 海洋基本法とガイドライン
   (2) わが国が抱える問題
   (3) 公船の主権免除に関する検討
  4 係争海域における海洋の科学的調査と資源探査
   (1) 中 国
   (2) 韓 国
  5 各国の海洋の科学的調査と資源探査に関する法規制
  6 わが国の法規制のあり方――鉱業法の改正
  7 おわりに

◆第8章 排他的経済水域における情報収集活動と軍事演習

  1 はじめに
  2 アジア海域における3つの事件
   (1) EP―3偵察機事件(2001年)
   (2) インペッカブル(Impeccable)号事件(2009年)
   (3) 九州南西海域工作船事件(2001年)
  3 提起された国連海洋法条約上の論点
   (1) 情報収集活動に対する沿岸国の規制
   (2) 軍事演習に対する沿岸国の規制
  4 海洋法条約における「平和的目的」の解釈
  5 おわりに

◇第Ⅳ部 公  海◇

◆第9章 公海漁業の規制と日本の対応――IUU漁業をめぐって

  1 はじめに
  2 IUU漁業に対するFAOの取組み
  3 IUU漁業に対する国際的規制
  4 IUU漁業に対する法的規制――包括的で統合的なアプローチ
   (1) 旗国の責任
   (2) 寄港国の責任――違法漁業防止寄港国措置協定(PSMA協定)の締結
   (3) 市場国の責任――貿易関連措置
  5 日本の対応――貿易関連措置を中心に
   (1) まぐろ類の輸入禁止措置
   (2) メロ(マゼランアイナメ)の輸入禁止措置
   (3) カニの輸入禁止の措置
   (4) 国内法の改正――外国人漁業規制法の改正
  6 おわりに

◆第10章 地域漁業管理機関の機能拡大が映す国際法の発展――漁業規制から海洋の管理へ

  1 はじめに
  2 国連海洋法条約による転換
  3 環境問題としての生物資源の持続可能な利用と保存の登場
  4 国連公海漁業協定による発展
  5 地域漁業管理機関合同会合の発足
  6 漁業と海洋環境の調和――新たな対立軸の出現
  7 おわりに

◆第11章 普遍的管轄権の陥穽――ソマリア沖海賊の処罰をめぐって

  1 はじめに
  2 海賊行為に対する国際法の規制
   (1) ハーヴァード草案(1932年)
   (2) 公海条約(1958年)
   (3) 国連海洋法条約(1982年)
  3 海賊に対する普遍的管轄権
   (1) 普遍的管轄権設定の理論的根拠
   (2) 処罰義務を含まない協力義務
   (3) 「引き渡すか訴追するかの義務(aut dedere aut judicare原則)」の不存在
  4 ソマリア沖海賊に対する国連安保理の対応
   (1) 安保理決議1816号――ソマリア沖海賊抑止の決意
   (2) 安保理決議1918号――ソマリア特別法廷検討の指示
  5 国連事務総長報告書の行方――ソマリア特別法廷設置に向けて
   (1) 国連事務総長報告書(2010年7月26日)
   (2) 国連事務総長報告書(2011年6月15日)
  6 おわりに

◆第12章 南極捕鯨事件判決と日本の対応

  1 はじめに
  2 裁判の争点
  3 国際司法裁判所の判決
   (1) 管 轄 権
   (2) 本  案
  4 判決の評価
   (1) 当事者適格(locus standi)の問題
   (2) 第8条の「科学的研究のため(for purposes of scientific research)」の解釈手法
   (3) 鑑定人の役割
  5 南極捕鯨事件判決後のIWCの議論
  6 科学委員会における審議
  7 おわりに

◆第13章 日本の国際捕鯨取締条約の脱退に伴う法的課題

  1 はじめに
  2 商業捕鯨規制の軌跡
  3 第67回IWC総会での日本提案の敗北
  4 沿岸捕鯨と先住民捕鯨の区別の妥当性
  5 IWC脱退に伴う法的課題
   (1) 海洋法条約の義務との関連
   (2) 新たな国際機関の設立について――「適当な国際機関」とはどのような機関か
  6 おわりに

◇第Ⅴ部 東シナ海◇

◆第14章 海洋境界画定と領土紛争

  1 はじめに
  2 海洋境界画定と国連海洋法条約
  3 日韓の海洋境界画定と竹島の影
   (1) 竹島をめぐる領土紛争
   (2) 海洋境界画定をめぐる日韓の対立
  4 日中の海洋境界画定と尖閣諸島の影
   (1) 尖閣諸島をめぐる領土紛争
   (2) 海洋境界画定をめぐる日中の対立
   (3) 共同開発をめぐる法的諸問題
  5 おわりに

◆第15章 海洋をめぐる中国国内法の分析

  1 はじめに海洋強国をめざす中国
  2 領海及び接続水域法(1992年2月25日)
  3 無人島保護及び利用管理規定(2003年7月1日)
  4 海島保護法(2009年12月26日)
  5 排他的経済水域及び大陸棚法(1998年6月26日)
  6 おわりに

◆第16章 中国公船に対する対応――外国公船に対する警告等の措置

  1 はじめに
  2 領海の法的性格と日本の関連国内法
  3 外国船舶の無害通航権
  4 外国公船の国際法上の地位と免除
   (1) 警告が行われた事例
   (2) 危害射撃に及んだ事例
  5 武器の使用と国際法
  6 おわりに

◇第Ⅵ部 南シナ海◇

◆第17章 九段線の法的地位――歴史的水域と歴史的権利の観点から

  1 はじめに
  2 南シナ海紛争の現状
  3 歴史的水域又は歴史的権利の観点からみた九段線
   (1) 歴史的水域の概念
   (2) 中国による九段線の主張
   (3) 歴史的水域であるための要件
  4 南シナ海仲裁裁判所の判決
   (1) 訴訟の提起
   (2) 管轄権判決
   (3) 本案判決
  5 おわりに

◆第18章 島の法的地位――南シナ海仲裁判決の第121条3項の解釈をめぐって

  1 はじめに
  2 海洋法条約第121条の構造と解釈
  3 南シナ海仲裁本案判決(2016年7月12日)
   (1) 主 文
   (2) 理由づけ
  4 判決の検討
   (1) 解釈の手法
   (2) 解釈の結果
  5 南シナ海仲裁判決とは異なる国家実行
  6 おわりに——沖ノ鳥島問題を念頭に

・索 引

著者略歴

著:坂元 茂樹
神戸大学名誉教授

ISBN:9784797282757
出版社:信山社出版
判型:A5変
ページ数:660ページ
定価:9500円(本体)
発行年月日:2023年11月
発売日:2023年11月22日
国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:LB