『環境リスクと行政の不作為』
清水晶紀(明治大学情報コミュニケーション学部准教授)著
【目 次】
・はしがき
◇序 章 本書の問題意識と構成
Ⅰ 問題意識
Ⅱ 分析視角
Ⅲ 本書の構成
- - -
◆第1部 行政の不作為に対する法的統制―日米比較と理論的含意―
◇第1章 行政の不作為に対する法的統制の理論構成―米国判例理論にみる「行政リソースの有限性」の重要性―
Ⅰ はじめに
Ⅱ 権限不行使に対する司法審査の枠組み
1 Chaney判決以前の司法審査枠組み
2 Chaney判決による司法審査枠組みの転換
Ⅲ 例外審査の条件
1 Chaney判決の整理と問題の所在
2 「有意な基準」の意味―連邦控訴裁判例の検討
3 連邦控訴裁判例の評価
Ⅳ 結 び
1 本章の検討結果
2 米国判例理論にみる「行政リソースの有限性」の重要性
Ⅴ 補 遺
◇第2章 「法治主義の要請」と「行政リソースの有限性」の調整―温室効果ガス規制をめぐる米国法の理論動向を手掛かりに―
Ⅰ はじめに
1 問題の所在
2 本章の構成
Ⅱ 調整規則の制定経緯とその後の変遷
1 CAAの規制枠組み―同法に基づく温室効果ガス規制の可能性
2 CAAに基づく温室効果ガス規制の萌芽―Massachusetts v. EPA判決
3 EPAによる温室効果ガス規制の整備―調整規則の登場
4 連邦最高裁による調整規則の否定―Utility Air Regulatory Group v. EPA判決
Ⅲ 「法治主義の要請」と「行政リソースの有限性」の相克
1 行政リソースの有限性をめぐる連邦最高裁判例の傾向
2 限界事例への対応をめぐる見解の対立
Ⅳ 「法治主義の要請」と「行政リソースの有限性」の調整
1 調整を基礎付ける理論的根拠―調整規則を正当化するEPA理論の検討
2 調整を実現する法的解決枠組み―「行政上の不可欠性」の具体的要件の検討
Ⅴ 結 び
1 本章の検討結果
2 日本法への示唆
◇第3章 行政の不作為に対する手続法的統制の現状と課題―権限発動請求制度の法的性質と権限不行使に対する司法的救済―
Ⅰ はじめに
Ⅱ 権限発動請求制度の類型とその法的性質
1 各類型の特徴
2 各類型の法的性質
Ⅲ 権限不行使に対する司法的救済
1 類型に照らした司法的救済方法
2 司法的救済の可能性
Ⅳ 結 び
◆第2部 環境リスク行政の不作為に対する法的統制―原子力行政を素材として―
◇第4章 環境リスク行政の不作為と予防原則の採否―福島原発事故国家賠償訴訟最高裁判決を契機として―
Ⅰ はじめに
Ⅱ 福島原発事故国賠最判の特徴
1 事案の概要
2 判 旨
3 法廷意見の特徴
Ⅲ 原子力安全規制と予防原則の採否
1 法廷意見と反対意見の分岐点―予防原則の採否
2 予防原則の採否を左右する考慮要素
3 原子力安全規制と予防原則の採否
Ⅳ 環境リスク行政の不作為と予防原則の採否
1 日本国憲法が予防原則の採用を要請している領域
2 環境リスク行政の不作為と予防原則の採否
Ⅴ 結 び
◇第5章 原子力安全規制の不作為に対する法的統制―福島原発事故国家賠償訴訟の下級審裁判例を素材として―
Ⅰ はじめに
Ⅱ 福島原発事故国家賠償訴訟の概要と争点
1 福島原発事故国家賠償訴訟の概要
2 判例理論の判断枠組みと各訴訟の具体的争点
Ⅲ 五判決の判旨とその特徴
1 全判決に共通する特徴
2 責任肯定判決の判旨とその特徴
3 責任否定判決の判旨とその特徴
4 小 括
Ⅳ 五判決の比較検討
1 事故の予見可能性の肯定時期
2 事故の回避義務の有無
3 権限行使義務の発生時期
4 事故の回避可能性の有無
5 国に対する責任追及の法的課題
Ⅴ 結び―「行政リソースの有限性」論と国家賠償責任の成否
Ⅵ 補 遺
◇第6章 原子力災害対策の不作為に対する法的統制―福島原発事故後の除染行政実務を素材として―
Ⅰ はじめに
Ⅱ 現行法制度の枠組み
1 放射性物質汚染対処特別措置法の制定経緯
2 放射性物質汚染対処特別措置法の概要
3 除染行政のプロセスとその特徴
Ⅲ 除染行政をめぐる裁量判断のあり方
1 除染行政の法的指針
2 除染行政をめぐる裁量判断の法的統制
Ⅳ 結び―環境行政法理論への示唆
◆第3部 環境リスク行政の不作為に対する法政策―原子力災害対策の実効性担保を素材として―
◇第7章 原子力災害対策の法的構造とその課題
Ⅰ はじめに
Ⅱ 福島原発事故以前の原子力災害対策法制の概要
1 災害対策基本法と原子力災害対策
2 災害対策基本法の原子力災害対策法制としての機能と限界
3 原子力災害対策特別措置法の制定とその特徴
4 福島原発事故以前の原子力災害対策法制の限界
Ⅲ 福島原発事故に伴う原子力災害の実態と事故後の立法・行政対応
1 事故が浮き彫りにした「想定外」の原子力災害の実態
2 事故後の立法・行政対応① 放射能汚染対策
3 事故後の立法・行政対応② 事故直後の避難施策
4 事故後の立法・行政対応③ 避難指示以降の被災者支援施策
Ⅳ 現行法制度の問題点
1 原子力災害対策の法的指針
2 現行法制度の問題点① 放射能汚染対策
3 現行法制度の問題点② 事故直後の避難施策
4 現行法制度の問題点③ 避難指示以降の被災者支援施策
Ⅴ 結び―現行法制度の課題と制度設計に向けた示唆
◇第8章 原子力災害対策の観点を踏まえた原子力安全規制法制の再構成
Ⅰ はじめに
Ⅱ 原子力安全規制法制における原子力災害対策の視点の欠如
Ⅲ 原子力安全規制と原子力災害対策を架橋する行政実務
1 米 国
2 日 本
Ⅳ 原子力安全規制法制の再構成
1 論点の抽出
2 実効的な原子力災害対策を担保する原子力安全規制法制に向けて
Ⅴ 結 び
1 本章の検討結果
2 残された課題
◇第9章 原子力災害対策の観点を踏まえた原子炉稼働規律条例の可能性
Ⅰ はじめに
Ⅱ 原子力法制における国と地方自治体の役割分担
1 現行法制度における地方自治体の役割
2 原子力安全規制に対する地方自治体の関与の正当化可能性
Ⅲ 独自条例による規律の必要性と可能性
1 独自条例による規律を必要とする立法事実
2 独自条例による規律の可能性
Ⅳ 想定される独自条例の類型とその特徴
1 原子炉稼働の可否を直接規律する条例
2 原子炉稼働をめぐる事前手続を規律する条例
3 原子力安全協定の方向性を規律する条例
Ⅴ 結 び
1 本章の検討結果とその帰結
2 残された課題
Ⅵ 補 遺
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◇終 章 環境リスクと行政の不作為―「時の裁量」の法的統制に向けて―
Ⅰ はじめに
Ⅱ 環境リスクと行政の不作為
1 環境リスク行政の特徴
2 環境リスク行政の不作為の三類型
Ⅲ 日本の法的統制理論―到達点と課題
1 環境リスク行政の法的指針
2 法的統制理論の到達点
3 残された課題―「時の裁量」の法的統制
Ⅳ 米国における「時の裁量」の法的統制
1 判例理論の違法性判断枠組み
2 米国「時の裁量」理論の到達点
3 環境リスク行政分野における課題
Ⅴ 環境リスク行政における「時の裁量」の法的統制
1 「時の裁量」の理論的根拠に関する米国法学説の動向
2 「時の裁量」の正当化要件に関する米国法学説の動向
3 米国法理論の到達点と日本法への導入可能性
Ⅵ 結 び
1 本章の検討結果
2 環境行政法理論への示唆
・事項索引
・判例索引