学術選書 239
子どもの意見表明権の保障
家事司法システムにおける子どもの権利
著:原田 綾子
内容紹介
◆「こども基本法」時代の新しい家事司法へ、「子どもにやさしい司法」の構想◆
子どものための正義(ジャスティス)の実現のために,子どもはいかに取り扱われるべきか。裁判手続中の代理人の役割やその前の相談プロセス、法的決定後の支援など、オーストラリア家事司法システムの紹介を含めて、広い視野から考察。子どもと協働して子どもの最善の利益を実現するために必読の書。
目次
『子どもの意見表明権の保障 ― 家事司法システムにおける子どもの権利』(学術選書)
原田綾子(名古屋大学大学大学院法学研究科教授) 著
【目 次】
◇はじめに――本書の課題と各章の構成
◆第1章 子どもの意見表明権と家事司法システム
第1節 子どもの意見表明権とはなにか
第2節 子どもの意見表明のベネフィットとリスク
第3節 家事事件手続法の子どもの意見表明に関わる規律
第4節 子どもの手続代理人の選任に関する規律
第5節 子どもの手続代理人の役割
第6節 子どもの手続代理人が代理するのは子どもの意思か子どもの利益か
◆第2章 子どもの手続代理人実務における子どもの意見表明権の中心性――インタビュー調査を通して
第1節 インタビュー調査の目的・方法
1 調査の目的と概要
2 本研究が調査対象としたケースの概要
3 本研究が調査対象としたケースの特徴
第2節 子どもの手続代理人と裁判所との連携・調整
1 手続代理人の役割に関する認識の共有
2 家庭裁判所調査官との連携・協働
第3節 子の父母及びその代理人との調整
1 子どもの手続代理人についての親たちの認識
2 子どもの手続代理人の役割についての親に対する説明
3 父母の代理人の認識が子どもの手続代理人の活動に与える影響
4 父母との関係における中立性の意義とその実践
第4節 手続代理人の役割についての子どもの認識
1 手続代理人の役割についての子どもに対する説明
2 役割説明に対する子どもの反応
第5節 子どもとのコミュニケーション
1 ラポールを作る
2 子どもが状況をどのように見ているのか(views)を知ろうとする
3 家裁手続や法律に関する情報を提供する
4 裁判所での両親の主張内容を把握し子どもに伝達する
5 子どもの気持ちを受け止める
6 他の選択肢の検討へマイルドに誘う
7 新しい「視点」を子どもに提供する
8 法(ルール)の枠組みを子どもに伝える
9 子どもが望む結果の実現可能性を検討する
10 親からのプレッシャーを受けた子どもの声をどう聴くか
11 きょうだいから話を聴く
第6節 子どもの気持ちや意向を伝える
1 子どもの気持ちや意向を文書にする
2 親に対する表現方法を工夫する
3 手続代理人としての見解や意見をあわせて伝える
4 子どもの気持ちを期日で伝え,返答を求める
5 期日外で親子の関係調整を試みる
6 子どもが裁判官に直接に伝える
第7節 子どもの意見表明のインパクト
1 調停合意へのインパクト
2 審判へのインパクト
3 親子関係へのインパクト
第8節 子どもへのフィードバック・手続終結後の関わり
1 子どもへの手続結果のフィードバック
2 手続終結後の子どもとの関わり
3 即時抗告審(高等裁判所)における子どもの手続代理人の活動
第9節 子ども本人申立てによる親権停止事件における手続代理人の活動
1 子どもに対する法制度の説明
2 裁判所との関係
3 親との関係
4 結果へのインパクト
第10節 手続代理人が考える手続代理人の役割とその意義
1 子どもの手続代理人は子どもだけの味方
2 子どもとの信頼関係が不可欠
3 手続代理人の活動は裁判所での事案解決やその質の向上につながる
4 手続代理人の活動は子どものエンパワメントにつながる
第11節 小括――手続代理人実務における子どもの意思の重視・意見表明権保障の中心性
◆第3章 オーストラリア家事司法システムにおける子どもの独立の弁護士――子どもの最善の利益中心パラダイムにおける子どもの意見表明権の位相
第1節 本章のねらい
第2節 オーストラリア連邦家族法と子どもの独立の弁護士(ICL)の制度
1 オーストラリア連邦家族法による離婚・離別と子どもの養育問題の規律
2 子どもの独立の弁護士(ICL)の制度的位置づけと選任状況
3 養育命令の決定スキームと「子どもの最善の利益」
4 両親離別後の子どもの養育アレンジの実情
第3節 子どもの独立の弁護士(ICL)が担う役割
1 子どもの最善の利益に関わる証拠収集の役割
2 子どもに焦点を当てた手続きにするための訴訟管理・和解促進の役割
3 子どもの参加を促進する役割
4 小 括
第4節 子どもの参加の保障にむけたICLの改革
1 ICL改革のバックグラウンド
2 子どもの参加を促進するICLの改革
3 オーストラリア連邦家族法の改革をめぐる議論の動向――特に子どもの意見表明に関する改正提案に注目して
第5節 日本の子どもの手続代理人制度への示唆
1 オーストラリアICLの課題と展望――子どもの最善の利益中心パラダイムにおける子どもの意見表明権の位相
2 日本への示唆
◆第4章 子どもにやさしい家事司法システムをめざす――子どもとの協働を通して実現する子どもの最善の利益
第1節 子どもの「発達しつつある能力」――子どもの能力の動態的把握
第2節 家事司法システムにおける子どもの「発達しつつある能力」への応答
1 子どもの能力二元論の限界
2 子の最善の利益の考慮における子の意思の尊重
3 成長発達と人格形成の途上にある子どもの「最善の利益」
4 自分で決める権利ではなく決定に参加し協働する権利を保障する
第3節 子どもの権利を尊重する家事司法システムの構想
1 子どもの意見表明における協働性と自律性
2 子どもの声を聴く専門職の役割――離婚・離別の手続において
3 子どもの利害関係参加と子どもの手続代理人の制度設計
4 「子どもにやさしい家事司法」をめざす
◇おわりに――「こども基本法」時代の家事司法に向けて
・あとがき
ISBN:9784797282658
。出版社:信山社出版
。判型:A5変
。ページ数:384ページ
。定価:8000円(本体)
。発行年月日:2023年07月
。発売日:2023年07月31日
。国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:LA。