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学術選書 202

ドイツの学校法制と学校法学

著:結城 忠

紙版

内容紹介

教育の歴史から今日的課題に迫る ― 研究から実務まで必読の書
1970年代以降におけるドイツの学校法制の基本的性格と構造的な特性を詳細に分析。教育スタンダードが導入され、不断の試行錯誤と永遠に未完の改革・変質を迫られる、学校教育の目的と、その構造的な特性・制度を考究。「自律的で成熟した責任ある市民」「自由で民主的な主権主体」の育成を目ざす。

目次

『ドイツの学校法制と学校法学(学術選書202)』
 結城 忠(国立教育政策研究所名誉所員) 著

【目  次】

はじめに

◆第Ⅰ部 国家の教育主権と教育課程法制◆

第1章 教育主権と国家の学校監督権
 第1節 ワイマール憲法下までの法制状況
  1 国家の学校監督権の法定
  2 国家の学校監督権の確立
  3 内的学校事項の統括権としての国家の学校監督権
 第2節 ドイツ基本法下における法的構造
  1 伝統的学校法制・理論の継受
   1-1 国家の学校監督法制とその解釈
   1-2 学校営造物理論と学校特別権力関係論
  2 学校監督概念の再構成
   2-1 H.ベッカーの「管理された学校」批判
   2-2 憲法体制の転換と国家の学校監督権
   2-3 H.ヘッケルによる学校監督概念の法学的整理
  3 基本法7条1項と国家の教育権能
   3-1 二義的な上位概念としての国家の学校監督
   3-2 学校監督権(狭義)の種別
 第3節 国家の教育主権と教育目的・内容の確定
  1 国家の教育主権
  2 国家の教育主権と公教育の目的・内容
  3 州憲法による教育目的の法定
  4 常設文部大臣会議の教育目的に関する決議

第2章 教育法制における国と地方の権限配分
 第1節 州の文化主権と連邦制改革
  1 州の文化主権
  2 基本法改正(1969年)による連邦の教育権能の拡大
  3 連邦制改革(2006年)――州の文化主権の復活
  4 連邦制改革と教員法制
 第2節 連邦段階の教育行政の構造
  1 連邦教育研究省
  2 各州文部大臣常設会議
 第3節 学校監督行政の組織構造
 第4節 地方自治体の学校行政
  1 学校行政の主体
  2 地方自治体の学校行政権と州の学校監督権
  3 地方自治体の学校行政機関
 第5節 学校財政における州と地方自治体の負担関係
  1 教員の身分と人事高権
  2 学校財政の負担区分と負担主体
  3 地方自治体に対する州の財政補助義務

第3章 教科書検定制度と教科書の採択法制
 第1節 教科書づくり
  1 州の教育主権と教科書制度
  2 教科書の編集・発行
   2-1 教科書市場における自由競争
   2-2 ゲオルク・エッカート国際教科書研究所とドイツ・ポーランド教科書合同委員会
 第2節 教科書検定制度
  1 教科書検定の法制史
   1-1 絶対君主制下の法制状況
   1-2 19世紀における法制状況
   1-3 ワイマール憲法下の法制状況
   1-4 ナチス政権下の法制状況
   1-5 第2次大戦後1950年代までの法制状況
  2 現行の教科書検定法制
   2-1 常設文部大臣会議の「教科書の認可に関する準則」(1972年)
   2-2 ドイツ教育審議会の勧告(1973年)と教科書の検定・採択制度
   2-3 ドイツ法律家協会の「州学校法案」(1981年)と教科書の検定・採択制度
   2-4 教科書検定に関する各州の現行法制
 第3節 教科書検定制度違憲訴訟に関する連邦行政裁判所決定
  1 事実の概要
  2 原告(教科書著作者・発行者)の主張
  3 被告(ヘッセン州文部大臣)の反論
  4 下級審の判断
  5 連邦行政裁判所の決定主文
 第4節 教科書検定制度をめぐる重要争点
  1 教科書検定制度の法的根拠
  2 教科書検定と検閲の禁止
  3 教科書検定と意見表明の自由および出版の自由
  4 教科書検定行政と「法律の留保の原則」
  5 教科書検定における文部大臣の裁量権
 第5節 教科書検定と教育の中立性に関する連邦行政裁判所判決
 第6節 教科書の検定手続
  1 検定に服する教材
  2 検定の効力期間と認可取消権
  3 教科書調査官・教科書調査委員会
  4 教科書検定基準
  5 検定不合格の場合の理由説明
 第7節 教科書検定過程への親と生徒の参加
 第8節 教科書の採択法制
  1 「学校の自治・教育上の固有責任」・「教員の教育上の自由」の法的保障
  2 「学校の自治・教育上の固有責任」事項としての教科書採択

第4章 国旗・国歌法制の構造
 第1節 国旗の歴史と法制
  1 国旗の法制史
  2 現行法制と国民の権利・義務
   2-1 現行の国旗法制
   2-2 国旗を掲揚する権利
   2-3 国旗を掲揚する義務
 第2節 国歌の歴史と法制
  1 国歌の法制史
  2 現行の国歌法制
 第3節 学校教育における国旗・国歌の取扱い

◆第Ⅱ部 国家・宗教・学校をめぐる法制◆

第1章 ドイツ型政教分離の原則
 第1節 「宗教の自由」保障
 第2節 国家教会法の基本原則
 第3節 憲法上の原則としての「寛容な学校の原則」

第2章 公立学校の宗教的性格と学校形態
 第1節 政教分離の原則とキリスト教的公立学校制度
 第2節 公立学校の学校形態
  1 共同学校(Gemeinschaftsschule)
   1-1 キリスト教的共同学校(christliche Geminschaftsschule)
   1-2 無宗派共同学校(bekenntnisfreie Geminschaftsschule)
   1-3 キリスト教的特性のない共同学校(Geminschaftsschule ohne christliche Bezüge)
  2 宗派学校(Bekenntnisschule・Konfessionsschule)
  3 世界観学校(Weltanschauungsschule)

第3章 公立学校における宗教教育法制
 第1節 基本法の宗教教育条項
  1 正課としての宗教教育
  2 宗教教育の宗派的拘束性
 第2節 宗教教育をめぐる生徒・親の権利
  1 宗教教育をうける権利
  2 親の宗教教育権と宗教教育への参加決定権
 第3節 宗教担当教員の法的地位と権利
  1 宗教担当教員の法的地位
  2 宗教担当教員の権利

第4章 正課としてのイスラム教の宗教教育
 第1節 基本法の宗教教育条項とイスラム教の宗教教育
  1 基本法7条3項にいう宗教
  2 基本法7条3項にいう宗教団体
 第2節 現行のイスラム教の宗教教育法制
 第3節 ベルリンにおける特別な法制状況
 第4節 宗教的少数者に対する宗教教育

第5章 倫理教育とLERをめぐる法的問題
 第1節 倫理教育をめぐる法的問題
  1 倫理教育法制
  2 倫理教育の合憲性
  3 親の教育権と倫理科の設置要求
  4 倫理教育と「法律の留保の原則」
  5 ベルリンにおける特別な法制状況
 第2節 ブランデンブルク州のLERをめぐる争い
  1 ブレーメン条項と旧東ドイツ諸州
  2 ブランデンブルク州におけるLERの創設と法的問題

第6章 「宗教の自由」と学校法制上の争点
 第1節 イスラム教徒の女子生徒と男女共修の水泳の授業
 第2節 公立学校におけるスカーフ等の着用
  1 イスラム教徒の女子生徒の場合
  2 イスラム教徒の女性教員の場合
   2-1 バイエルン州における法制状況
   2-2 ヘッセン州における法制状況
   2-3 バーデン・ビュルテンベルク州における法制状況
  3 試補教員の場合
 第3節 教室の中の十字架
  1 連邦憲法裁判所の「十字架判決」(1995年)
  2 バイエルン州における学校法制改革とその後の「十字架判決」
  3 十字架の取付けと教員の消極的信仰の自由
 第4節 学校におけるお祈り
  1 キリスト教的共同学校でのお祈りへの参加強制
  2 公立学校でのイスラムの礼拝

◆第Ⅲ部 教育をうける権利と公教育制度◆

第1章 義務教育の法制史――就学義務制と教育義務制
 第1節 義務教育制度の生成――キリスト教の宣布
 第2節 プロイセン一般ラント法と教育義務制
 第3節 ドイツ3月革命期の憲法と教育義務制
 第4節 ワイマール憲法と就学義務制
 第5節 ドイツ基本法と就学義務制

第2章 教育をうける権利の法的構造
 第1節 ドイツにおける教育をうける権利の憲法史
  1 初期立憲主義と教育をうける権利
  2 ドイツ3月革命期の憲法と教育をうける権利
   2-1 3月革命期の教育運動と教育をうける権利
   2-2 労働者会議の教育関係決議
   2-3 プロイセン憲法教育条項の成立過程
  3 プロイセン憲法と教育をうける権利
  4 フランクフルト憲法と教育をうける権利
  5 改正プロイセン憲法と教育をうける権利
  6 ビスマルク憲法と人権条項
  7 ワイマール憲法と教育をうける権利
   7-1 ワイマール憲法の教育条項
   7-2 ワイマールの学校妥協
   7-3 教育条項の構造と教育をうける権利
   7-4 ライヒ少年福祉法と教育をうける権利
 第2節 現行学校法制と教育をうける権利
  1 占領期法制と教育をうける権利
  2 ドイツ基本法と教育をうける権利
  3 旧東ドイツ憲法と教育をうける権利
  4 各州憲法による教育をうける権利の保障
 第3節 ヨーロッパ法・国際条約と教育をうける権利
  1 ヨーロッパ法と教育をうける権利
   1-1 ヨーロッパ人権条約と教育をうける権利
   1-2 ヨーロッパ社会憲章
   1-3 ヨーロッパ共同体における教育の自由に関する決議
   1-4 基本的権利と基本的な自由に関する宣言
   1-5 EU基本権憲章と教育をうける権利
  2 国際条約と教育をうける権利
   2-1 世界人権宣言と教育をうける権利
   2-2 子どもの権利宣言と教育をうける権利
   2-3 教育制度における差別禁止条約と教育をうける権利
   2-4 経済的,社会的および文化的権利に関する国際規約と教育をうける権利
   2-5 子どもの権利条約と教育をうける権利
   2-6 障害者の権利に関する条約と教育をうける権利
 第4節 教育をうける権利の法的性質と内容
  1 教育をうける権利の法的性質
   1-1 法的権利としての教育をうける権利
   1-2 複合的人権としての教育をうける権利
   1-3 学習の自由権としての教育をうける権利
   1-4 国家の目的規定と教育をうける権利
  2 教育をうける権利の法的内容
   2-1 多義的な教育基本権としての教育をうける権利
   2-2 教育をうける権利の保護法益と法的内容
 第5節 教育をうける権利と授業料・教材の無償性
  1 社会国家原理と教育をうける権利
  2 憲法上の原則としての授業料の無償性
   2-1 憲法による授業料無償性の保障
   2-2 授業料無償性の範囲
   2-3 私立学校における授業料
 第6節 教育の機会均等と総合制学校の制度化
  1 総合制学校の制度化と今日における概況
  2 統合型総合制学校をめぐる違憲訴訟
 第7節 子どもの権利の憲法条項化の試み
  1 ドイツ統一と憲法改正
  2 子どもの権利の憲法上の保障要求
  3 SPDの子どもの権利の憲法条項化案
  4 SPDの憲法改正法案提出理由
  5 CDU/CSU/FDP連立政権の憲法改正法案反対理由

第3章 移民背景をもつ子どもの教育をうける権利と学校法制
 第1節 移民背景をもつ子どもの教育現実
 第2節 常設文部大臣会議の外国人教育政策
 第3節 各州における外国人教育政策
  1 いわゆるベルリン・モデル
   1-1 制度の概要
   1-2 ベルリン・モデルに対する評価
  2 いわゆるバイエルン・モデル
   2-1 制度の概要
   2-2 バイエルン・モデルに対する評価
 第4節 外国人の子どもの学校法制上の地位
  1 「何人にも保障される権利」としての教育をうける権利
  2 外国人の子どもと就学義務
  3 外国人の子どもの教育と「法律の留保の原則」
 第5節 近年における移民背景をもつ子ども関係の重要政策
  1 移民背景をもつ生徒の学力問題
  2 ドイツ語能力確認検査とドイツ語促進コースの創設
  3 終日学校の拡充政策
   3-1 「半日学校」から「終日学校」へ
   3-2 終日学校と移民背景をもつ子ども
   3-3 終日学校の形態と設置要件
  4 終日学校をめぐる法的問題
   4-1 終日学校の導入と「法律の留保の原則」
   4-2 「全員参加義務づけ型」終日学校の合憲性

◆第Ⅳ部 障害児教育法制の構造転換◆

第1章 障害児教育の法制史
 第1節 特殊学校制度の生成
 第2節 ワイマール憲法下における特殊学校制度
  1 統一学校制度と特殊学校
  2 特殊学校の任務と法的地位
  3 特殊学校への指定手続
 第3節 ナチス政権の障害児政策
  1 優生思想と障害児政策
  2 プロイセン特殊学校規程とライヒ就学義務法
  3 障害児に対する安楽死処分と特殊学校

第2章 戦後の学校法制改革と障害児教育
 第1節 1950年代までの法制状況
  1 特殊学校への指定制度
  2 特殊学校の法的地位と機能
 第2節 1960年代における法制状況
 第3節 1970年代以降の法制状況
  1 KMKの勧告
  2 ドイツ教育審議会の勧告
  3 1970年代の判例動向

第3章 現行法制下における障害児教育の法的構造
 第1節 「特別な教育上の促進」概念の新展開
 第2節 障害児教育と憲法上の規準
  1 基本法の改正(1994年)と障害児教育
  2 障害者に対する差別禁止条項と連邦憲法裁判所判決(1997年)
 第3節 障害者の権利に関する条約と障害児教育
  1 包容教育をうける権利
  2 包容教育制度と促進学校の設置
  3 条約の法的効力
 第4節 現行の各州学校法制と包容教育
  1 学校法上の原則としての包容教育の優位
  2 特別な教育上の促進をうける権利
  3 親の一般学校選択権とその要件
  4 包容教育の現実
 第5節 障害児と就学義務
  1 就学義務法制の弾力的運用
   1-1 就学義務の始期と就学義務の猶予
   1-2 就学義務の延長
  2 職業学校への就学義務
  3 その他の法的問題
   3-1 促進学校から一般学校への転校
   3-2 寄宿舎や家庭養護施設での宿泊教育
   3-3 促進学校への指定と「法律の留保の原則」
   3-4 促進学校への指定と行政裁判上の審査
   3-5 障害児の家庭で学校教育をうける権利

◆第Ⅴ部 学校経営法制と教員法制の原理◆

第1章 「学校の自律性」の法的構造
 第1節 ワイマール憲法下までの法制状況
  1 国家の学校監督権と学校管理論
  2 教員会議権の法制化過程
  3 ハンブルク州の「学校の自治に関する法律」の法的構造
 第2節 ドイツ基本法の制定と「学校の自治」
  1 伝統的学校法制・理論の継受
  2 「教員の教育上の自由」・「学校の教育自治」の法制化
  3 国家の学校監督概念の再構成
 第3節 ドイツ教育審議会の「学校の自治」・「学校参加」強化勧告と1970年代の学校法制改革
  1 ドイツ教育審議会の「学校の自治」・「学校参加」強化勧告
   1-1 基本的テーゼ――「自律化」(Autonomisierung)と「参加」(Paritizipation)
   1-2 基本的テーゼの根拠
   1-3 教育行政・学校組織構造法上の原則――下部への権限分散による学校の実質的自治の保障
  2 1970年代の学校法制改革
   2-1 専門監督の縮減と「学校の自律性」
   2-2 教育課程の編成と「学校の自律性」
   2-3 教員参加と校長権限の強化
   2-4 親の学校教育参加の拡大・強化
   2-5 授業の計画・形成と生徒参加
 第4節 現行学校法制と「学校の自律性」
  1 学校の法的地位・性格と「学校の自律性」
  2 各州学校法による「学校の自律性」の保障
  3 「学校の自律性」と学校プログラム
  4 「学校の自律性」の法的内容
   4-1 学校の教育上の自律性と学校監督庁の専門監督
   4-2 学校の財務運営上の自律性
   4-3 学校の人事上の自律性
  5 「学校の自律性」と校長権限の強化
  6 「学校の自律性」と教員の教育上の自由
 第5節 「学校の自律性」の基幹主体としての学校会議
  1 学校会議の創設と拡充
  2 学校会議の構成
  3 教員・生徒・親の三者同数代表制学校会議の合憲性
  4 学校会議の役割と権限
 第6節 基本法と「学校の自律性」
  1 国家の学校監督権と「学校の自律性」
  2 憲法上の民主制原理と学校会議の決定権
  3 「学校フォーラム」の合憲性に関するバイエルン州憲法裁判所判決
   3-1 事実の概要と判旨
   3-2 判決に対する学説の評価
 第7節 「学校の自律性」と教育の質保証
  1 学校制度における質保証政策の展開
   1-1 KMKによる教育スタンダードの導入
   1-2 基本法の改正による「教育評価条項」の創設
  2 教育の質保証と学校評価
   2-1 「学校の自律性」と学校評価
   2-2 学校の内部評価
   2-3 学校の外部評価
   2-4 「目標・成果協定」と教育の質保証

第2章 学校経営法制と校長の法的地位
 第1節 ワイマール憲法下までの学校経営法制と校長職
  1 独任制学校経営と校長職
  2 合議制学校経営と校長職
  3 ナチス政権下における校長職
 第2節 ドイツ基本法下における学校経営法制と校長職
  1 合議制法制と独任制法制の重畳・相対化
  2 ドイツ教育審議会の勧告と校長職
  3 1970年代の学校法制改革と校長職
  4 1990年代以降の「学校の自律性」論議と校長職
 第3節 現行法制下における校長職の法的構造
  1 校長職の法的地位・性格
   1-1 校長の設置
   1-2 校長の身分・性格・待遇
   1-3 校長の資格要件
   1-4 校長の授業担当
  2 校長の職務内容と権限
  3 校長と教員の法的関係
   3-1 上司としての校長
   3-2 校長の職務命令権と「教員の教育上の自由」
   3-3 校長の授業査察権
   3-4 校長の教員評価権
  4 校長の選任手続――教員・親・生徒の参加
  5 校長の試用任用法制

第3章 「教員の教育上の自由」の法的構造
 第1節 ドイツ基本法の制定と「学校の教育自治」・「教員の教育上の自由」
  1 伝統的学校法制・行政法理論の継受
  2 「教員の教育上の自由」・「学校の教育自治」の法制化
  3 学校監督概念の再構成
 第2節 「教員の教育上の自由」に関する各州の現行学校法規定
 第3節 現行法制下における「教員の教育上の自由」の憲法・学校法学的構成
  1 権利としての「教員の教育上の自由」
  2 H.ヘッケルの「教員の教育上の自由」に関する法理論
  3 H.U.エファース,I. v. ミュンヒ,E.W.フースの所説
  4 「教員の教育上の自由」と「学問・教授の自由」
  5 教員の「教育上の自由」と生徒の「自己の人格を自由に発達させる権利」
  6 教員の「教育上の自由」と「表現の自由」・「良心の自由」
  7 M.シュトックの「教員の教育上の自由」の法的構成
  8 「教員の教育上の自由」に関する学校法学の通説的見解
 第4節 「教員の教育上の自由」に関する判例の動向
  1 「教員の教育上の自由」の法的性質
  2 「教員の教育上の自由」と学習指導要領の法的拘束力
  3 「教員の教育上の自由」と学習監督権
  4 「教員の教育上の自由」と校長の職務権限
  5 「教員の教育上の自由」と教科書の使用
  6 「教員の教育上の自由」と成績評価
 第5節 「教員の教育上の自由」をめぐる個別問題
  1 学校監督庁の専門監督権と「教員の教育上の自由」
  2 校長の職務命令権と「教員の教育上の自由」
  3 「教員の教育上の自由」と学習指導要領の法的拘束力

第4章 教員の「政治的意見表明の自由」と教育の政治的中立性
 第1節 教員の法的地位
  1 憲法上の法的基盤
  2 連邦制改革(2006年)と公務員法制
  3 職業公務員としての教員
  4 公法上の勤務関係・忠誠関係としての教員の勤務関係
 第2節 教員の学校法制上の義務
  1 憲法忠誠義務
  2 中立性保持義務
  3 政治活動における中庸・抑制義務
  4 勤務給付義務
  5 服従義務
  6 尊敬と信頼に値する行為をなす義務
 第3節 教員の学校法制上の権利
  1 教員の憲法上の基本権
  2 「団結の自由」と公務員によるストライキの禁止
  3 公法上の特別権力関係論と教員の基本権
 第4節 教員の「政治的意見表明の自由」と「教育上の自由」
  1 教員の「政治的意見表明の自由」
  2 教員の「教育上の自由」
 第5節 教員の校内活動と政治的中庸・抑制義務
  1 「寛容な学校」の原則
  2 授業と政治的中立性
  3 校内における政治的ビラの配布・バッジの着用
  4 教員の職場における「政治的意見表明の自由」
 第6節 教員の校外における「政治的意見表明の自由」とその限界
  1 デモンストレーションの自由
  2 新聞広告・投書・ビラなどでの政治的意見表明
  3 政党への加入の自由
  4 議会選挙への立候補・議員としての職務行使の自由

第5章 教員の体罰権と体罰禁止法制
 第1節 慣習法上の権利としての教員の体罰権
 第2節 違法性阻却事由としての体罰の教育的価値
 第3節 教員体罰規制法制
 第4節 教員体罰禁止法制

第6章 教員の評価法制
 第1節 憲法上の原則としての「公務における業績主義の原則」
 第2節 州の教育主権と教員の人事行政
  1 州の文化高権
  2 教員の身分と人事高権
 第3節 教員評価制度の趣旨と法的仕組み
  1 勤務監督権の一環としての教員評価
  2 教員評価制度の趣旨
  3 教員評価の種類
  4 教員の評価権者
  5 教員評価の方式・形態
  6 教員評価の指標・対象
 第4節 教員評価の手続法制
 第5節 教員評価に対する行政裁判上の救済

◆第Ⅵ部 学校における生徒の法的地位と学校参加法制◆

第1章 公法上の学校特別権力関係論と「学校の法化」
 第1節 公法上の特別権力関係論
 第2節 学校営造物理論と学校特別権力関係論
 第3節 公法上の学校特別権力関係論の克服
  1 基本法の民主的法治国家の原理と公法上の特別権力関係論
  2 H.ヘッケルによる学校特別権力関係論批判
  3 連邦憲法裁判所の特別権力関係論否定判決
 第4節 「法律の留保の原則」と連邦憲法裁判所の「本質性理論」
  1 連邦憲法裁判所の「本質性理論」
  2 「本質性理論」と学校法における法律の留保

第2章 学校における生徒の法的地位
 第1節 憲法上の基本権の主体としての生徒
 第2節 常設文部大臣会議の「学校における生徒の地位」に関する決議(1973年)
 第3節 法律関係としての学校関係――学校における生徒の権利と義務

第3章 学校における生徒の政治的基本権と政治活動
 第1節 生徒の政治的基本権
 第2節 生徒の意見表明の自由
  1 一般的原則
  2 生徒の意見表明の自由に対する制約
  3 校外における生徒の意見表明の自由
  4 生徒の意見表明の自由に対する規制と「法律の留保の原則」
  5 生徒の意見表明の自由と政治活動――政治的意見表明の自由
 第3節 生徒新聞の編集・発行
  1 経  緯
  2 生徒の「意見表明の自由」・「プレスの自由」と生徒新聞
  3 生徒新聞に対する学校の規制権と「検閲の禁止」
  4 生徒新聞と政治的テーマ
  5 生徒新聞に対する規制と「法律の留保の原則」
  6 生徒新聞への州プレス法の適用
 第4節 校内におけるビラの配布
 第5節 生徒のデモンストレーションの権利
 第6節 生徒による政治的な団体の結成
  1 「結社の自由」と生徒団体
  2 学校における政治的生徒団体の結成
 第7節 生徒によるストライキ・授業ボイコット

第4章 生徒の学校参加の法的構造
 第1節 ワイマール憲法下までの法制状況
  1 生徒自治・生徒の学校参加と改革教育学
   1-1 ケルシェンシュタイナーの生徒自治論
   1-2 フォエルスターの生徒自治論
  2 生徒の学校参加の法制史
   2-1 ジューフェルンの教育法案と生徒参加
   2-2 ドイツ11月革命と生徒の学校参加
   2-3 ナチス政権による生徒の学校参加制度の解体
 第2節 ドイツ基本法下における法制状況
  1 生徒の学校参加制度の復活
  2 1960年代末~1970年代前半の生徒の学校参加に関する改革案
   2-1 常設文部大臣会議の「生徒の共同責任」に関する決議(1968年)
   2-2 常設文部大臣会議の「学校における生徒の地位」に関する決議(1973年)
   2-3 ドイツ教育審議会の「学校の自律性」「学校参加」強化勧告(1973年)と生徒参加
  3 1970年代の学校法制改革と生徒参加
   3-1 学校組織構造の法制改革
   3-2 カリキュラム編成における学校の自律性と生徒参加
   3-3 授業の計画や形成への生徒参加の保障
  4 ドイツ統一と州憲法による生徒の学校参加権の保障
  5 1990年代以降の「学校の自律性」の強化と生徒参加
  6 成人年齢の引き下げと生徒参加
 第3節 現行法制下における法制状況
  1 生徒代表制の法的地位・性格
  2 生徒代表制の役割と権限
   2-1 生徒の利益代表
   2-2 生徒代表制自らが設定する役割や活動
   2-3 生徒代表制と政治的役割
  3 生徒の学校参加の態様――生徒の学校参加権の種類
  4 生徒代表制の組織
   4-1 生徒代表組織の種類
   4-2 生徒代表と選挙人の関係
   4-3 調整・助言教員の配置
  5 学校会議への生徒代表の参加
  6 教員会議への生徒代表の参加
  7 州と地方自治体の教育行政機関への生徒代表の参加

第5章 少年法制の概要と特徴
 第1節 少年法制の理念・性格と刑事責任年齢
  1 福祉型モデルと司法型モデル
  2 ヨーロッパ諸国における少年の刑事責任年齢の概況
 第2節 少年援助法と少年刑法
 第3節 少年刑法の指導理念と性格
 第4節 少年刑法の適用対象
 第5節 少年の犯罪行為に対する法的効果
 第6節 少年犯罪に対する厳罰化をめぐる論議

◆第Ⅶ部 学校におけるデータの保護法制と開示法制◆

第1章 学力保証政策とデータ保護の学校法制
 第1節 情報に関する自己決定権の憲法上の保障
 第2節 個人データ保護法制とその構造
 第3節 データ保護の学校法制
  1 学校法による規律
  2 教育行政機関・学校による生徒・親に関するデータの収集
   2-1 一般原則
   2-2 特にセンシブルな個人データの収集
   2-3 生徒を対象とした学術上の調査研究
   2-4 教育統計
   2-5 学力調査
  3 生徒に関するデータの第三者(機関)への提供
  4 生徒・親の権利
 第4節 学力調査と情報に関する自己決定権
  1 ピザ・ショックと学校の質保証政策
  2 学力調査の在り方――生徒・親の情報に関する自己決定権による制約

第2章 教育個人情報の開示法制
 第1節 学校教育における「生徒の知る権利」
  1 憲法上の基本権としての「生徒の知る権利」
  2 各州学校法による「生徒の知る権利」の保障
 第2節 学校教育における「親の知る権利」
  1 憲法上の基本権としての「親の知る権利」
  2 「親の知る権利」の対象・範囲
  3 「親の知る権利」の種類
 第3節 教育個人情報の原則開示と開示の限界
  1 開示の対象となる教育個人情報
  2 開示の限界

◆第Ⅷ部 学校の教育措置・決定に対する行政裁判上の救済と学校事故補償法制◆

第1章 学校の教育措置・決定に対する行政裁判上の救済
 第1節 ワイマール憲法下における法制状況
 第2節 ドイツ基本法下における法制状況
  1 特別権力関係論の法治主義的修正――法律関係としての特別権力関係
  2 学校の教育措置・決定に対する行政裁判上の権利保護の範囲・限界
   2-1 公法上の特別権力関係論支配下における法制状況
   2-2 公法上の特別権力関係論否定後の法制状況
  3 学校の教育措置・決定に対する行政裁判上の権利保護の強度
   3-1 自由裁量としての学校の教育措置・決定
   3-2 高度に人格的な専門的判断と判定活動領域――連邦行政裁判所の確定判例
   3-3 連邦憲法裁判所の新判例(1991年)

第2章 学校事故補償法制の構造
 第1節 国家責任(職務責任)の法制史
  1 官吏の個人責任と国家無責任の法制
  2 官吏の過失責任と国家の代位責任法制
   2-1 国家責任の法定
   2-2 憲法上の制度としての国家責任
   2-3 ワイマール憲法131条の拡大解釈
   2-4 ドイツ基本法と国家賠償責任
 第2節 ドイツ国家責任法(職務責任法)の基本構造
 第3節 職務責任法制と学校事故の被害者救済
  1 職務責任法理の学校事故への適用
  2 学校事故における職務責任の構成要件
   2-1 学校における官吏
   2-2 「公権力の行使」と学校教育
   2-3 教員の職務上の義務(監督義務)違反
 第4節 学校事故に対する無過失責任法制
  1 特別犠牲補償制度と学校事故
   1-1 「特別犠牲補償」の法理
   1-2 特別犠牲補償の法理の学校事故への適用
  2 公法上の学校危険責任論
  3 新国家責任法の制定と失効
   3-1 制定の経緯
   3-2 新国家責任法の主要な内容
   3-3 連邦憲法裁判所の無効判決
   3-4 今日における法制状況
 第5節 学校災害保険法の制定とその法的構造
  1 学校事故保険の法制史
  2 学校災害保険法の制定
  3 本法の趣旨・性格と適用範囲
  4 保険者と補償内容
 第6節 学校事故の防止法制と安全教育
  1 学校事故の防止法制
   1-1 学校設置者の条件整備義務
   1-2 学校・教員の安全保持義務
  2 学校における安全教育

◆第Ⅸ部 親の教育権と学校教育・教育行政◆

第1章 親の教育権の法的構造
 第1節 親権の変遷史
  1 古代ローマ法における親権
  2 中世ドイツ法における親権
  3 ドイツ普通法における親権
  4 プロイセン一般ラント法における親権
  5 ドイツ民法典における親権
  6 男女同権法制定以前の法制状況と親権
  7 男女同権法の制定と親権
  8 親の配慮権に関する新規制法における親権
 第2節 親の教育権の法的性質と属性
  1 自然権としての親の教育権
   1-1 親の教育権の自然権性
   1-2 親の自然権的教育権の法的性質
   1-3 親の自然権的教育権の法的効果
  2 憲法上の基本権としての親の教育権
  3 特殊な包括的基本権としての親の教育権
   3-1 親の個人的な教育の自由権
   3-2 子どもの利益に向けられた承役的基本権
   3-3 子どもの教育についての包括的な教育基本権
   3-4 社会国家的および社会的な基本権
   3-5 親集団としての集団的基本権
   3-6 公教育運営への参加基本権
 第3節 親の教育権と国家の学校教育権
  1 親の教育権と国家の学校教育権の等位テーゼ
  2 親の教育権と国家の学校教育権の一般的関係に関する理論
 第4節 性教育をめぐる親の教育権と国家の学校教育権――連邦憲法裁判所決定(1977年)
  1 事件の概要
  2 下級審の判断
  3 決定要旨
  4 学説の評価
  5 学校における性教育と「法律の留保の原則」
 第5節 親の教育権と子どもの人格的自律権
  1 子どもと基本的人権
   1-1 子どもの人権主体性
   1-2 子どもの人権へのアプローチ
  2 憲法の人権保障規定と親子関係
  3 「縮減・弱化する親の権利――伸張・強化する子どもの権利」の原則
   3-1 親の教育権の権原と子どもの人格的自律権
   3-2 親の「子どもの自律性の尊重義務」と子どもの意見表明権
  4 いわゆる「意思能力のある未成年者の法理」と子どもの自己決定権

第2章 親の学校教育・教育行政への参加法制
 第1節 親の学校教育参加の法制史
  1 「協同的自治」の思想と父母協議会
    1-1 プロイセン州の父母協議会
   1-2 ハンブルク州の父母協議会
  2 ナチス政権による親の学校参加制度の解体
 第2節 ドイツ基本法下における法制状況
  1 親の学校教育参加権の憲法による保障
  2 親の学校教育への参加権と基本法の親権条項
  3 親の学校教育参加の態様――親の学校教育参加権の種類
  4 親の学校教育参加の組織
   4-1 父母協議会
   4-2 学校会議
   4-3 教員会議への親の参加
   4-4 地方自治体の教育行政機関への親の参加
  5 親の学校教育参加の範囲と限界

◆第Ⅹ部 「私学の自由」と私学に対する公費助成法制◆

第1章 「私学の自由」の法的構造
 第1節 ワイマール憲法下までの法制状況
  1 プロイセン一般ラント法と私学
  2 19世紀私学法制と「私学の自由」
  3 プロイセン憲法と「私学の自由」
  4 ワイマール憲法と「私学の自由」
  5 ナチス政権による私学制度の解体
 第2節 ドイツ基本法の制定と「私学の自由」
  1 基本法制定議会と私学条項――「私学の自由」の憲法上の保障
  2 「私学の自由」の法的性質と私学の制度的保障
  3 「私学の自由」の主体――私学の設置主体
 第3節 現行法制下における「私学の自由」の法的構造
  1 私学の設置認可と私学の自由
    1-1 私学の設置認可
   1-2 私立学校と公立学校の等価性の原則
  2 「私学の自由」の法的内容
   2-1 私学を設置する権利
   2-2 私学における教育の自由
   2-3 私学における組織編制の自由
   2-4 教員を選択する自由
   2-5 生徒を選択する自由
   2-6 「私学の自由」のその他の法益
  3 外国人の「私学を設置する自由」
  4 私学に対する国家の学校監督

第2章 私学に対する公費助成の法的構造
 第1節 ワイマール憲法下までの法制状況
  1 私学助成の法制史
  2 ワイマール憲法と私学助成
 第2節 ドイツ基本法下における法制状況
  1 基本法の制定と私学法制の転換
  2 基本法制定議会と私学助成
  3 1950年代までの各州における法制状況――州憲法による「私学助成請求権」の保障
  4 1950年代~1960年代の学説状況――私学助成請求権の法理論
 第3節 連邦行政裁判所と連邦憲法裁判所の「私学助成判決」
  1 1960年代後半以降の連邦行政裁判所「私学助成判決」――私学助成請求権の承認
  2 連邦憲法裁判所「私学助成判決」(1987年)――私学に対する国の保護義務の確認
 第4節 現行私学助成法制の概要
  1 私学助成の法的根拠――私学助成請求権の州憲法による保障
  2 私学助成請求権をもつ私学の種類
  3 私学助成の要件としての私学法上の公益性
  4 私学助成の要件としての税法上の公益性
  5 助成対象費目
  6 助成額の割合
  7 助成方式
  8 待ち期間
  9 当該州の子ども条項
  10 私学助成における信頼関係保護の原則

初出一覧
事項索引
人名索引

著者略歴

著:結城 忠
1944(昭和19)年広島市に生まれる。
広島大学政経学部卒業。大阪市立大学法学部を経て,広島大学大学院教育学研究科博士課程単位取得退学。
国立教育研究所研究員・主任研究官・室長,ドイツ国際教育研究所客員研究員,国立教育政策研究所総括研究官,上越教育大学教職大学院教授,白鴎大学教授を経て,現在,国立教育政策研究所名誉所員。この間,国際基督教大学,広島大学大学院,京都大学大学院,東京大学大学院,筑波大学大学院,慶応義塾大学大学院などに非常勤講師として出講。
教育学博士。第14期日本教育行政学会会長。

〈主要著書・訳書〉
『高校生の法的地位と政治活動― 日本とドイツ』(エイデル研究所,2017年),『憲法と私学教育― 私学の自由と私学助成』(協同出版,2014年),『日本国憲法と義務教育』(青山社,2012年),『教育制度と学校法制』(尚文堂,2011年),『教育の自治・分権と学校法制』(東信堂,2009年),『生徒の法的地位』(教育開発研究所,2007年),『学校教育における親の権利』(海鳴社,1994年),『教…

ISBN:9784797254860
出版社:信山社
判型:A5変
ページ数:912ページ
定価:18000円(本体)
発行年月日:2019年11月
発売日:2019年11月29日
国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:JND