ブリッジブックシリーズ
ブリッジブック法システム入門
第3版
他著:宮澤 節生
内容紹介
法社会学の視点から、法の現実の有様を捉える画期的な好評テキストの改訂版。行政における立法過程等の現実、日本の法曹システムの現実、民事・刑事手続システムの現実、そして法が社会へ与える現実的影響等、法の「実体」から日本の法システムの全貌を語りつくした斬新な書。初学者から法曹まで、法解釈論等と異なる新しい視座から法の見方を提示。法律学、社会学、政治学など幅広い興味に応える。
目次
プロローグ 本書を十分に活用し,楽しむために
1 この本の目的はなにか
2 この本は誰が書いたか
法システムの「実態」/法社会学者の発想/この本が提供する「基本的な知識」
3 この本は誰のために書かれたか
自分で考え,調べよう
4 この本はどのように使うか
考えさせる教材として
PARTⅠ 立法過程と行政過程
UNIT 1 法律はどのようにつくられるのか
1 法律案を作っているのは誰か
法律案の作成はどのように行われているのだろう/立案過程の問題点は何か
2 国会で法律案はどのように審議されているのだろう
日本の国会は野党に影響力を付与しているか/与野党協調か与党主導か/
国会審議の問題点/改革の試み
3 立法過程に市民のアクセスは可能か
決定過程へのアクセスの困難性/少数派の利害と議員立法/司法裁判所の役割
UNIT 2 法律は行政によってどのように運用されるのか
1 規制行政はどのように行われているのか
許認可行政をめぐる規制官庁と被規制団体の行動/規制行政の転換/
行政指導による行政
2 給付・サービス行政はどのように行われているのか
裁量的政策と政官業の癒着/ストリートレベル官僚制の機能とジレンマ/
実効性ある行政裁量の統制とは
3 行政の決定過程への参加と透明性の確保
実施過程への国民の参加は可能か/問われるアカウンタビリティ
UNIT 3 市民にとっての地方自治とは
1 地方自治体は何をしているところか
2 条例はどのようにして作られるか
一般的な条例の制定過程/専決処分による条例制定/住民参加と条例
3 市民は地方自治にどのように参加できるか
4 自治体サービスの提供方法の変化
民間的手法の導入/事業仕分けの導入/求められる冷静な検討
5 「地方自治は民主主義の学校」になっているか
PARTⅡ 法律のプロフェッショナル
UNIT 4 法曹とはどういう職業なのか
1 「法曹」の範囲
2 法曹の誕生と発展
裁判官・検察官の成立/弁護士の誕生
3 日本の法曹養成制度
法曹養成制度の歴史/司法制度改革と法曹養成のあり方
4 法曹の団体
弁護士会と日弁連/法律家の任意加入団体
5 弁護士業務の職務理念
在野精神論/プロフェッション・モデル/法サービス・モデル/関係志向モデル
6 弁護士分布と市民の弁護士アクセス
UNIT 5 弁護士はどういう活動をしているのか
1 国際比較で見た日本の法律家の数
2 弁護士の偏在と弁護士業務
3 弁護士はどういう依頼者のどういう事件を取り扱っているか
弁護士の抱える事件 ―その数と種類/弁護士を依頼する人はどういう人か
4 弁護士の事務所はどうなっているか
多様な法律事務所/公設法律事務所
5 拡がる弁護士の活動領域
組織内弁護士/企業におけるその他の弁護士/法科大学院の実務家教員/
日本司法支援センター ―法律扶助制度から日本司法支援センターへ/
法テラスの業務/法テラスのスタッフ ―スタッフ弁護士
6 弁護士の倫理と階層分化
弁護士の非行と懲戒/弁護士界内の社会階層分化とその影響
UNIT 6 法務サービスと多種多様な法律家
1 隣接法律専門職の種類とその業務内容
公証人/司法書士と行政書士/その他の隣接法律専門職/その他の法律専門家/
大きな隣接法律専門職の役割
2 法律家間の職域争い
3 司法制度改革と隣接法律専門職の今後
今後の展望
UNIT 7 検察官は刑事裁判のゲートキーパー
1 検察官という職業
検察官の種類/検察官の資格/検察官の給与
2 検察官の職務とは
3 検察官が起訴・不起訴を決める
起訴権限の独占と起訴猶予/増え続ける起訴猶予/検察官裁量のコントロール
4 検察官の職場
検察庁と法務省/法務大臣と検事総長/独任官庁制と検察官一体の原則/
検察と警察の微妙な関係
UNIT 8 裁判官はその良心に従い独立してその職権を行う(1)
1 三権分立と裁判官
2 裁判官の種類と数
3 裁判官の任命資格と任命手続
最高裁長官と最高裁判事/高裁長官/判事/判事補/簡裁判事
4 裁判官の給与
5 裁判官の身分保障
6 司法権の独立
7 最高裁事務総局
UNIT 9 裁判官はその良心に従い独立してその職権を行う(2)
1 裁判官の独立の実態
裁判官の転勤と内部評価/不利益処遇の事例/不利益処遇の統計分析
2 裁判官制度改革の導入
改革審の裁判官制度改革提言/裁判官任命手続の改革/人事評価制度の改革/
新たな任命手続と人事評価制度の運用状況
3 裁判員制度のインパクト
UNIT 10 裁判所はどのように構成されているのか
1 裁判所の構成
2 簡易裁判所
3 地方裁判所
4 家庭裁判所
5 高等裁判所
6 最高裁判所
上告理由と違憲審査権/大法廷と小法廷/事件負担/意見の表示/最高裁調査官/
違憲審査権行使の実績/裁判所による政策形成
PARTⅢ 民事紛争過程
UNIT 11 自主的解決と裁判外紛争処理
1 紛争の自主的解決
紛争とは何か/裁判だけではない紛争の解決方法/自主的紛争解決/法へのアクセスの充実
2 裁判外紛争処理(ADR)
ADR とは何か/ADRの諸類型/ADRの方式(1) ―合意型/ADR の方式(2) ―裁定型/
ADR のメリット/ADR のデメリット/ADR の目的論と多様性/ADR の社会的背景
UNIT 12 民事訴訟の構造と動態
1 民事訴訟の構造はどうなっているのか
民事訴訟手続の流れ/訴訟の終局/簡裁に特徴的な制度
2 民事訴訟はなぜ利用されないのか
民事訴訟率の国際比較/訴訟選択/不選択の要因/訴訟の機能不全と対策/
訴訟救助と法律扶助/訴訟に要する期間
3 民事訴訟制度をめぐる新たな動き
知財高裁の設置/簡裁の改革/消費者団体訴訟制度/専門家の活用
4 使いやすい訴訟制度のための課題
UNIT 13 国や自治体を訴えることはできるか
1 行政訴訟制度の仕組み
行政訴訟の意義/民事訴訟との相異/行政訴訟の種類
2 現代型訴訟としての行政訴訟
行政訴訟の必然性/行政訴訟の機能/国家賠償訴訟
3 行政訴訟の機能不全とその背景
現代型訴訟としての行政訴訟の機能不全/水俣病認定遅延訴訟/行政訴訟制度全体の機能不全/
ドイツとの比較/取消訴訟の訴訟制度上の問題点
4 行政事件訴訟法改正のインパクト:司法改革と行政訴訟
原告適格の拡大/義務付け訴訟および差止訴訟の新設/その他の主な改正点/
残る問題点/行政指導/司法行政:法務省と裁判所の人事交流
5 行政訴訟はより原告に使いやすい制度になるか?
法改正の問題点/組織的統制の作用
PARTⅣ 犯罪・非行の処理過程
UNIT 14 犯罪・非行はどのように処理されるのか
1 成人犯罪はどのように処理されるのか
刑事手続の流れ/警察による捜査/検察官による捜査と訴追/裁判所による審理/
刑の執行/再 審
2 統計で見る刑事手続
捜査段階/訴追段階/裁判段階/刑の執行
3 刑事手続の3つの特徴
ディヴァージョン/人質司法と精密司法/厳罰化
4 少年非行はどのように処理されるのか
少年法の基本思想/少年法の対象者/少年事件の捜査/家裁の調査と観護措置/
家裁の審判/保護処分/被害者の権利/検察官送致/統計で見る少年手続
UNIT 15 刑事手続はどのように変わりつつあるか
1 刑事手続改革のふたつの波
2 刑事手続へのあるべき視点
刑事手続を見るふたつの視点/刑事手続へのあるべき視点/罪刑法定主義/責任主義
3 改革審『意見書』に基づく改革の動向
改革審『意見書』の欠落と代用監獄の存続/国選弁護の拡大と法テラス常勤弁護士/
裁判員裁判と手続改革/裁判員裁判と取調べの可視化
4 犯罪被害者運動の影響
犯罪動向と厳罰化論議/全国犯罪被害者の会/裁判所による厳罰化/
刑事裁判への被害者参加制度/被害者参加制度の問題点
5 裁判員裁判の現状と課題
有罪・無罪の認定/量刑判断/今後の課題
PARTⅤ 法の変動と社会の変動
UNIT 16 法使用と政策形成
1 訴訟を通じた政策形成
政策形成の場を司法に求めることはできるか/政策志向の現代型訴訟とその困難/
「政治過程」という視点
2 「権利」の政治学的見方
権利の政治学/政策形成効果の限界
3 法使用の効果
法使用の間接効果Ⅰ ―象徴的機能/法使用の間接効果Ⅱ ―権利意識の変容/
法使用の実質的効果/新しい視点の必要性
4 訴訟による権利の形成再検討
勝訴の効果/弁護士活動の重要性
UNIT 17 法による社会変動
1 法は社会を変化させるか?
法による社会変化/法による社会変動の限界
2 明治期の西洋法継受と社会構造の変動
入会権と所有権
3 戦後改革と家族法
戦後改革による法の変容/高度成長と家族法/矛盾と逆機能/離婚法の国際比較/
相続法と農家相続
4 労働市場の変化と男女雇用機会均等法
労働力人口の推移/1985年均等法/非正規雇用の増加と均等法/均等法の改正/
むすびに
事項索引(巻末)
ISBN:9784797223408
。出版社:信山社
。判型:4-6変
。ページ数:372ページ
。定価:2700円(本体)
。発行年月日:2015年04月
。発売日:2015年04月24日
。国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:LA。