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フェアな未来へ

誰もが予想しながら誰も自分に責任があるとは考えない問題に私たちはどう向き合っていくべきか

編:ヴォルフガング・ザックス
編:ティルマン・サンタリウス

紙版

内容紹介

人間にとって「豊かさ」とはなんだろうか。震災後のいま、そう自問する人は少なくないだろう。私たちは同じ日本に住む同朋を、未来の世代を、そして世界中の多くの貧しい人々を生命の危険に晒してまで、いまの「モノに溢れエネルギー使い放題の生活」を維持したいわけではない。従来型の経済成長モデルを保持し続ければ、世界中の多くの人々を危険に晒すことになるだろう。当然、私たちとて安泰ではない。グローバル化とともに立ち現れた温暖化危機、資本主義経済の構造的暴力、科学技術の負の影響は、私たちの日常にも遠慮なく滑り込む。現代社会は富を蓄積する以上にリスクを蓄積しているからだ。いま私たちに必要なのは、世界中の人々を取り込んでなお地球を居住不可能とはしない、新たな「豊かさのモデル」である。
 本書において、ヴォルフガング・ザックスとティルマン・サンタリウスほかドイツの環境シンクタンク・ヴッパータール研究所の調査グループは、数年にわたる研究と議論の集大成として、そうした新たなモデルを描き出す。彼らが提案するのは、省資源型で自然の持続可能性を保証する経済社会だが、それは地球環境の保全を考えるだけでは実現しない。環境の研究者は社会的公正の問題の前を素通りするが、エコロジーの問題と公正の問題はコインの裏表だからだ。ここで提示されるのは、その両方を同時に解決するモデルである。
 彼らはまず、地球上の資源分布とその偏った利用状況を調べ、「資源の公正」とは何かを模索する。続いて、自由貿易の名のもとで行われてきた不等価交換の事実を明らかにし、効率的な資源配置をもたらす健全な市場競争の駆動力を削がずに、なお「世界で最も恵まれない立場に追いやられた人々の利益を最大化する」貿易の在り方について考える。さらに省資源型の繁栄の鍵は自然エネルギーベースだとして、エネルギー利用、交通、農業などにどのような劇的変化が求められるのかを示す。最後に、経済活性化の理念が人権、公正の基本理念、環境保全に優先しない、新たな世界市場の秩序、そのために必要な政治的再編のモデルを描く。本書は、震災後の新生日本を模索する私たちにとっても指南の書となるに違いない。(かわむら・くみこ 東京都市大学環境情報学部教授)

著者略歴

編:ヴォルフガング・ザックス
Wolfgang SACHS ドイツの環境シンクタンク、ヴッパータール気候・環境・エネルギー研究所、ベルリン・オフィスの所長。
編:ティルマン・サンタリウス
Tilman SANTARIUS ドイツにベースを置く国際環境シンクタンク、ハインリッヒ・ベル環境政治財団の国際気候エネルギー政策部門長。

ISBN:9784794808813
出版社:新評論
判型:A5
ページ数:324ページ
定価:3800円(本体)
発行年月日:2013年11月
発売日:2013年11月29日
国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:KCL