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モデルナ

万年赤字企業が、世界を変えるまで

著:ピーター・ロフタス
訳:柴田 さとみ

紙版

内容紹介

「崖っぷちでの柔軟性こそ、激変期のビジネスに必要なマインドセットである。」
苦節10年、初めて承認された薬が世界を救った。
破壊的イノベーションの全内幕!

mRNA技術による治療薬の開発という野望を掲げ、2010年に創業したモデルナだったが、
一向にその開発は成功しなかった。そこで治療薬開発の優先度を下げ、
より実現可能性が高いワクチン開発でひとまず成果を出すことに方針転換する。
そこで得た結果が評価され、獲得した資金で上場を成し遂げる。この上場自体は
うまくいかなかったものの、このワクチン開発への転換という柔軟な決断こそが、
2020年の新型コロナウイルスワクチンの開発成功という劇的な大逆転を導いたのである。
「窮地での臨機応変な意思決定」によりイノベーションをなしとげた、
この驚異の企業のビジネスマインドを徹底解明する。


◆目次
プロローグ 疾病X
第1章 運命を変える 革新的企業はいかに創業されたか
第2章 mRNAの可能性 未知の技術にかけるのはどれほど大変なことなのか
第3章 ケンドール・スクエア なぜこの立地が武器になるのか
第4章 mRNA技術の実現 なぜモデルナはワクチン開発へシフトしたのか
第5章 散々な船出 なぜ期待のユニコーン企業の上場はうまくいかなかったのか
第6章 新型コロナウイルスの脅威 ワクチン開発を成功させよ
第7章 mRNA-1273 なぜ異例の速さでコロナワクチン開発を進めることができたのか
第8章 追加資金 ワクチン開発のため資金をいかにして集めるか
第9章 ワープ・スピード なぜモデルナは政府との協業を選んだのか
第10章 治験と製造 その想像以上の困難
第11章 複雑な駆け引き 苦境をどうチャンスに変えたのか
第12章 科学の力 試験結果の数字から何が言えるのか
第13章 エビデンス ワクチンはどのように認可されたのか
第14章 喜びの涙 ワクチン開発の成功が人々にもたらしたもの
第15章 デルタ 変異する新型コロナウイルスにモデルナはどう対処したのか
第16章 まだ始まりにすぎない モデルナがもたらした「本当の勝利」とはなにか
エピローグ

目次

プロローグ:疾病X

第1章 運命を変える:革新的企業はいかに創業されたか
分子生物学へのめざめ:ロッシ/カリコとワイスマンの革新的発明/細胞の運命を変える「山中ファクター」/ロッシの運命を変える:バイドール法と技術移転/資金と経験不足をどう補うか:ランガー/医学面での信頼を得る:チエン/常識破りの起業家:アフェヤン/mRNAを治療薬に用いるというアイデア/共同創業者そろう/「モダンで、修飾RNAを用いた企業」

第2章 mRNAの可能性:未知の技術にかけるのはどれほど大変なことなのか
常任CEO探し:バンセル/バンセルの決断/かすかながら着実な成果

第3章 ケンドール・スクエア:なぜこの立地が武器になるのか
守りに転じた大手製薬企業/勃興する新勢力/アップグレード:バンセルの強硬な手腕/不協和音:ロッシとバンセルの不和/秘密主義とその代償/社内の鎮静剤の加入:ホーグ/mRNAをうまく体内に運ぶには/積み重なる成果/創業以降初の公式プレスリリース/さらばロッシ

第4章 mRNA技術の実現:なぜモデルナはワクチン開発へシフトしたのか
ローレンス・キムとの接触/にわかに集まる注目/開発加速のためのさらなる資金調達/ワクチン開発という大きな方針転換/最初の臨床試験/革新のための試験方法を/製造の課題/mRNAワクチンの効果の証明

第5章 散々な船出:なぜ期待のユニコーン企業の上場はうまくいかなかったのか
いざIPOへ/投資家への働きかけ/不穏な船出前/まさかの急下降/至急のアフターフォロー/ただでは起きない、その矢先に…

第6章 新型コロナウイルスの脅威:ワクチン開発を成功させよ
新型コロナウイルスの遺伝子を分析する/スパイクタンパク質のターゲット部位を決める/試験結果を待つ間/スピードというmRNAの利点/治験ボランティア募集開始

第7章 mRNA-1273:なぜ異例の速さで新型コロナワクチン開発を進めることができたのか
三段階の治験過程/治験用ワクチン初出荷/異例の治験前倒し/参加者を集める/最初の接種者たちの一人/感染拡大、副反応の発生/治験の拡大へ/試験結果に関する朗報/急上昇する株

第8章 追加資金:ワクチン開発のための資金をいかにして集めるか
リスク覚悟で投資してくれた者たち/モデルナ自体への新型コロナの影響/追加の株式売り出しという作戦

第9章 ワープスピード:なぜモデルナは政府との協業を選んだのか
モロッコ生まれの取締役:スラウイ/思想を超えた協力/作戦に本格参加/ワクチン候補を絞る/政府との協働を選んだ理由/試験の投与量の選択/治験の実施をどう設計するか/非常ボタンのガラスを破るとき/モデルナのストーリーを書き換える

第10章 治験と製造:その想像以上の困難
マイノリティの人々を適正な割合で参加させる/政府との供給契約締結/製造目標を大幅に上げる/警察のエスコートで乗り切る/ペースを落としてでも守るべきもの

第11章 複雑な駆け引き:苦境をどうチャンスに変えたのか
異例の共同声明/安全性を確実にしながら進む/「透明性におけるリーダー像」のアピール/特許権をあえて行使しない/希望を待ちわびる人々

第12章 科学の力:試験結果の数字から何が言えるのか
政権交代下での試験結果/数字という科学的根拠/緊急使用許可申請/mRNAワクチンの可能性

第13章 エビデンス:ワクチンはどのように認可されたのか
現実的な供給の問題/物流面でのモデルナワクチンのメリット/認可にあたりベネフィットがリスクを上回るか?/承認後

第14章 喜びの涙:ワクチン開発の成功が人々にもたらしたもの
初期の大量供給に成功/小さな挫折、大きな目標/徐々に整う供給体制/収益の健全化/いかにしてワクチン忌避の人に摂取してもらうか/副反応の報告/政権が知的所有権の放棄を求める/見違える企業への成長

第15章 デルタ:変異するコロナウイルスにモデルナはどう対処したのか
変異株用の設計変更/強力な変異株、デルタの発見/反ワクチンが生んだ代償/ワクチン忌避の限界/追加接種と混乱/戦いが続くことを覚悟する

第16章 まだ始まりにすぎない:モデルナがもたらした「本当の勝利」とはなにか
唯一のライバル/ファイザー製ワクチンと何が違うのか/ワクチン開発がもたらした「本当の勝利」/市場からの評価/大成功の対価―しかし、それは相応なものか?/モデルナの「真価」に気付き始めた人々/新たな戦い――オミクロン

エピローグ

著者略歴

著:ピーター・ロフタス
ピーター・ロフタス(Peter Loftus)
《ウォール・ストリート・ジャーナル》紙記者。医薬品・医療機器業界やその他の医療関連の記事を執筆している。二〇二〇年の米国ヘルスケア・ジャーナリスト協会賞のビジネス部門で、新型コロナワクチン開発競争をテーマにした報道が認められ二位を獲得した同紙チームの一員。二〇一六年には、同紙チームの一員として、処方薬の価格高騰に関するシリーズ記事でピュリッツァー賞解説報道部門の最終選考にノミネートされた。
訳:柴田 さとみ
柴田 さとみ(しばた・さとみ)
英語・ドイツ語翻訳家。東京外国語大学外国語学部欧米第一課程卒。訳書に、『Moonshot――ファイザー 不可能を可能にする9か月間の闘いの内幕』(光文社)、『しゃべる からだ』(サンマーク出版)、『mRNAワクチンの衝撃――コロナ制圧と医療の未来』(早川書房、共訳)、『約束の地 大統領回顧録1』『マイ・ストーリー』(いずれも集英社、 共訳)など多数。

ISBN:9784794226563
出版社:草思社
判型:4-6
ページ数:480ページ
定価:2300円(本体)
発行年月日:2023年06月
発売日:2023年06月02日
国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:KJ
国際分類コード【Thema(シーマ)】 2:KJH
国際分類コード【Thema(シーマ)】 3:MBN