日本の読者のみなさんへ
プロローグ
生と死は同じ連続体の異なる位相
死の女神に親しみを覚える
訳者コラム 「法人類学」について
第1章 無言の教え人
正確無比に切り開く
無言の教え人、ヘンリー
死後の世界への架け橋
解剖される遺体との信頼と尊敬の絆
生涯忘れられない初めての解剖実習
第2章 細胞と人間
自分とは何者か
細胞持続性は自己同一性の根拠となり得るか
生と死の秘密は神経細胞(ニューロン)にある
死体が分解されていくプロセス
死体は無機物に還元され、生命の循環に貢献する
名前と自己同一性喪失の関わり
身元不明死体のDNA鑑定で、家族の秘密が暴かれる
遺骨の頭蓋骨から復顔画像を作成
第3章 近親者
陽気なウイリーおじさんとの別れ
おじさんの遺体を細かく精査する
人はなぜ死を恐れるのか
死を恐れないおばあさんの約束
第4章 身近な人の死
延命治療を拒否する母
母を一人で旅立たせたことの後悔
母の死に無関心な父
手を握り父の最期を看取る
第5章 灰は灰に
別れの儀式も多様化し、自由になってきている
丘のてっぺんから死んだ父が手を振る
科学の研究に役立たせるために献体する
自分の最期を自分で決める自由
献体を約束し自死を選ぶ人
解剖する人と解剖される人の衝撃の出会い
第6章 骨よ、骨よ、骨よ!
食人行為によって死者を葬る食葬
墓地不足の問題が深刻化して土葬から火葬へ
一四〇〇年前に殺された「ローズマーキー・マン」
お墓の向こうから現代人に語りかける男
第7章 遙かなる想い
手がかりとなった下顎の骨の欠片
生まれてから一八年後に発見された少女
英国史上最も長い長期未解決事件の謎
冬の寒い日、十一歳の少女が忽然と姿を消す
棺と棺のあいだに少女の遺体があるのか
第8章 御屍(おんかばね):遺体発見
孤独死した人の身元確認
男女の性別の基準
遺骨からどのように性別がわかるか
骨の長さで年齢を推定する
遺骨から故人の身長を割り出す
遺伝子のルーツをもとに区分けされた四つの人間集団
DNA照合、歯科の治療歴や歯形の照合、指紋照合
バルモア村の白骨死体
第9章 死体損壊
人の体を切り刻む行為
タトゥーなどの身体装飾は身元確認の手がかりになる
過剰殺戮する「切り裂きジャック」の犯行
鮮やかな手さばきで解体されたバラバラ死体
ロンドンギャング団の「解体屋(バラシや)」
被害者の娘と加害者の息子を持つ父親
第 10 章 コソボ
遠く離れた異国の残虐行為
NATO軍によるセルビア空爆の開始
村人たちが惨殺された告発現場
遺体安置所の死者の尊厳
母親めがけてひた走る子供たち
第 11 章 惨事の衝撃
二五万人の死者を出したスマトラ沖大津波
災害犠牲者身元確認即応部隊の結成
全国から来た警察官が参加した実習研修
アベルバン惨事――ボタ山の崩落
手首の切断に同意する権限
「全完結的(クローズド)タイプ」と「全未決的(オープン)タイプ」
テロリストは運に恵まれるが、私たちは運に頼らず勝利する
第 12 章 運命か、恐怖か、それとも強迫観念か
世界初の幼児の発達骨学についての教科書
双子の遺体を識別するミッキーマウス柄のベスト
ネズミ恐怖症(フォビア)の原体験
頭のなかに区切られた完全独立型の小部屋
手の甲の静脈の走行パターンで個人を識別する
児童の性的虐待事件の法廷証拠となる血管走行情報
第 13 章 理想的な解
人体解剖学の最も優れた教師
人屍体標本(カダバー)を最良の状態に保つシール固定法
一〇〇万人の献体解剖支援募金キャンペーン
土葬と火葬と第三のオプション
エピローグ
死への旅路に思いを巡らす
骨格標本となって解剖学部に居座りつづける