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日韓「歴史認識問題」の40年

誰が元凶か、どう解決するか

著:西岡 力

紙版

内容紹介

 歴史認識問題というのは歴史問題ではない。歴史学上の問題ではなく、歴史上のある事象をどう認識するか、そして、それにまつわる二国間の政治上の争点をどう解決するかという問題である。著者は韓国および日韓関係史を専門とする学者で、1970年代の韓国への留学体験やその後の外務省での調査員としての体験、雑誌「現代コリア」編集、拉致問題「救う会」活動などを通じて、この半世紀ほどの日韓関係を自ら肌で感じてきた。それは今日ほどに日韓関係が悪化した時代はないという認識である。
 ではなぜそうなったか。1980年代初めに教科書問題というものが起こった。戦前の日本の大陸侵略を政府の干渉で「進出」と書き換えたという毎日新聞の誤報を端緒に、韓国政府が日本に謝罪を求め、日本の援助を引き出した事件だ。さらに1992年に朝日新聞の慰安婦にまつわるこれも誤報(吉田清治ウソ証言)をもとにした悪意ある従軍慰安婦キャンペーン。2000年代から始まり、2018年に韓国最高裁で日本による賠償を認めた戦時労働者裁判(徴用工裁判)など、これらの攻撃に最も真正面から反論してきた著者によるこの40年間の総括が本書である。
 誰が元凶か、どう解決するか、とサブタイトルにあるように、本書では慰安婦報道における元朝日新聞記者、植村隆、慰安婦=性奴隷説の国連への働きかけにおける戸塚悦朗弁護士、徴用工裁判における和田春樹東大名誉教授などの個人をそれぞれ一章を設けてその反日的活動を記録している。この40年の日韓の関係悪化は、こうした日本国内の反日左翼人が問題をでっちあげ、韓国へ持ち込んで韓国内の親北左翼と組んで問題を悪化させてきたという構図である。発火点は日本にあったのだ。この40年、あるいは1965年の日韓協約以降の55年の政治構図を、本書ほど明確に解説分析した本はないだろう。またそこから拉致問題がなぜ発覚しなかったのか、外務省の容共的姿勢の問題点など、周辺の諸問題にも重大な示唆を与えている。
 そして本書の後半は韓国内保守派(自由民主主義勢力)の『反日種族主義』という本の刊行から始まる抵抗運動が少しずつ実を結びつつあること、それに呼応する自由主義的な日本の知識人が協力して、韓国の赤化をどう防ぐかの未来の展望に終わっている。

目次

はじめに 日韓「歴史認識問題」の全体像 
  
第1部 なぜ日韓関係はこんなにも悪化したのか

第1章 日韓「歴史認識問題」の起源と構造
歴史認識問題とは何か
日韓「歴史認識問題」の4要素
いったんは「内政不干渉」で合意   
韓国と北朝鮮の内政上の事情   
韓国大統領の支持率アップに反日を利用   
中国共産党独裁の反日民族主義   
教科書、靖国、慰安婦、いずれも腰砕け外交   
ゴールポストを動かしたのはむしろ外務省   
「漸進主義的文明論」で人類共通の国際秩序を   
福沢諭吉の文明論   
植民地支配をどう評価するか   
近代文明は排他的ではなかった   

第2章 朝日の慰安婦プロパガンダと植村隆記者
朝日新聞の「慰安婦問題」捏造   
言論には言論で──岡島提言の重要性
裁判所が認めた「真実」   
慰安婦問題で朝日の責任は重大   
吉田証言の悪質なウソ   
学界へと広がったウソと間違い   
裏付けのない「慰安婦」報道   
元慰安婦証言の捏造   

第3章 慰安婦=性奴隷説と戸塚悦朗弁護士
性奴隷説は日本人が国連に持ち込んだ   
戸塚の執拗な活動で性奴隷説が拡散   
クマラスワミ報告に慰安婦=性奴隷と明記   
根拠は吉田証言とヒックス本   
北朝鮮の対日中傷をそのまま採用   
反論を取り下げてしまった日本政府
韓国憲法裁判所にまで働きかけ   
予想外だったフェミニズムからの戸塚批判   

第4章 戦時労働者不当判決と和田春樹教授
日韓関係を壊す「統治不法論」   
和田教授が主張する日独の違い   
日韓併合条約は無効?   
際限なく強いられる償い   
日本の竹島領有も不法?   
輸出規制ではなく優遇解除   
意図的に悪化を狙う文政権の対日外交   
日韓併合条約はあくまで有効   
清算はとっくに終わっている   
ソウル地裁が大法院判決を覆す画期的判決   
日本への渡航は出稼ぎが多かった   

第5章 岩波書店と「T・K生」の罪
ウソだらけの「韓国からの通信」   
歪んでしまった日本人の韓国理解   
朴派も反朴派もどちらも反共
韓国に留学してウソに気づいた
北の政治工作の片棒を担いだのか   
否定された「流言蜚語」の数々   
光州事件は殺戮ではなく不幸な衝突   
大統領選挙に不正はなかった   
大韓航空機事件にも陰謀論   
民主化より革命を望む   

第6章 文在寅の反日反韓史観
韓国大統領の革命思想   
民族主義的ファシズムの反日扇動   
大韓民国建国を汚れたものと否定   
建国以来の自由・人権・法治を破壊   
朴槿恵弾劾の裏に北朝鮮の影   
検事総長と文政権の戦い 

第2部 令和元年から始まったアンチ反日の反撃

第7章 『反日種族主義』の衝撃
憂国の書が韓国でベストセラー   
日本側の動きが欠落した慰安婦問題記述   
李栄薫が訴える亡国の危機   
文在寅の恐るべき反日反韓史観   
ミリオンセラー『解放前後史の認識』の悪影響   
『大韓民国の物語』で「反日反韓史観」に反論   
北朝鮮研究者の「反韓史観」批判   
日本発の慰安婦問題に韓国保守派が沈黙   

第8章 慰安婦運動のウソと内紛
慰安婦運動で内紛が勃発   
慰安婦運動のシンボルだった李容洙   
元慰安婦の国会議員選出馬をめぐって   
支援金受け取りをあくまで拒否   
挺対協の金銭疑惑   
日本大使館前「水曜集会」を批判   
挺対協を利用して私腹を肥やした?
二転三転する李容洙証言
北朝鮮との内通疑惑   
慰安婦運動批判のタブーは解けた   

第9章 韓国に広がる「アンチ反日」
韓国の「反日」意識に変化   
植民地近代化論争と慰安婦タブー   
タブーを破った李栄薫教授のYouTube 発言   
戦時労働者判決をネットで批判   
曹国法相や左派テレビ局の反発   
「親日称賛禁止法」制定への動き   
元慰安婦らが言論人を刑事告発   
保守勢力や主流学界は沈黙   
アンチ反日デモは歴史的出来事   
ネット上で始まった「アンチ反日」活動
釜山とソウルで初めて銅像反対の街頭行動   
日本大使館前でのアンチ反日デモ開始   
破られた慰安婦タブー   
反響を呼ぶ慰安婦と徴用工の韓国語訳   
反日と従北反韓は一体   

第10章 米教授の慰安婦=公娼説へのでたらめな批判
ハーバード大教授の経済学的な分析   
多数残る「契約」の裏付け   
韓国マスコミや学界による魔女狩り   
1 10歳の日本人少女おさきに関する記述について   
2 慰安婦=性奴隷とする記述について   
3 慰安婦の年齢の間違い   
4 軍による強制連行はなかった   
5 慰安所でのレイプや拷問は虚偽   
6 75パーセント死亡説はでたらめ   
7 「河野談話」の誤読   
8 公開書簡への日本人学者の反論を無視   
9 慰安婦と業者の契約の証拠について   
10 慰安婦が同意していたという前提について   
11 日本軍に強制連行されたとする元慰安婦証言について   

第11章 慰安婦不当判決と日本政府の反論
日本政府が反論開始   
でたらめな2021年慰安婦判決   
裏付け調査なく証言を鵜吞み   
日本発のデマへの反論広報を活発化せよ   

第12章 新談話で河野談話の上書きをせよ
教科書問題に対して重要な閣議決定   
労働者「強制連行」も不適切   
悪用・誤用が続く「河野談話」   
日本政府は「強制連行」を否定   
強制連行はインドネシアの話だった   
慰安婦問題に関する内閣官房長官新談話試案  

おわりに 韓国と日本の未来に向けて
日韓関係悪化を30年前から心配   
韓国の気高き民族主義   
朴正熙が残した名言   
重なる部分がない日韓の国交反対の論理   
70年代までの日韓関係悪化の要因は日本の容共   
金大中拉致事件の真相   
拉致はなぜ多発したのか   
外務省が全斗煥をファッショと規定   
全斗煥政権の歴史糾弾外交   
田中明の反日分析   
反日反韓史観が第3の要因   
戦わなかった朴槿恵   
まだ勝負はついていない   

あとがきにかえて

著者略歴

著:西岡 力
西岡 力(にしおか・つとむ)
1956年、東京都生まれ。国際基督教大学卒業。筑波大学大学院地域研究科修了(国際学修士)、韓国・延世大学国際学科留学。1982年~84年、外務省専門調査員として在韓日本大使館勤務。1990年~2002年、月刊『現代コリア』編集長。東京基督教大学教授を経て、現在(公財)モラロジー道徳教育財団教授・歴史研究室室長。麗澤大学客員教授。「北朝鮮に拉致された日本人を救出するための全国協議会(救う会)」会長。歴史認識問題研究会会長。著書に『日韓誤解の深淵』(亜紀書房)『日韓「歴史問題」の真実』(PHP)『歴史を捏造する反日国家・韓国』(WAC)『増補新版・よくわかる慰安婦問題』(草思社文庫)『でっちあげの徴用工問題』(草思社)などがある。

ISBN:9784794225351
出版社:草思社
判型:4-6
ページ数:376ページ
定価:2400円(本体)
発行年月日:2021年08月
発売日:2021年08月26日
国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:JPS