序章 幻の巨大爆撃機
「すべての図面を焼却しろ」
真夏の雪/B 29 の標的にされた中島飛行機/太田工場の八月十五日/技術将校の自決/図面焼却とともに閉じた中島飛行機の歴史/十五に分割された中島飛行機
謎の米本土爆撃機「富嶽」
後れていたエンジン部門/巨大爆撃機「富嶽」の構想/富士重工の社名の由来/アメリカをも上まわるスケールの構想/見えてこない「富嶽」の全体像
第一章 中島知久平と中島飛行機
海軍時代の中島知久平
東条英機への直接談判/鷲の研究をする/任務そっちのけでフランス航空界見聞/飛行機の軍事的有効性にいち早く着目/いよいよ飛行機の道へ/退役を決意
中島飛行機の旗揚げ
飛行機研究所設立/意気さかんな「退職の辞」/「上がらないぞい、中島飛行機」/エンジン工場の完成
三菱と双璧をなす
設計オールマイティ思想/政治家への道/設計部の大黒柱/機械工学出が木材の検査役
競争試作時代の幕開け
各社競って外国人技術者を招聘/事故続発の飛行審査/独力で開発した「九一式戦闘機」/飛行機設計から林業技師へ/中島製キ 27 が次期戦闘機九七式に/呑気な面接試験/設計部の人々/性能限界状態での苦闘
第二章 戦争と航空機
エンジン国産化に向けて
航空エンジンのむずかしさ/外国製のライセンス生産から/国産エンジン「寿」の誕生/「金星」と「光」の競い合い/カーチス・ライト社への技術者派遣/最高級ホテルに居を構え/テイラー・システムとフォード・システム
戦時体制への傾斜
強まる陸軍の力/自動車への進出を考える/緊張高まるヨーロッパ情勢/「神風」号の快挙で足どめを食らう/「神風」号搭載のエンジンは?/巨大なエンジン専門工場――武蔵野製作所/海軍専用・多摩製作所の完成
閉ざされる航空技術導入
日米通商航海条約の破棄/日本の南進政策/アメリカの対日禁輸政策の〝抜け穴〞/中立法の廃止
第三章 奇蹟のエンジン――「誉」
自立への道
昭和十一年組・設計三羽ガラス/マンツーマンによる技術者教育/入社二年目で「栄」の設計を/物理屋の出番/技術の進歩に量産体制が追いつかず/「栄」 20 型の成功
世界の水準を超えた着想
小さなきっかけで大いなる発想の転換を/世界の水準を超えた!/官民一体の大プロジェクト/素材メーカー探しに苦慮/加工技術の波及
「誉」の誕生
どうやって冷却するか/三十余年にして世界の水準を超える/しわ寄せが軸受に/三百時間の耐久試験/「誉」全盛時代を現出
第四章 日米開戦と米本土爆撃
日米開戦時の技術者たち
日米開戦の日/中島飛行機三鷹研究所/「なんとバカなことを……」/グラマンを寄せつけなかった「彩雲」/軍部の無理な要求にトラブル続出/「独技術導入計画」/蓄積される疲労と心労/軽戦闘機から重戦闘機へ
日本本土初空襲
「特別計画第一号」とドゥーリトル隊/B 29 登場への布石/初空襲に対する軍部の狼狽/敵機とすれ違った東条の驚き/「せ」号作戦/アメリカの「ハルプロ」計画を阻止
「われ米本土を爆撃せり」
潜水艦・伊 25 /潜水艦搭載機・零式水偵/米本土爆撃命令/自殺覚悟の水偵パイロット/「ドゥーリトルのお返し」/再爆撃――母艦の油の帯に命拾い/アメリカ本土爆撃の成果は?
第五章 大型爆撃機の時代へ
日本本土爆撃の波紋
ミッドウェーでの大敗/日本の航空工業技術の実態/政党政治崩壊への胎動/大谷石採掘跡に地下工場を/中島知久平の情報収集/B29 の情報はどこから?
苦闘する大型機の開発
日本の大型機技術/DC4の購入/大型機LXの初飛行/「百発の飛行機」/DC4はとんだ失敗作/モデル307だったならば……
米本土爆撃計画
「必勝防空研究会」/性能向上と必勝量/六発の「空の要塞」/「完全に敗戦してなくなる」/アメリカ本土爆撃機構想/二千馬力を一挙に五千馬力に/「一馬力たりとも下まわってはならない」/二十六機種の案が一機種に