微妙におかしな日本語
ことばの結びつきの正解・不正解
著:神永 曉
内容紹介
『声に出して読みたい日本語』の齋藤孝さん推薦!
「満面の笑顔」「汚名挽回」「息を吞み込む」
「眉をしかめる」「足もとをすくわれる」「的を得る」……
これらは従来誤用とされてきたが、必ずしもそうとは言い切れないものもある。
『日本国語大辞典』の元編集長で、辞書一筋37年のことばの達人が
ことばの結びつきの基本と意外な落とし穴を紹介。
聖徳太子の時代から現代まで、1400年のスパンで日本語の変化を見てきた著者だからこそ言える、
日本語の「正解・不正解」とは──
【項目例】
●暗雲が垂れ込める? 暗雲が立ち込める?
●寸暇を惜しんで? 寸暇を惜しまず?
●三日に上げず? 三日と上げず?
●腑に落ちる? 腑に落ちない?
●油断も隙もない? 油断も隙もならない?
●暇にあかす? 暇にまかす?
●間が持てない? 間が持たない?
●足をすくわれる? 足元をすくわれる?
どっちが正解? どっちも正解…!?
目次
ことばの結びつき、正しいのは?【基本編】
火蓋を切る/火蓋を切って落とす
暗雲が垂れ込める/暗雲が立ち込める
間髪をいれず/間髪をおかず/間髪を移さず
物議を醸す/物議を醸し出す/物議を呼ぶ/物議を起こす
論議を呼ぶ/論議を醸す
食指が動く/食指がそそる/食指を伸ばす
心血を注ぐ/心血を傾ける
念頭におく/念頭にいれる
嫌気がさす/嫌気がする
アンケートをする/アンケートをとる
押し出しがいい/押し出しが強い
相性がいい/相性が合う
相槌を打つ/相槌を入れる
照準を合わせる/照準を当てる
先鞭を着ける/先鞭を切る
教鞭をとる/教鞭を振るう
口火を切る/口火を付ける/口火を開く
伏線を敷く/伏線を張る/伏線を引く
予防線を張る/予防線を引く
怒り心頭に発する/怒り心頭に達する
まなじりを決する/まなじりを吊り上げる
はらわたがちぎれる/はらわたがよじれる
犠牲に(と)なる/犠牲をこうむる
汚名をそそぐ/汚名を晴らす
汚名を返上する/汚名を挽回する
苦杯をなめる/苦杯を喫する/苦杯を飲む
雪辱を果たす/雪辱を晴らす
恨みを晴らす/恨みを果たす
精根尽きる/精根込める/精魂込める/精魂尽きる
疑問を呈する/疑問を示す
櫛の歯が欠ける/櫛の歯が抜ける
くさびを打ち込む/くさびを打つ
馬脚を露す/馬脚を晒す/馬脚を出す
正鵠を射る/正鵠を得る/正鵠をつく/正鵠をうがつ
上前をはねる/上前をかすめる/上前を取る
白羽の矢が立つ/白羽の矢が当たる
望外の喜び/法外の喜び
一縷の望みを託す/一抹の望みを託す
コラム1
「関係」「関連」「かかわり」「つながり」の後に続く形容詞は?
「関心」「興味」の後に続く形容詞は?
「公算」の後に続く形容詞は?
PART2
微妙に違う日本語、どっちが正解か?
間が持てない/間が持たない
押しも押されもせぬ/押しも押されぬ
右も左もわからない/左も右もわからない
寸暇を惜しまず/寸暇を惜しんで
明るみに出る/明るみになる
取るものもとりあえず/取るものもとらず
血で血を洗う/血で血を争う
苦虫を嚙みつぶしたような顔/苦虫を嚙んだような顔/苦虫を食い潰したような顔
嚙んで含めるように/嚙んで含むように
砂を嚙むよう/砂を嚙んだよう
三日に上げず/三日と上げず/三日とあけず/三日にあけず
愛嬌を振りまく/愛想を振りまく
初心忘るべからず/初心忘るるべからず/初心忘れるべからず
火を見るより(も)明らか/火を見るように明らか
腫れ物に触わるよう/腫れ物に触わらぬよう
お眼鏡にかなう/お目にかなう
ご飯をよそう/ご飯をよそる
さばを読む/さばを言う
礼を失する/礼を逸する
無理からぬ/無理なからぬ
まれに見る/まれに見ぬ
狐につままれる/狐につまされる
木で鼻をくくる/木で鼻をこくる
頭ごなしに?る/頭越しに?る
弓を引く/弓矢を引く/矢を引く
赤子の手をひねる/赤子をひねる
顔色をうかがう/顔をうかがう
顔をつなぐ/顔をつなげる
首をかしげる/頭をかしげる
首を突っ込む/顔を突っ込む/頭を突っ込む
耳を覆う/耳をふさぐ/耳をそむける
目の玉が飛び出る/目の玉が飛び出す
口をつぐむ/口をつるむ/口をつむぐ
あごを出す/あごが出る
体を壊す/体調を崩す/体調を壊す
凄絶な副作用/壮絶な副作用
碁を打つ/碁を指す
将棋を指す/将棋を打つ
一句(を)ものする/一句(を)ものにする
知遇を得る/知己を得る
符節を合わせる/符丁を合わせる
ふりの客/フリーの客
夜を日に継ぐ/夜に日を継ぐ
上を下への大騒ぎ/上や下への大騒ぎ
コラム2
“コロケーション破り”の作家たち
「火を見るより(も)明らか」に対する「火を見るように明らか」の例
「予防線を張る」に対する「予防線を引く」の例
「知遇を得る」に対する「知己を得る」の例
「弓を引く」に対する「矢を引く」の例
「疑問を呈する」に対する「疑問を示す」の例
「口火を切る」に対する「口火を付ける」の例
「耳を覆う」「耳をふさぐ」に対する「耳をそむける」の例
「念頭におく」に対する「念頭に入れる」の例
PART3
じつは「どっちも正しい」日本語
微に入り細を穿つ/微に入り細にわたる/微に入り細に入り
的を射る/的を得る
二の舞を演じる/二の舞を踏む/二の舞になる
腑に落ちる/腑に落ちない
二の句が継げない/二の句が出ない
暇にあかす/暇にまかす
眉をひそめる/眉をしかめる
足をすくわれる/足もとをすくわれる
息を吞む/息を吞み込む
濡れ手で粟/濡れ手に粟
満面の笑み/満面の笑顔
笑みがこぼれる/笑顔がこぼれる
采配を振る/采配を振るう
酒を酌み交わす/杯を酌み交わす
舌の根の乾かぬうちに/舌の先の乾かぬうちに
出る杭は打たれる/出る釘は打たれる
ことばを濁す/口を濁す
油断も隙もない/油断も隙もならない
頭角を現す/頭角を出す/頭角を上げる
化けの皮を剝がす/化けの皮を現す
返り討ちにあう/返り討ちを果たす
めどがつく/めどがたつ
嘘をつく/嘘を言う
絆が強まる/絆が深まる
けがをする/傷を負う/けがを負う
苦汁をなめる/苦汁を飲む/苦渋をなめる
胸に迫る/胸が迫る
目をしばたたく/目をしばたく
目をつぶる/目をふさぐ
あごが外れる/あごが落ちる
息もつかせず/息もつがせず
鼻を折る/鼻をくじく
ページをめくる/ページをまくる
傘をすぼめる/傘をつぼめる
棚に上げる/棚へ上げる
御託を並べる/御託を述べる/御託を言う
石にかじりついても/石にしがみついても
上には上がある/上には上がいる
年に似合わぬ/年に合わぬ
巻き添えを食う/巻き添えになる
姸を競う/姸を争う
コラム3
コロケーションは常に変化し、増え続けている
PART4
読み方は同じ。正しいのは?
初心に帰る/初心に返る
跡を絶つ/後を絶つ
高みの見物/高見の見物
笠に着る/傘に着る/嵩に着る
活を入れる/喝を入れる
論を俟たない/論を待たない
涙を振るう/涙を奮う
科を作る/品を作る
見栄を張る/見得を張る
腹が据わる/腹が座る
肝に銘じる/肝に命じる
一堂に会する/一同に会する
灯火親しむべし/灯下親しむべし
画竜点睛を欠く/画竜点睛を描く(書く)
肩身が狭い/片身が狭い
コラム 4
なぜ「しく」を「ひく」と言ってしまうのか?
「布団を敷く」の場合
「箝口令を敷く」の場合
「背水の陣を敷く」の場合
「敷く」「ひく」と結びつきやすいことば
PART5
漢字は同じ。さて、どう読む?
骨をうずめる/骨をうめる
幕があく/幕がひらく
油をそそぐ/油をつぐ
口の端にのぼる/口の端にあがる
けむに巻く/けむりに巻く
有り金をはたく/有り金をたたく
ほぞをかむ/へそをかむ
肩をいからせる/肩をおこらせる
烏有にきす/烏有にかえす
コラム 5
「入る」の読み方は、「いる」か?「はいる」か?
悦にいる
鬼籍にいる
絵壺にいる
神にいる
堂にいる
有卦にいる
「いる」と読む慣用表現、「はいる」と読む慣用表現