外来種は本当に悪者か?
新しい野生 THE NEW WILD
著:フレッド・ピアス
訳:藤井 留美
内容紹介
生態系を破壊しがちな外来種だが、実際には、環境になじめず死滅したり、定着して受粉や種子伝播を手助けしたり、イタドリやホテイアオイなど、人間が破壊した生態系を再生した例もある。著者は、孤軍奮闘する外来種の“活躍” 例を、世界中から集めた。「手つかずの自然」が失われている昨今、自然の摂理のもとで外来種が果たす役割を「新しい野生( ニュー・ワイルド)」としてあえて評価する。悲観論に陥りがちな地球環境問題に希望をもたらしてくれる作品。
目次
目次
はじめに 人間界の自然
第1部異邦人の帝国
第1章グリーンマウンテンにて
世界中から持ち込まれた動植物
外来種が高めたアセンション島の生物多様性
在来種vs外来種、仁義なき戦い
イースター島を滅ぼしたのは人間ではなくネズミ!?
外来種は本当に悪者なのか?
第2章新しい世界
外来種も病原菌も人類の旅のお供
動植物の順化と「脱走」
ホテイアオイとナイルパーチが増えた真の理由
驚異の木「メスキート」の悲劇
第3章クラゲの海
船のバラスト水、海洋博物館からキラー生物
ほんとうの原因は人間による環境破壊
長い時間軸でとらえると在来種などいない
第4章ようこそアメリカへ
タマリスク、熱狂的な期待のあとの転落
よそ者の貝が水質を浄化してくれたエリー湖
外来種にさらされても多様性あふれるサンフランシスコ湾
ペット出身の外来種たち
外来種排斥という陰謀の不都合な真実
第5章イギリス―イタドリにしばられた国
ビクトリア朝ワイルド・ガーデンの末裔
かわいらしい外来種は許される?
第2部神話とドラゴン
第6章生態学的浄化
イタチごっこのネズミ捕り
袋小路に入る外来種駆除の取り組み
ワニも食べつくすオオヒキガエルが市民権を得るまで
民族浄化ならぬ生態系浄化の狂信ぶり
第7章よそ者神話
偏見と詭弁がはびこる侵入生物学
侵入生物学に固有のロジック
外来種被害のずさんな算出方法
経済効果の高い外来種には触れていない
第8章〝手つかずの自然〞という神話
森林の奥地に栄えた文明は無数にあった
牛痘ウイルスとツェツェバエが起こした生態学的革命
第9章エデンの園の排外主義
ダーウィニズムと完璧なる自然
エコロジカル・フィッティングという手がかり
外来種悪玉論からの改宗と周回遅れの環境保護運動
第3部ニュー・ワイルド
第10章新しい生態系
自然回復のきっかけをつくるコロナイザー
新しい生態系の復元力を認める
ほとんどの荒れた生態系は回復している
第11章都市の荒廃地で自然保護を再起動する
都市の荒廃地にあらわれた楽園
驚くほど都会暮らしを楽しむ野生生物たち
野生生物の天国、チェルノブイリ
旧来型の環境保護は自分の首を絞めている
第12章ニュー・ワイルドの呼び声
スーパー・スピーシーズ
それでも古い時代に自然を戻そうとする人々
管理なき自然を求めて