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エイサー物語

移動する人、伝播する芸能

著:塚田 健一

紙版

内容紹介

「大切なことは生きていると実感できる瞬間であり、それを与えてくれるのがエイサーなのだ」――沖縄の盆踊りであったエイサーが、いまや日本全土に広がっている。芸能伝播の現場で何が起きているのか。エイサーを踊り、歌い、伝えた人々の物語。



「はじめに」より――

さて、本書はたしかに研究書の体裁をとってはいるけれども、内容そのものは「物語」と言ってよいものだ。研究が進展するにつれて、伝播過程をたどる調査の結果が、そのまま一種の「物語」を形成していることに気がついた。それゆえ、本書の最大の特徴は、研究書と物語との、この異例の合体にある。その物語は八重山諸島から始まるが、しかしそこに留まらず、沖縄本島を縦断して日本本土にまで達する。その間に、戦後沖縄の「密貿易」の興隆とか、エイサーの手踊りに使われる「はたき」(ぜい)の由来とか、はたまた沖縄の若者の本土就職の状況とか、いくつもの小さな、あるいは場合によって、大きなエピソードがちりばめられている。その結果、本書は一般のエイサーファンの若者たち、すなわち、エイサーを愛してやまない、エイサーの魅力のとりことなった若者たちにもアクセス可能な内容となっている。とくにエイサーを実践しながら、エイサーそのものについてもっと知りたいと思っている若者たちに本書をぜひ読んでほしい。本書は、そもそもそうした若者を念頭に置いて書かれているからだ。


目次

はじめに



第一章 エイサーの伝播

第二章 エイサー研究を振り返る

第三章 エイサーを分析する

第四章 久部良からのエイサー伝播

第五章 双葉エイサーの復活とその背景

第六章 「密貿易」とエイサー

第七章 久部良エイサーの「はたき」をめぐって

第八章 エイサー伝播の社会的背景――人の移動と社会変動



エピローグ――フィールド再訪

著者略歴

著:塚田 健一
民族音楽学者。桐朋学園大学大学院教授。広島市立大学名誉教授。
東京藝術大学大学院音楽研究科修士課程修了。
ベルファスト・クイーンズ大学大学院社会人類学科博士課程修了。Ph.D。
国際伝統音楽学会理事,ロンドン大学アシュゲート音楽学叢書編集委員,東洋音楽学会会長などを歴任。
これまで音楽学と人類学の境界領域で,アフリカを中心に台湾山地,パプアニューギニア,沖縄などの音楽文化の研究に従事。
主な著書に『アフリカの音の世界』(新書館,2000),
『世界は音に満ちている――音楽人類学の冒険』(新書館,2001),
『Kenichi Tsukada & Ryuichi Sakamoto Selections: Traditional Music in
Africa』(共著,エイベックス,2012),
『アフリカ音楽学の挑戦――伝統と変容の音楽民族誌』(世界思想社,2014,第32回田邉尚雄賞受賞),
『文化人類学の冒険――人間・社会・音楽』(春秋社,2014),
『アフリカ音楽の正体』(音楽之友社,2016)
など。

ISBN:9784790717294
出版社:世界思想社
判型:4-6
ページ数:272ページ
定価:2800円(本体)
発行年月日:2019年03月
発売日:2019年03月14日
国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:JBCC6