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東京湾の環境とアサリ漁業40年

著:柿野純

紙版

内容紹介

約50年、貝類と環境との関係を調べることをライフ・ワークにしてきた研究者の、その研究成果と現場で経験してきたさまざまな情報が詰まった渾身の力作研究書である。本書はアサリだけでなく、東京湾の環境や漁業、ノリやハマグリなどについても触れつつ、過去から歴史をたどるように書かれている。
第1章では、東京湾の開発に翻弄されるアサリ漁業とノリ養殖業の変遷を詳細に解説。第2章では、アサリが大量死する原因である青潮の発生機構や出水による淡水や浮泥の影響について。第3章では、東京湾のハマグリについて。第4章では、アサリを捕食する生物や寄生生物、迷惑生物などについて。第5章では、冬季にアサリが大量死する原因を餌不足、波浪による海底面の浸食から説明。第6章では、アサリの成長に関する因子として海水の流れの重要性を指摘。第7章では、アサリの生き残りを妨げる要因への対抗策とその方策を網羅的に紹介。第8章では、東京湾の環境がどのように変化してはているか、生態系の位置づけも加えて、私たちが何をすべきかを示唆する。
全国各地でアサリの生産が激減し、それぞれの地域に適合した方策をどう取るべきか、その最適な増殖手法は何であるかを、基本的な理論と先人の経験と知恵を通して理解するための絶好な教科書となっている。

目次

まえがき/本書と著者紹介(日向野純也)

第1章 干潟におけるアサリ漁業とのり養殖業の変遷
1-1 はじめに
1-2 東京湾の開発の歴史と漁場の変化
1-3 ノリ養殖の経過
1-4 アサリ漁業の経過
1-5 アサリの生態
1-6 アサリの生産量に関わる要因
1-7 アサリとノリの共生関係

第2章 青潮と出水によって痛めつけられるアサリ
2-1 貝類大量へい死の概要
2-2 青潮による二枚貝のへい死状況
2-3 青潮の発生機構
2-4 青潮によるアサリのへい死機構
2-5 出水によるアサリのへい死
2-6 低塩分海水のアサリへの影響
2-7 アサリ微小稚貝の浮泥に対する挙動
2-8 青潮および出水の対策は?
付表1 東京湾における二枚貝の減耗事例/貝の写真1

第3章 ハマグリは何故東京湾で生き残れなかったのか
3-1 ハマグリ生産量の減少経過と復活への努力
3-2 ハマグリとは
3-3 ハマグリ資源はなぜ衰退したか
3-4 台湾のハマグリ養殖
 貝の写真2

第4章 アサリの天敵
 4-1 東京湾のアサリを食べる動物たち
1)肉食性巻貝/2)ヒトデ類/3)魚類/4)カニ類/5)カモ類
4-2 アサリに寄生する生物や病原性微生物
  1)アサリに寄生する生物/2)病原性微生物
4-3 東京湾のアサリの生息場を脅かす動植物たち
  1)植物/2)動物
第5章 アサリの冬季減耗
5-1 木更津地区の冬季のへい死
1)1989年冬季の大量へい死/2)水温など4項目とアサリのへい死との関係
 貝の写真3

5-2 千葉北部地区の冬季のへい死
1)アサリの生息状況調査/(1)場の区分/(2)籠試験/(3)アサリの標識放流/2)1990年冬季の大量へい死
5-3 冬季の海底面の変動とアサリの移動
1)調査内容/2)波と海底面の変動/3)アサリの定位率
5-4 ノリ養殖支柱柵の波浪減衰効果
1)ノリ養殖支柱柵の変化/2)支柱柵の波浪減衰に関する水理模型実験/3)冬季減耗の経過と対策の方向性
付図1 千葉北部地区における場所別アサリ殻長組成の変化/ 付表2 アサリの死亡または活力低下の要因

第6章 漁場におけるアサリの成長と生残の特性
6-1 はじめに
6-2 流れの特性と稚貝の発生
6-3 肥満度および丸型指数からみた稚貝の成長
1)肥満度および丸形指数と地盤高との関係/2)肥満度および丸形指数と流速との関係
 /3)水域区分と成長
6-4 成長の汀線方向分布特性
6-5 籠試験による丸型指数を指標にしたアサリの成長及び生残の特性
1)産地の異なる稚貝の成長および生残の比較(試験Ⅰ)/2)干潟の水深帯別の成長お
よび生残の比較(試験Ⅱ)/3)殻長10mm未満の人工種苗と自然発生稚貝の成長および生
残の比較(試験Ⅲ)
6-6 稚貝の減耗
6-7 底面摩擦速度と干潟の起伏およびアサリの分布
1)底面摩擦速度と干潟の地形/2)干潟の起伏とアサリの分布/3)底面摩擦速度とア
サリの分布
6-8 成長と生残の特性に関するまとめ
 付図2 盤洲干潟の地形とサンドウエーブ

第7章 アサリの増殖
7-1 アサリ増殖の概要
1)増殖の考え方/2)場の区分/(1)干潟岸側/(2)干潟中間域/(3)干潟沖側/
(4)潮下帯/(5)沖合アサリ漁場/3)漁場改良と管理、アサリの増殖
7-2 竹柵や簡易な潜堤などの海水流動制御施設
7-3 被覆網
1)成貝の保護/2)微小稚貝の集積・保護/3)被服網の留意事項/(1)浮上性の強い
網/(2)食害生物によっては網縁辺部を埋める対策が必要/(3)目的による網目合の使
い分け/(4)網を張る水位に対する配慮/(5)作業量に見合った網の大きさと枚数に
配慮
7-4 耕耘
7-5 稚貝の捕集基材
7-6 漁具によるアサリの傷害防止
7-7 アサリの養殖

第8章 東京湾の環境変化と健全な生態系の重要性
8-1 東京内湾における主な貝類の漁獲量の推移
8-2 東京湾の栄養塩と透明度の変化
 8-3 冬季の水温上昇
8-4 リン不足
8-5 浅海漁場の生態系
  1)干潟における二枚貝の濾水とアサリのグリコーゲン濃度/(1)二枚貝の濾水/(2)
アサリのグリコーゲン濃度と冬季の身入り/2)千葉北部地区のかつての生態系と底生生
物相
8-6 貝類資源の減少要因
1)モガイ/2)アカガイ/3)バカガイ/4)アサリ
8-7 貝類資源回復のために何が出来るのか

引用文献/用語解説

【特別寄稿】東京湾の環境課題への取組(東京大学 佐々木 淳)/アサリ資源回復のための稚貝回収装置と砕石敷設対策について(国立研究開発法人 水産研究・教育機構 桑原久実)

 あとがき/ 謝 辞

著者略歴

著:柿野純
1946年福岡県柳川市で生まれ。1969年東京水産大学卒業、1971年同大学院修士課程終了。同年に愛知県に就職。1974年3月まで伊勢・三河湾の環境調査に従事。同年4月に千葉県水産試験場に移動、公害研究室に勤務し、6年間東京湾の環境調査に従事。1981年に富津市の同水産試験場のり養殖分場に移り、主に貝類に関する業務に従事。貝類と環境との関係を調べることをライフ・ワークにして、この分野のレポートを多数発表する。千葉県水産試験場の養殖研究室長、漁場環境研究室長、のり貝類研究室長、千葉県内水面水産試験場の養殖研究室長を経て、2002年から2007年まで千葉県水産研究センター富津研究所長を務めた後、(株)東京久栄の技術顧問として現在に至る。2000年に「東京湾盤洲干潟におけるアサリの減耗に及ぼす波浪の影響に関する研究」で学位を取得。2006年に「アサリの減耗に及ぼす物理化学的環境に関する研究」で水産工学会賞を受賞。2016年に水産多面的機能発揮対策検討委員会の委員に就任し、水産多面的機能発揮対策支援委託事業のサポート専門家として活躍、アサリ漁業の現地指導を行う。

ISBN:9784790603863
出版社:青娥書房
判型:B5
ページ数:204ページ
定価:4000円(本体)
発行年月日:2021年11月
発売日:2021年11月30日
国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:KNAF